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新規案件検討:受注見送りと今後のキャリアプラン

まあまあ、今日のところはごにょごにょ、といった感じであの後別の予定があった王子と王妃様の御前から失礼したが、今回は宰相殿がエスコートに付いてしまった。


「レティシア様!あの図案には別の形もあるのでしょうか!? 例えば備蓄食料を全体として、どの程度の量がどの都から来ているかが一目でわかる図案なども作成できそうですね。あの棒を太くして色分けしても良いかも知れません!」


ぺちゃくちゃと自論を展開するクラウスはゲームでも見たことないくらい楽しそうだ。人生で初めて棒グラフを見たのに、即座に積み上げ棒グラフを思いつくあたりやっぱり天才ではあるな。

前世はガチャでSSRクラウスが当たらなかったので、細かいエピソードあんまり知らないけども。


「宰相殿……あなたと私の父上は敵対しておりますでしょう。なぜそんなに楽しげなのです」


「私と、ヴァレンティーノ公爵が敵対……ですか? ……そうです、よね。」


うーん、やっぱりこいつなかなかの狸だわ。猛烈にイライラしてきた。ああ、ここが現代日本だったら! 電車に乗ってコンビニで好きなごはんと酒とアイス買って自室で動画見ながら貪り食べたい!


「あら、父上と兄上の失脚は私の勘違いかしら? 領地没収の憂き目まではまだ遠いようで安心いたしましたわ、おほほほほ」


初代国王の弟が興したとされ、嫡男はもれなく王位継承権を持つヴァレンティーノ公爵家をここまで追い詰めた張本人がよく言うよな?


「……ヴァレンティーノ公爵は偉大なお方です。この国の宰相には、やはりあのお方こそふさわしい。」


「へーそうなんですか」


「レティシア様、私はとある目的が果たされたら、宰相の座を潔く引くつもりです。」


「ヘーそうなんですね~……えっ? 今なんて?」


「失礼、耳をお貸し頂けますか。」


急に足を止めると、クラウスは私の耳元でささやいた。


「今以上、公爵様のお加減が悪くなるようでしたら、王妃殿下付きの後宮医師にお父様の治療を担当して頂くようにしてください。」


……後宮とは病の多い場所だ。現陛下の花園はそこまで華美ではないが、それでも様々な思惑が渦巻き、時として暗殺騒ぎが起こることもあった。

王妃殿下付きの後宮医師は、どこの派閥にも属さず王妃の命を平等に守ることを王家に誓う家門だ。特に後宮で用いられやすい毒の対処に長けていると聞く。


「それって……」


父上の病に毒の可能性があるということ? クラウスは何を知っている?


二の句が継げずにいると、クラウスは私の前に跪いて、わざとらしい大きな素振りで礼を取った。


「そうです! 今日の一件で私はレティシア様の頭脳の下僕となり果てました! お困りの事があればこのクラウスめに言いつけて頂ければ、即座に解決させて頂きましょう。」


「……ふん、伯爵家の貴方にできてヴァレンティーノ公爵家のレティシアにできないことなどないわ。」


クラウスは顔を上げるとニコリと笑って、「それでこそレティシア様です」と言った。




これまた豪勢な馬車でガタゴト揺られて帰ること小一時間。私はある結論にたどり着いていた。


「やっぱり王家直轄領は炎上案件に違いないわ! なるべく触らずに行きましょう!」


私だってPMとして火消ししたこともあるし、そりゃあ炎上させた事もある。正直ちょっと興味は湧いたが、せっかくゲームルートから外れたのだから平穏にいくのが一番よね。今回の件はもう放置! のらりくらりかわしていけばいいわ!


幸い、王子殿下の婚約者選定があるため、同世代の貴族子息たちもまだわんさか婚約者未定で余っている。我が娘がもしかしたら王妃に……! なーんて夢が捨てられない貴族たちは、王子と同世代の娘たちを婚約させたがらないので、五年早く生まれていれば生後間もなく婚約者が決定しちゃうような優良物件もまだ選び放題だ。


選定が終わってない今の段階で、そこそこ頭がよくて、向上心がありすぎず、金のかかる趣味のない子息をリストアップしてアポ取りしておけば年末までに一人くらい妥当な婿がゲットできるだろう。兄が宰相になるなら私が実質的に我が家の領地を婿殿と治めるもよし、兄が領地を治めるなら婿殿に宮仕えしてもらうもよし……となるとやはり侯爵家あたりの次男以下が狙い目ね。


「よっし!やるぞ! 婚活ファーストペンギン!」


孤独に作戦会議を終えて勢いよく玄関のドアを開けると、ばたばたと忙しそうな使用人たちがホールを行き来している。


「……どうしたの?」

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