新装備
娘が朝起きてきただけで1話潰れてしまった。 なぜだ!!
俺が“外”に意識を向けようとしていると――。
『うにゅ~』
めでたくウチの娘となったクルがベッドから出てきた。 相変わらず寝起きは弱いのか、まだ眠そうに眼をこすっている。
――朝からぱんつ一丁でウロウロするのは止めて下さい。 ここに男の人がいるんですよ?
〈クル? ウロウロする前に、せめて下着ぐらいは着けなさい〉
『ぱんつ、はいてるよ?』
――身も心も幼女の時はそれでもよかったかも知れませんけどね……
〈女の子は胸もちゃんと隠さないといけません!〉
『はだかのほうがらくちんなんだよ~?』
今までずっと裸の生活だったから、体を締め付ける服――というか下着――に慣れないのだろう……
でも“人”として育てると決めたんだ。 男としては確かに嬉しいが、親として放っておく訳にはいかない。 なら――。
〈裸ん坊のクルより、綺麗な服を着てくれるクルの方が、おとーさん好きだな~〉
――我ながらズルい言葉だと思う。
『!! はーい!』
ぴゅーっとベッドの側――手前に拵えた間仕切りの奥――に戻り、いそいそと服を着るクル。 効果はばつぐんだ!
〈新しいパンツ置いといたから、それも着替えるんだぞー〉
『これ~?』
クルがひょいと顔を出す。
――だからどうしてウチの娘はパンツを頭に被っちゃうのかな?
〈それだよ、それなんだけどね? 確認するのにいちいち頭に被らなくていいからね? 手に持って見せてくれたら――それも絵面的にどうかと思うけど――いいんだからね?〉
『えへへー』
〈それと、今度からその間仕切りの陰で着替えてから出て来てくれたら、おとーさん嬉しいんだけどなー〉
『はーい♪』
なんだかんだ言いつつも、俺の為にちゃんと服を着てくれる。 ウチの娘はホントにいい子だ。
ちなみに今日の服装は、白のブラウス(20DP)にチェックのスカート(30DP)、膝下までのソックス(20DP)という出で立ちだ。 そして――
『これでいいのー?』
〈うん、とっても可愛くなったぞ〉
『わーい!』
腰まで届く長い髪だが、そのままというのも味気ないので、リボン(10DP)を使って両サイドで結ばせてみた。 いわゆる “ツインテール” というやつだ。
くるくる回っていたクルが止まった――。
『おとーさん! おとーさん!』
〈どうしたんだい? クル?〉
『あしが、ペタペタしてないの! そんでねー、じめんからけがはえてるのー』
〈やっと気付いたかい? 周りを見てごらん〉
『あれっ? わー! きれー!』
そう。 この部屋の内装を思い切って整えてみたのだ。 床を平らにして絨毯を敷き、壁も同様に平面にして壁紙を貼った。 殺風景な岩肌とは比ぶるべくもないだろう。 夕べの内にせっせと作業していたのだ。
絨毯や壁紙の作業は当初、新たに得た【念動】を使おうとしたのだが、例によって――
―〈熟練度が規定値に到達――スキル【念動】が【不可視ノ手】に進化しました〉―
――ってな感じで、俺の“視点”を中心に見えない“両手”が生えたようなのだ。
というのも、“触覚”を持たない俺にはその“手”からのフィードバックが無く、どこを触っているのかさえ分からなかったからだ。 当然力加減も分からないとなれば、怖くて使えたものではない。
“手”作業は泣く泣く諦め、内装はどうしようかと困っていると、眼前にメニューが表示された。
見ると、「ダンジョン」―「部屋」の項目に「カスタム」があり、ダンジョンマスターとしての住環境を整える為の内装や調度類が並んでいた。 ずっと「アイテム」しか使ってなかったから、完全に失念していたのだ。
【メニュー】さん、GJです。
――ところでクルちゃんや? 今まで無かったモノが気になるのかな? その凶器を揺らしたり持ち上げたりして遊ぶのは止めようね?
やっぱ締め付けるだけのチューブトップは窮屈なんだろうか?――今なら着け方も伝えられるし、うん、やっぱりちゃんとしたブラの方がいいだろう。
てことで、レースのフリフリが付いたブラ(120DP)を出す。 どうせなら可愛いのがいいよね?
――クル? 被るものじゃないんだよー? それとね、脱ぐときも間仕切りの陰で脱ぐんだよ? おとーさんとの約束だ!
…………
〈で、どうして脱いだ後そのまま出てくるのかな?〉
『だってー、ちゃんとつけられるかどうか、みててもらおうとおもって……』
なぜかスカートまで脱いで、ブラを手にしたクルが出てきたのだ。 着た順番に脱ぐマイルールなの?
――こ、困ったな……
―〈ちゃんと見て、教えて上げればいいんじゃないですぅ? 役得、役得ぅ〉―
〈……当分、「お供え」無しな!〉
―〈あー、うそうそ、うそですぅ! 全力で謝りますからー!〉―
〈クル、今回だけだぞ? おとーさん見ててやるから、伝えた通りに着けてみなさい〉
『やったー』
 ̄l ̄
 ̄l ̄
『うー、めんどくさいー』
クルはホックに苦戦している。 ブラウスのボタンはちゃんと留められたんだから、不器用ではないはずなのだが――ちゃんと着けてくれないと、そのたゆんたゆんはとっても危険なのです。 おとーさん以外の人に見せちゃいけません。
ペロン――。
――いや、おとーさんに見せろって意味じゃないからね? ちゃんと仕舞っときなさい!
〈左の帯を挟んだ指を滑らせて――そうそう、そしたら人差し指に出っ張りが引っ掛かかるだろ?――そう、そこで止めて、右手で右の帯の端を持って、左手の指のところに持っていくんだ――よし! 上が引っ掛かったぞ! あとは帯を真っ直ぐにすれば――〉
説明しながら、――世の女性が聞いたらどう思うだろうか――と、微妙に精神的ダメージを負いつつ、クルのお尻を見て、――先にスカートだけでも穿かせるんだったな――と考える俺だった。
『できたー! ねーねー、おとーさん! これでいいのー?』
クルが満面の笑顔で「どうだ!」といわんばかりに胸を張る。
そこに在ったのは渓谷を挟んで聳え立つ2つの巨峰だった!!
「ど・どん」って効果音が聞こえてきそうです……
〈お、おう、ちゃんと出来てるぞ。 着け心地はどうだ? きつくないか?〉
『だいじょーぶだよ。 なんかすこしかるくなったみたい。 らくになったー!』
〈それは良かった。 じゃあ、向こうへ行ってちゃんと服を着てきなさい〉
『はーい! おとーさん、ありがとー!』
つ、疲れた……でもこれで事あるごとにぶるんぶるんするのは無くなるハズだ――。
――ったんだけど、着替え終わったクルの凶器がより破壊力を増したのは何故なんだろう。
キュッっと持ち上がった双丘が、胸元から覗く深い谷間を作り、ブラウスの前面を持ち上げてチラチラおへそを覗かせてるんですが――。
―〈ぐぬぬ〉―
いや、しーちゃんってば、確かに声出さないと伝わらないんですけどね? どうしろと?
――あれ? 俺、何か忘れてるような気がするんだけど、何だったっけ?




