表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
76/86

76 朝飯を食いに来た

鈴木の言葉で、弟妹の側におるのが転移勇者だと分かる。


中島。


鈴木ら転移勇者達が通っていた学校の、クラスの教師だったと聞く。

ダマムテサネ伯爵に集団召喚された時、生徒達を見捨てて逃げたとも聞いておる。

誘拐同然に召喚され、いきなり修羅場に放り込まれたことには同情する。

だが、残って仲間のために戦った天宮や松平を始めとする

生徒達のことを思うと、どうにも気に食わんのう。


もう一人の転移勇者は、確か田中。


《賢者》のジョブじゃったか。

こ奴も逃げた口か。

まあ、状況ゆえ仕方ないとは思う。

だが、なぜ二人とも、あれほど優越感に浸った顔でおる。


逃げた先でこ奴らに捕まり、

都合のいいことでも吹き込まれて、調子に乗ったか。


逃げ隠れしたことはともかく、

仲間を見捨てたことに関する後ろめたさも、恥も感じられん。


厄介じゃのう。


こういうタイプは、人のことを人と思わぬ。

人を見下し、平気で力を振るい、傷つける。

中島は分からんが、田中は《賢者》か。

鍛錬次第では、かなり力を付けておるぞ。


もう人も殺めていそうじゃ。


人を殺めたことのある人間の、独特の空気が見える。



そうして眺めておると、第二皇子と第二皇女が進み出て、馬上で話し出した。


「妹よ、何をしている。」

「そういうお兄様こそ、何を。」

「決まっておる。次期皇帝として相応しい行動を取っているにすぎん。」


不健康そうな顔でふんぞり返る我が弟、第二皇子。

そんな顔色で威張るな。

どうせ酒と女に溺れて、日の下に出てきたのも久しぶりだろうに。


「あらあら、次期皇帝として相応しい行動とは何ですの?」

「女の尻を追いかけることが、相応しい行動ですの?」

「一体、何人の側室を設けるつもりですの。

 おじい様もお父様も、側室はいませんのに。」

「それに、聞きましたわよ。」

「アルド港からフリハオ町までの街道造り。

 予算ばかりかけて、通常の五倍も時間をかけたんですって。」

「完成した街道もお粗末で、宰相が調べたら使途不明金だらけ。」

「お父様に呆れられて、怒られもしなかったそうじゃありませんか。」

「頼もしい次期皇帝陛下ですこと。」


そう言って、高笑いを上げる我が妹、第二皇女。


「黙れ、黙れ! あれは初めての政務だったのだ!」

「何も分からず、失敗して当然なのだ!」


第二皇子が真っ赤な顔で反論しだす。


阿呆か。

皇族が、政務に携わる者が、初めてだから失敗して当然なわけがあるか。


そうならんようにしっかり学び、側近達と相談して行うのが普通じゃろうに。

皇帝になって戦でもした時に、初めてだからと言って大勢の兵を死なせるのか。

土地を奪われ、民を犠牲にするのか。


この馬鹿を止める者はおらんのか。

こんなの、神輿にもなるまいに。


「そういうお前こそ、茶会ばかり開きおって。」

「その度に高い茶器や衣装を買いおって。」

「何が、一度着た服は着ません、だ。タンスの肥やしばかり増やしおって。」

「あら、ご存じありませんの?」

「お茶会は大事な政治の場でしてよ。」

「お兄様みたいに、

 始まってすぐに参加した女性を連れて退席なんかしませんわ。」

「何が政治の場だ。顔の良い男ばかり呼びおって。」

「少しでも色目を使った侍女やメイドを、すぐに折檻しおって。」


なんなんじゃ、こやつらは。

本当に我の弟妹か。

まだ第一皇子の方がマシではないか。


二人とも、大声で部下や派閥の貴族達の前で、

お互いの性癖や過去の失敗など、しょうもない暴露合戦を始めおって。

明日どころか、今日のラジオや新聞のニュースは、

この話題で持ち切りじゃろうな。


ミレディに言って、週刊誌も買い漁らせねば。

きっと、ないことも含めて面白いことが書かれるじゃろう。

後の楽しみが増えたわ。


しかし、皇帝陛下も皇后陛下も、

政治家や軍人としては優れておるが、親としては最低じゃのう。


我も含めて、親不孝者ばかりではないか。

アレクはどうなるかのう。

あ奴まで我らのようになれば、アステリア帝国も終わりじゃのう。

いっそ、ミレディの家など、分家に任せた方が良いかもしれん。


しかし、

このまま口論から互いの軍勢同士でぶつかり合ってくれるかと期待したが、

そこまで甘くはなかったようじゃ。

側近どもが動き出しおった。

流石にこれ以上の恥の晒し合いはまずいと思ったか。


それとも、十分と思ったのか。


両名とも次期皇帝に相応しくないと、よく知れ渡ったのう。

後ろにいる者達が喜んでいるぞ。

それに気づかんとは。


で、なんじゃ。

ジャンケンなどしおって。

次期皇帝でも決めておるのか。


平和じゃのう。


我はアルマ様を見る。

アルマ様も理解したのか、静かに頷く。

こちらの兵を配置する。

特機戦力を差し向けるかと思ったが、正攻法で来るようじゃ。


「アンリちゃん。」


リオニー様から声がかかる。

我はそのまま魔力を練り、魔力塊を馬鹿な弟妹にぶつけた。


ほう。

側近どもは吹き飛んだが、弟は田中に、妹は中島に守られて無事か。

もう少し強めに放つべきじゃったか。

もう一度ぶつけるか。

しかし、こちらの不意打ちに睨み返してくるかと思ったが、

慌てて逃げ出しおって。


ほんに情けない。


どうやら、どちらが先に攻めるか決めておったようじゃが。

真ん中に陣取る騎士団が動かん以上、意味があるまい。

我らが疲弊した時に来るぞ。


それとも、それを無視できるほどの切り札があるのか。

あの転移勇者の二人が、そこまでの力を蓄えておるのか。

同じことを考えていたのか、リオニー様が唸る。


「てっきり、特機戦力で短期決戦で来ると思ったんだけどなぁ。」

「じゃないと、帝国正規軍と戦えないじゃない。」

「もしかして両勢力とも、

 正規軍がお飾り大将の言うことを聞くとでも思っているのかしら。」


リオニー様は両軍の戦力を分析するように眺める。

その横に佐々木が並んだ。


「ハーケン夫人。強そうなジョブ持ちは、

 田中の《賢者》と中島の《覇王》だけです。」

「あら、そう言えばあなた《鑑定士》だったわね。助かるわ。」

「でもいいの? 奥で隠れていなくて。これ以上いると巻き込まれるわよ。」


リオニー様が我を見る。


「佐々木、戻れ。もう十分じゃ。」


我は佐々木を含め、生徒達に奥へ行くよう促す。

これは、この世界の人間の、大人の問題じゃ。

異世界人で子供のそなたらには関係ない。


「僕はもう大人です。お酒も飲めるし。」

「酒は二十歳になってからと言ったじゃろうが。」


我が睨むと、佐々木は少し肩をすくめた。

それでも、視線は逸らさない。


「ここは僕の居場所です。あんな奴らに好きにはさせません。」

「アンリ先生には、命を助けてもらいました。」

「ここに連れて来てくれて、再び前を向けるきっかけをくれました。」


命を助けたのは、人として当然じゃ。

ここに連れてきたのも、天宮のついでじゃ。


「それに、あいつらみたいに、仲間を見捨てて逃げたくありません。」

「できることをしたいんです。」


生意気なことを言ってくる。


「よう言うた。」


ムラマサ親方が笑い出した。


「ようし、終わったらとっておきの酒を飲ませてやる。期待しとけ。」

「だから、まだ子供に飲ませないでください。」

「アンリちゃん。」


リオニー様までこちらを見てくる。

我は大きくため息をついた。


「危なくなったら奥に逃げるんじゃぞ。」


我の声に、佐々木の顔がぱっと明るくなる。


「大丈夫でござる。危なくなったら、僕が守るでござる。」


いつの間にか武装した松平が、佐々木の側に来る。


「何かあったら、コミケが開けないでござる。」

「色々な作家がいないと、面白くないでござるからな。」


そのコミケとかやらは分からんが。

そなたも気をつけるんじゃぞ。


ほら、非戦闘員は奥に行くんじゃ。

女生徒達を有無を言わせず、店の奥、居住スペースへ向かわせる。

食堂では、斎藤が赤毛親方に装備を着けてもらっていた。

斎藤、お主も出るつもりか。

まったく。

本当にこれは決闘騒ぎではないんじゃぞ。


リオニー様が、佐々木の鑑定スキルを元に分析していく。


「なるほど。かなり高いスキルね、佐々木君。帝国の目が欲しがるわよ。」


そう言いながら、得た情報を皆に伝えていく。


「目立つ特機戦力は、あの転移勇者の二人だけ。」

「でも、判定不能な物がいくつか持ち込まれているわ。」

「多分、あれが切り札ね。」

「後は、後方に温存しているか。」


そうじゃのう。

単騎で我に勝てるのは、騎士団総長と筆頭魔術師長。

カールおじい様、皇帝陛下。

後は帝国の目の頭領。

それに海軍大提督か。

各神殿の精鋭も忘れてはいかん。

複数なら、各騎士団長が組んでこられると面倒じゃて。


なんじゃ。

改めて考えると、我も大したことないのう。


こちらは、アルマ様とリオニー様。

噂ではムラマサ親方も、それなりに戦えるとか。

後はノートか。

雪原のフェンに住む一族の実力が未知数じゃのう。


そして、兵士同士の実力。


橋の上では、プリセスガード達が見事に返り討ちにしている。

やれやれ。

帝宮で我の侍女をしながら、ようあそこまで鍛錬を積んだものじゃ。

騎士団にも引けを取らん実力じゃ。

くだらん慣習がなければ、騎士団に入り、良い地位を占めることもできよう。


そして、『大地母神』神殿の神官戦士達。


なぜか『軍神』様の所の戦士団より、

『太陽神』様の聖騎士団よりも強いと言われる神官戦士達。

まあ、専守防衛にしか戦いを認められておらんが、今回は十分頼りになる集団だ。


しかし、『大地の恵みと、母と子の守護者』ではなかったかのう。

醸し出す雰囲気が、一番凶悪なんじゃが。

神殿に来た子供達が泣きそうじゃが、まあ頼れるからいいか。



そこからは、予想通りの展開じゃった。

第二皇子と第二皇女の軍勢が、適度な人数で交代しながら攻めてくる。

こちらもチームを組んで対抗する。


互いにローテーションでの潰し合いが始まった。


向こうが入れ替わりをミスっても、こちらは防戦のみ。

攻めることはできん。

向こうは隙を見つけて突入を試みる。

その度に、雪原のフェンに住む一族が、

店の二階や屋上から弓で攻撃し、向こうの侵攻を阻む。

遊牧民と聞いていたが、弓の腕は見事じゃ。

馬術もすごそうじゃのう。


皆、ようやってくれる。

単騎での防衛はなしじゃ。

必要以上の無理は許されんからのう。


グラウハイム卿は、見事に指揮を執りながら撃退しておる。


ハルヴィンダも、

赤毛親方や茶毛親方のサポートを受けながら、味方を率いておる。


アルマ様やリオニー様、ミレディは安定しておるし。


ムラマサ親方も噂に違わぬ腕じゃ。


酔拳とかいう、面白い武術を使って、斎藤をサポートしながら防いでおる。

斎藤も、決闘騒ぎはあったが、命を懸けた実戦は初めて。

初陣なのに頑張っておるが、そろそろ限界か。


こちらは時間稼ぎのため、できるだけ殺さず戦闘不能に持ち込んでおる。

その分、余計に疲労がたまる。

先程からアルマ様とリオニー様が、戦闘不能から殺害に切り替えるか悩んでいる。



日も沈んできた。


こちらの疲労も大きい。

いかん。

斎藤が転んだ。

慌てて助けに入ろうとした瞬間、斎藤に斬りかかった兵士の腕にナイフが刺さる。

斎藤の側には爺やが立ち、セバスが斎藤を抱えてこちらに飛ぶ。

雪原のフェンに住む一族の矢が飛び、敵が下がった。


よし、交代じゃ。


ムラマサ親方の隊が下がり、グラウハイム卿の部隊が前へ出る。


斎藤は店内に運び込まれ、神官の手当てを受ける。


そして、爺やとセバスの報告を受けた。

カスパール侯爵はネクタルの存在は知っているが、やはり手元にはないそうじゃ。

それに、援軍も送れぬとのこと。

カスパール侯爵の屋敷の周りにも、

これを機にその座を奪おうとしている者達が兵を出しているらしい。

こちらに兵を割けないそうじゃ。

代わりに、いくつかの貴重な霊薬を送ってくれたが、

ヴァルナの治療には使えない。


無念じゃ。


これはありがたく、皆の治療に使わせてもらおう。

しかし、これでヴァルナの治療に関しては手詰まりじゃのう。

爺やとセバスがここに戻る途中で、

西園寺公爵家とブルボン公爵家にも顔を出し、情報を求めてくれた。

各家も何かないかと動いてくれているというのが、せめてもの朗報か。



そしてそのまま夜に入り、夜戦となる。

向こうは魔術灯を照らし、夜もそのまま続けるつもりじゃ。

まあ、当然じゃな。


こちらは疲労が出てきている。


交代で休み、食事も治療も受けている。

だが朝からの連戦じゃ。


ローテーションの頻度が違いすぎる。


皆、笑顔で応えてくれるが、どこまでもつか。

そして、こちらも死人こそ出ていないが、怪我人が増えてきた。

傷は治っても、戦闘に参加できる者が減っていく。

残った者達の負担が増える。



夜が明け、朝日が昇る頃には、戦える者は最初の半数になっておった。

雪原のフェンに住む一族も前線に参加して、これじゃ。

ここは、我が城壁の外に出て暴れるか。

そう思っておると、表が騒がしくなった。


なんじゃ。

剣戟の音ではない。


「おらおら、どけや!」

「俺達は朝飯食いに来たんだ!」

「そうだそうだ、モーニングセットよこせ!」


乱暴で、戦場とは関係ない声が聞こえる。


モーニングセットじゃと。

何を言っておるのか。

誰がそんなことを言っているのかと思えば、ヘイムに毎朝来る常連客。

再開発地域で働いている若い労働者達だった。


呆気に取られる兵士達の前を通り過ぎ、城壁内へ入ってくる。


そして、再開発地域から持ってきた資材なのか、手早くバリケードを築き始めた。


「ここは俺達の飯処なんだ。入ってくるんじゃねぇ!」


リーダーらしき若者が、バリケードの上に立って兵士達を威嚇する。

他の労働者達も、手に解体道具を持ち、兵士達と睨み合いを始めた。

一部の者は補給物資なのか、食料や医療品を持ってこちらへ来る。


「あっ、貴方は、あの時の。」


ハルヴィンダが近づく労働者を見て声を上げる。


「よう、久しぶり。」


なんでも、ヴァルナが再開発エリアに出前に行った時に、

雪原のフェンに住む一族のことを説明してくれた常連客らしい。


「俺もよう、あいつらのために何かできないかと思ってさ。」


そう言って、彼は雪原のフェンに住む一族を見る。


「頭悪くて、こんなことしかできないけど、力仕事だけは得意だぜ。」


力こぶを作って笑う。


「リーダーも言ってたけどよ。ここ、ヘイムには助かっているんだ。」

「薄給の俺達でも、腹いっぱい食えるからよう。」


そう言って、ヘイムを見る。


「しかし、よくここまで来られましたね。外は囲まれているのに。」


ハルヴィンダが驚いて尋ねる。


「そうなんだよ。あいつら、中に入れないみたいでさぁ。」

「並木道に入ろうとして、見えない壁に弾かれていて面白かったぜ。」

「俺達もそうなるかと思ったけど、なんもなく普通に入れてよう。」

「そのまま、あいつらを尻目に綺麗な並木通りを通って、ここまで来たわけよ。」

「本当に綺麗だったぜ、並木通り。」


そう笑う。

そして我を見た。


「それに、俺達だけじゃないぜ。援軍はよう。」


その言葉と共に、外の兵士達がどよめく。


規則正しく響く軍靴の音。


現れたのは、一団。


聖騎士団。


『太陽神』神殿に所属する、法と秩序の守護者。


ノートを始め、雪原のフェンに住む一族が露骨に嫌な顔をする。



聖騎士団はそのまま入ってきて、我の前に並んだ。

隊長じゃろう。

一番立派なマントをした騎士が前に出てくる。


「二日前に『太陽神』様より、今日この場所に集えと。」

「この地に現れる魔族を討てと、神託を受けました。」

「どうか、参戦の許可を。」


そう言って膝をつき、指揮棒を捧げてくる。


神託じゃと。


神々は此度の一件に干渉せんのではなかったのか。


二日前。


ヴァルナが倒れる前。

世界樹が現れる前か。

これを見越していたのか。

我は目を閉じ、『太陽神』様へ感謝を述べる。

そして、指揮棒を受け取った。


「あい分かった。」

「魔族とは、我らも見過ごせぬ。」

「存分に力を振るうといい。」

「ははぁ。」


隊長が頭を下げる。

我はアルマ様とリオニー様を見る。

二人も心得たとばかりに、編成と作戦を伝え始めた。


そして、聖騎士団の一団から、一人の神官が出てくる。

おや、この神官服は。


「お初にお目にかかります。『学問の神』様の神官でございます。」

「こちらも二日前に神託を受け、この場に馳せ参じるようにと。」

「軍勢に囲まれて、どうやってここに来ようかと悩んでおりましたが、

 聖騎士団の皆様に出会い、便乗させてもらいました。」


そう言って笑う。


「で、神託の内容ですが、私がここで送受信せよと。」

「送受信とは。」


なんじゃ。

何を送受信するんじゃ。


「二日前から、神殿の書庫をひっくり返して、

 神官達が治療の霊薬の作成方法を調べています。」

「かなり高効果な物を作るように神託が降りまして。」

「その素材は、『天秤の女神』様の神殿が用意してくれるとか。」

「普段なら、いくら言っても用意してくれないのに。」


神官は少し肩をすくめた。


「その、ここの様子も何かすごいことになっていますが。」

「正直、私も神託の件がなければ、

 仕事を放り出して世界樹を調べたいのですが。」

「それほどの治療薬が必要な患者がいるのですか。」

「私がここで、治療薬のことや患者の様子を伝えるようにと。」


なんじゃなんじゃ。

『学問の神』様の神殿の書庫じゃと。


それは大陸一の知識の宝庫ではないか。


それに、必要な物は『天秤の女神』様の神殿が用意してくれるとは。

これはもしかして、見つかるのではないか。


ヴァルナを助ける方法が。


ブラスが、『学問の神』様の神官を連れて『大地母神』様の神殿へ向かう。


そして今度は、歌声が聞こえた。

これは――。


『突撃行軍歌』


『軍神』様の神官達が歌う、戦意高揚の術歌。

神官の一団が入ってくる。


第二皇子や第二皇女の兵が阻止しようとするが、

神官達の張る防御結界に弾かれる。


のう、ヴァルナ。

神々はまだ、我らを見放してはおらん。


見よ。

先程まで疲れた顔をしていた皆に、笑顔が戻ってきた。

いつもの常連客が、無謀にも駆け付けてくれた。

聖騎士団も加わって、これでまだ戦える。


これはまた、あれじゃな。

ハルヴィンダの決闘騒ぎの時もそうじゃったが、

またヘイムの倉庫が空になるのう。

じゃから、早う元気になって、マルタ殿やエミリアに怒られろ。


我は勘弁じゃ。


師匠のニューワールド講座 72

~神殿の戦力編~


師匠。

『なんです。』

前から神殿の戦士とか騎士団が出てきましたけど、

神殿って武力集団を持っているのですか。


『そうですねぇ。』

『当然、持っています。』

『国同士や貴族同士の争いには、軍や領主の私兵が出ます。』

『ですが、魔物や神秘が関わる事件には神殿の戦力が出動します。』

『もっとも、神殿ごとに特色は違いますけどね。』


どんな感じなんですか。


『まず有名なのが』

『"太陽神"神殿の聖騎士団。』

『"法と秩序の守護者"と呼ばれるように』

『邪神やトリックスターの信徒。』

『主に魔族との戦い。』

『神々の力の残滓の解放や防衛など。』

『世界の秩序と均衡を守るために戦っています。』


なるほど。

『次に"軍神"の戦士団。』

『戦士としても一流ですが』

『どちらかと言えば、前線での戦意高揚や治療支援が得意ですね。』

『様々な術歌を歌い。』

『楽器を奏で。』

『あの多芸な"軍神"らしい戦い方をします。』

『特に大規模除霊の際に行う大合唱は圧巻ですよ。』

戦場でコンサートだ。

『本人達は真面目です。』


『"学問の神"の戦士団。』

『ここは戦士というより探究者ですね。』

『知識を求め。』

『失われた遺物や古代文明を調査するため』

『危険な遺跡へ赴く専門集団です。』

冒険者みたい。

『本人達は研究者と言い張ります。』


『"天秤の女神"の騎士団。』

『ここは凄いですよ。』

『ジョブやスキルを悪用した犯罪者を捕らえ。』

『その力を封印、あるいは剥奪する。』

『まさに神罰の執行者ですね。』

怖い。

『実力者揃いです。』


『そして我らが"大地母神"の神官戦士達。』

『普段は畑を耕し。』

『大地と共に生き。』

『その恵みと家族を守るためだけに剣を取る。』

『頼もしき戦士団ですよ。』

優しそうですね。

『まあ、顔はその辺の山賊より怖いですが。』

それ大丈夫?

『愛嬌です。』


『今紹介したのは、有名な六大神の神殿だけです。』

『他の神々にも、それぞれ神格に合った戦力があります。』

『もっとも』

『余程の事がない限り、国同士の戦争には介入しません。』

『だから各国も基本的には放置しています。』

でも……

言う事を聞かない武力集団ですよね。

『ええ。』

『為政者からすれば頭の痛い存在でしょう。』

『何しろ、その背後には神々がいますから。』

……


あのう。

有名な六大神なのに、

"夜を司る女神"様の所はどうなんですか。

『あそこですか。』

『……謎なんですよね。』

えっ。

『ドラグーンがいるとか。』

『最強の弓兵部隊がいるとか。』

『剣聖や拳聖だけで編成された部隊があるとか。』

『様々な噂があります。』

『しかも、いつも闇夜に紛れて行動しているとか。』

本当なんですか。

『存在は確認されています。』

『ですが、詳細は誰も知りません。』

『天界の住人である私ですら知らないのです。』

そんな事あるの!?

『本当に謎なんですよ。』

『女神本人も謎なら』

『配下も謎。』

『あそこだけは、別格ですね。』




作者メモ

※本編のおまけ設定です。読み飛ばしても問題ありません。

※本編とは時空が違います。

※本編の都合により、設定が変わる事があります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ