龍眼
裸ん坊祭り継続中
――ちっさ!
眼下の島を見て最初に思ったのはそれだった。 島というか岩というか――アポ〇チョコを齧ったような形をしている。
円錐状の岩山――直径300メートルぐらいか――の一部が削り取られたように凹んでいる。 凹みの底の部分はやや平らになっていて、その奥に洞窟のような穴――石動の迷宮の入り口――が口を開けているのが見えた。
――うーん、岩の削られ方がどうも気になるな……
周りは全て海――文字通りの絶海の孤島だ。 人間どころか、生物が棲んでいそうな気配は微塵もない。
『きゃああーーーー(ドップラー)~~~~~~~!』
――って【意思疎通】さん芸が細かいですよ?
なんて突っ込んでる場合じゃない!
〈どうした!? クル! おい!〉
『あはははははーーーーー~~~~~ぅわぁ~ぃい!』
“眼”の前を光の尾を引くなにかが猛スピードで横切っていく。
『はっやーーーーーーーー~~~~~~ぃい~~~!』
…………
脳内3D映像をマップモードに切り替えると、青い光点が飛び回っている。
まあ、楽しんでるようでなによりですけどね。
――ん?
マップモードで“視る”と、海面下の地形まで見えるようになった――のだが。
――杭?
例えるならそれが一番近いような気がした。 岩で出来た真っ直ぐな棒が海の底へと伸びていて、そのてっぺんがこの島になる。
棒の直径は大体400メートルぐらい、実際は下に行くほど少しずつ太さを増しているが、自然に形作られたものには見えない。
何か人為的な――無理やりこの島を造ったような――そんな気がした。
――お次はっと、
俺は「マップ画面」を縮小していく。 いったいどこまで視えるんだろう?
島の周辺には他の島もなにもない。 本当に海の真ん中だ。 そのまま縮小して――画面左(たぶん西)の方に尖った陸地が視えた――ところで軽い眩暈を覚える。 一度に認識できる範囲としては、これが限界のようだ。
―〈熟練度が規定値に到達――スキル【龍眼】より【地形把握】が派生しました〉―
―〈スキル【地形把握】と【領域支配】―【マッピング】【マーキング】の表示情報をリンク…………完了〉―
――しーちゃんの声が響く、なんか生えたな。
―〈呼んだですぅ?〉―
――呼んでません!
しーちゃんは置いといて、―〈しくしく〉― 置いといて! 予想通り、俺がこうして外を視られるようになったのは【龍眼】のお陰のようだ。
【龍眼】……龍脈の力を通じて大陸規模で物事を見渡せるスキル。
魔素の動きを把握出来る。
統合スキル:【千里眼】【鷹の眼】【魔力感知】
龍脈……星に宿る魔素の流れ
――って予想以上に高性能だったな……魔素の動きって、ひょっとすると【不可視ノ手】なんかも視えたりするんだろうか?
陸地までの距離は……およそ500キロメートル!? こんな海の真ん中の岩だけの島に生き物なんて寄り付かないよ! むしろ徹底的に生き物を遠ざけている気がするんですけど――。
――今は考えても仕方ないか……
『おとーーーーさーーーーーん!』
――お!
ふわ っと目の前に龍が舞い降りる。 間近で見るとやっぱり迫力があるな。
鳥を思わせる大きな翼をゆっくりと羽ばたかせ、そのまま空中に留まり、クリッとした瞳でこっちを見るクル。
実体のない、視点だけの俺の位置がどうして分かるのか不思議だったが、ドラゴンには生来「龍眼」が備わっているのだろう。
〈ずいぶんと楽しそうだったけど、どうだった?〉
『あのね、すっごくはやくとべるようになってたのー!』
〈おー、すごいなー!〉
『えへへー』
〈ところでクル?〉
『ん?』
〈俺たちの住んでるあの島なんだけど、最初からあんなだったの?〉
『えっと、あの……』
――これは……ビンゴかな?
〈言ってごらん〉
『おかーさん、「洞窟がある」っていってたでしょー?』
〈ああ、それで?〉
『おやまのとちゅうにあながあいてたんだけどー』
〈うんうん〉
『あたし、おおきいからはいれないしー、おりるところもなかったから……』
〈つくろうと思った?〉
『うん……えいっ! ってやったら、ちょっとずれちゃった』
――クル? 龍化状態でてへぺろは止めなさい。 かわいいんだけどね?
〈そっかー〉
『あながなくなってたらどうしようっておもったけど、ちゃんとあったよー』
――うん、一つ間違えば穴どころか俺が消えてたんですね。
〈ずいぶんあっちこっち飛び回ってたけど、疲れたりしてないかい?〉
『へーきだよ。 でも……』
〈ん?〉
『おなか、すいちゃった。 えへへ』
〈よし、じゃあ帰ってごはんにするか!〉
『うん!』
〈俺は先に戻ってご飯の用意するから、クルはちゃんと服を着てから戻るんだぞ〉
『あ~ん、まってよ~』
 ̄l ̄
 ̄l ̄
俺は一足先に――というか一瞬で――部屋に戻り、食事の準備をする。 といっても「DP交換」で選んで出すだけというお手軽なんだけど。
――さて、メニューは何にしようかな……お肉が入ってて手軽に食べられるもの……ハンバーガーにするか。 適度に野菜なんかも食べられるし、少しずつお肉以外にも慣れてもらうようにしよう!
『も~! おとーさんズルい~!』
クルが部屋に飛び込んで来たんだけど……手ブラ? 右手で胸を押さえている。
〈クル? 服は着て来なかったのかい?〉
――うん、見事なすっぽんぽんだ!
『だってー、ふくがなかったんだもん!』
――え? あれ? あ! ああ!!




