3 外の世界
先程までいた場所から川を渡る橋を越え、鍛冶屋のような場所を過ぎ、プレイヤーとよくすれ違うようになってから、変な感覚に襲われた。
(……なんかこっち見てくるプレイヤー多い気がする)
サクヤが街並みを見つつ、出入り口を探して歩き始めて数分。
頭の上にキャラクター名が書かれたプレイヤー達の視線が時折こちらに向けられていることに薄々気づき始めた。
奇異の視線とはまた違う視線。
こちらをチラッと見てきたであろう先をサクヤが見ると視線を戻し。サクヤが見るのをやめるとまたすぐにこちらを見てくる。
(初心者プレイヤーは珍しいのか?……あ、そういやキャラメイクをランダム生成にしたけど、もしかしてやべー顔になってるやつか!?)
ふと、面倒くさいからという理由でキャラメイクをランダムに任せたのを思い出す。
ランダム生成ということは、面白い感じになってる可能性もある、とサクヤの脳裏を過ぎる。
一度出入り口を探すのを中断し、慌てて辺りを見渡し、姿が見える鏡を探そうとするが、すぐには見つからない。
少し考えた後、水面なら映るかもしれない。と思いついたサクヤは先程の道中にあった橋まで戻り、川の水面を目指す。
「川に映りますように……って……俺、これ?」
美少女。
その言葉が一番今の姿を表すのに似合っていた。
髪はポニーテールにしているが、髪先は腰より少し上ほどまであり、顔つきとしては中性的ではあるが、どちらかと言うと女性のような雰囲気。目つきもリアルとは違い、綺麗な二重でクリクリとした感じの目。
「おいおいおい、めっちゃ気合い入れてキャラメイクした美少女侍って感じじゃん……恥ずかし」
両手で顔を覆うように隠し、しゃがみ込む。
(ランダム生成だから仕方ないとはいえ、じゃあまだ面白い側に寄って作ってくれた方がまだ良かった……畜生、これじゃあガチじゃねぇか。声はリアルと変わんない声だからまんま俺だし)
うずくまってランダム生成を呪うこと数分。
スッと立ち上がったサクヤは頬を叩き、気合いを入れ直す。
「よし、後悔終わり。さっさと刀振りに行こう、忘れよう」
さっきまでのゆったりと街並みを見つつ歩く速度とは違い、足早に川を離れて出入り口に急ぐ。
***
入り口は先程より多くのプレイヤーがいた。
MMOだから当たり前の光景なのだろう、様々な格好をしたプレイヤーが、大きな声で「暁ノ森、首無し武者の周回一緒に行く人いませんか!」だったり「首狩り天狗、あと1人です!」を言っている姿が見えた。
(首無しだったり、首狩りだったり……物騒すぎねぇか?)
そんな光景を横目に、入り口近くの大きな案内板の存在に気づいたサクヤは、人混みを上手い具合に避けて案内板を確認すると、どうやらこの周辺の地図のようで、腕を組みながら現在地や色々と見ていく。
(この村……いや町? まぁどっちでもいいけど、ここは東雲宿って名前の場所か。
いわゆるここは始まりの村みたいな扱いなんだろうけど……ここを出たら椿ヶ原。
そこから、黒羽鉱山と暁ノ森とか言う場所にいけて……なるほど、暁ノ森を越えないと次の街には行けないんだな)
あとはどうにかなるだろうと思ったサクヤは案内板から離れ、東雲宿を後にする。
一歩。
門から踏み出して椿ヶ原に出ると、ゲームログイン時に感じたような風が頬を撫でた。
草原のような地面を踏んでいる感覚。夏日の様に眩しい日光。遠くに見える山々に風で揺れる草木。
「これが、ゲームなのかよ。すっげぇ再現度」
観光地に来たような速度で歩みを進め、ふと後ろを振り返ると、さっきまでいた東雲宿の建物は少しずつ遠くなっていた。
「ははっ、マジですっげぇ。すっげーよ」
無意識に笑みが溢れ、帯刀している無銘を見る。
もう縛られるものがない。ここでなら、とサクヤは柄を握りしめて勢いよく刀を抜く。
一目見た感想としては、良くも悪くも普通の刀という印象。身幅も反りも、皆が想像しやすい形。
だが。日光に照らされて光る刀身はサクヤのテンションを上げるには充分なものだった。
「実際の刀の重さとかは知らないけど……軽いな」
適当に振るのを何度か行い、重さを調べる。
(うーん、大体中身が入った1Lペットボトルくらい? 二刀流とかあるらしいし、片手で持つってなったらこんなもんなのか)
「よっしゃ! じゃあとりあえず、妖怪退治と洒落込みましょうかね」
刀を鞘にしまい、モンスターである妖怪を探すために小走りくらいの速度で椿ヶ原を適当に歩き回り、ついにサクヤは対象を見つけた。




