69 穏やかな昼の終わり
さて、今俺は贅沢な悩みというか、個人的な悩みを抱えている。
店はお陰様で、お客様で一杯だ。
特に大きなトラブルもなく、ヘイムも無事に運営できている。
貴族や裕福な商人達という面倒なお客様も、
アンリ先生を始めとする慣れた方々が対処してくれて、俺は料理に専念できている。
偶に、最近よく通りすがる、ただのお節介焼きのお姉さんの接客をしたり、
マチルダさんのしごきに耐えたり、
師匠がキッチンを仕切ったりと、その程度だ。
あれ。
最近もう普通にみんな、師匠の姿が見えたり、声が聞こえたりしているよね。
いいのかな。
まあ、そのなんだ。
他に変わったといえば、喫茶ルームの奥にある、仕切る事ができる部屋で、
貸し切りのお茶会が開かれる事が多くなった。
まあ、対応はプリンセスガードの皆さんがしてくれるから、
お茶会のルールを知らない俺には助かっている。
マチルダさんからは、覚えて対応するようにと言われ、
「お教えしましょう」
と眼鏡を光らせていたが、丁寧にお断りした。
ここは飲食店であって、お茶会会場がメインではない。
俺を含めて庶民のみんなが、そんな堅苦しいルールを無視して、
楽しく飲み食いする場所だ。
俺には美味しいご飯を作る仕事があるのだ。
決して、ルールが頭に入ってこないとかじゃないからな。
料理を作るのが本職なのだ。
執事やホストみたいな事が出来ない訳じゃないからな。
できるか。
あんな笑顔を貼り付けて、ずっと立っているなんて。
キューブって、よくできるな。
これだけはエマさんに賛成だ。
俺もすぐ逃げ出す。
でも、偶に指名が入るんだよな。
なんでも、貴族の間でマチルダさんの弟子みたいな話が勝手に広がって、
ぜひそのお茶を淹れる腕を見せて欲しい、と。
実際にマチルダさんから指導を受けている所を見られているので、
否定したくても説得力がないのが痛い。
普段はキッチンが忙しい事を理由に断っているが、
アンリ先生やトール夫人、ハーケン夫人が開くお茶会には出て淹れている。
それがさらに噂を呼び、また指名が入る訳だ。
アンリ先生達のお茶会は、
このヘイムや従業員を守る事に繋がるから出て淹れている。
だが、初めて会うような貴族達の、
意味もない興味本位のお茶会なんてうんざりだ。
アンリ先生からも、その方が俺の価値が上がり、
それに比例してアンリ先生達のお茶会の価値も上がるから、
出なくていいぞと言われている。
そして、このヘイムで開かれるお茶会には、
一つの暗黙のルールみたいなものが出来ている。
テーブルの主賓席を空席にするのだ。
そうしていると、運がいいというか、本当に偶に座っているのだ。
ただの通りすがりのお節介焼きのお姉さんが。
最初は、若い貴族のお嬢さん達が恋バナで盛り上がっていたら、
いつの間にか座っていて、話の輪に入っていたのが始まりだった。
それを見つけた給仕のプリンセスガードの方に、
「私では無理ですから、紅茶を淹れてください」
とキッチンから呼び出されて固まったよ。
それから、本当に度々現れる。
旦那の愚痴を言い合う席とか。
子供がピーマン嫌いだと駄々をこねている席とか。
喧嘩している家の和解の席とか。
気持ちよく酔って飲んでいる席とか。
何かいい事があって、今日は俺のおごりだって言っている席とか。
仲間内で静かに飲んでいたのに、いつの間にか一緒に騒いでいたりとか。
祝いの席とか。
お茶会の席より、一階の酒の席に出ているよ。
毎回言うが、本当にいいのか。
世界が悲鳴を上げるのではなかったのか。
偶にヴァイオリンやピアノの音が流れてきた時は、従業員が悲鳴を上げているよ。
ねぇ、師匠。
そう。
そのせいで師匠は、キッチンで指揮を執るようになった。
何かを忘れようと、現実逃避している。
で、何の悩みかというと。
籠もりっぱなしなのである。
俺が、ヘイムに。
そりゃ最初はよかったよ。
通勤時間ゼロって。
居住スペースの扉を開けたら、すぐ職場って。
楽だったよ。
でも、お陰で外に出る機会がなくなった。
以前はよくランチタイムの後に市場巡りなどをして、帝都を楽しんでいた。
街を歩き、お店に入り、買い物をしたり、買い食いをしたりして。
でも今は、そんな時間はない。
最初は自分の時間の使い方が下手なのかと思ったが、違う。
夜明け前から起きて、キッチンに行き、
夜遅くにお風呂に入って寝て、また起きる。
その繰り返し。
少しでも時間が空けば、師匠の料理指導や、
トール夫人、ハーケン夫人、時々マチルダさんから、
世の中を知りなさいと、知りたくない事まで教えてくれる。
別に、師匠の指導が嫌な訳ではない。
確実に料理の腕は上がるし、それを食べるのは楽しい。
世の中の事を知るのも、日本と全然違っていて楽しい。
でもさ、限界があるでしょう。
偶には外の空気を吸いたいよ。
『そうですね。私も吸いたいです』
珍しく師匠が肯定してくれた。
『いつ来るかと、飲兵衛達に神経をすり減らされるより』
『いっそ気づかないふりをして外に出たいです』
なんか、違う理由でやつれている師匠と、初めて心が一つになった気がした。
善は急げと、俺達は悪だくみならぬ外出計画を立てる。
実際問題、本当に仕事をほっぽり出して抜け出すのは駄目だ。
俺も師匠も大人だ。
責任ある立場だ。
無責任な事はできない。
だから、店に迷惑をかけずに、合法的に外に出る方法を考える。
ほんの少しでいいんだ。
気分転換になる程度で。
そこで思いついたのが、
いつもハルヴィンダちゃんとセバスさんに任せている
出前についていく事だった。
料理を作っている者として。
店主として。
一度は出前販売の現場を見ておかないと。
という無理やりな理由だ。
なんなら、出前料理の最後の仕上げをしてもいい。
そうだ。
ケバブとかどうだろう。
目の前で肉を焼いて、出来立てを配るのだ。
もう弁当でもなくなっているけど。
今の俺達は、外に出たくて何も考えていなかった。
そんな浅はかな行動が、あんな事になるきっかけだとは知らずに。
そして行動を起こす俺と師匠。
ついて行く日のランチはバイキング形式で、
ランチ前に大量に仕込みを済ませておく。
二階の特別メニューも、そこからの盛り付けだ。
飲兵衛親方達にドネルケバブができないかと相談すると、
リヤカーをマークⅤにすれば可能との事。
それを聞いた時、俺と師匠は高笑いをした。
ハンスさんに、遂に過労で壊れたと心配された。
お陰で、息抜きに外に出たいとバレて、
みんなから温かい目で見られていたなんて気づかなかった。
そして決行当日。
俺も師匠も朝からご機嫌だった。
肉よし。
サラダよし。
パンよし。
今日の為にドネルケバブの修行もした。
さあ、行くぞ。
苦笑いするハルヴィンダちゃんとセバスさんと共に店を出る。
見送るハンスさんからは、
「ゆっくりでいいですよ。後はみんなでやるっすから」
と言ってもらえた。
大丈夫。
ちゃんと戻ってくるから。
空は快晴。
久々の外出は気持ちいい。
それに、ヘイムから南側って初めてだ。
いつも西側、市場の方にしか行かないからな。
北側や東側も行ってみたい。
それにしても、このクリスタルの山でかいなぁ。
もう三十分近く歩いているのに、まだ終わらない。
「リヤカーを引いていますからね」
ハルヴィンダちゃんが、俺の歩幅に合わせながら答えてくれる。
「普段なら、もう抜けて再開発エリアに入っていますよ」
なるほど。
でも、重さを感じずにリヤカーを引いているよね。
そうか。
俺がキョロキョロしながら歩いているからか。
それに歩調を合わせてくれているんだな。
ただでさえ俺は歩くのが遅いのに、よそ見しているから。
『ヴァルナさん。足が短いって正直に言いましょうよ』
師匠のイジリも復活してきた。
だれが短足やねん。
典型的な昭和の日本人体型です。
まったく。
『でも、ここ本当に広いですよ』
師匠が、改めてクリスタルの山を見上げる。
『村が、もしかしたら小さな町がすっぽり入るくらい大きいですよ』
『それだけに、帝都の都市計画には邪魔でしょうね』
『資源にも、観光名所にもならない。ただの大きなクリスタルの塊ですから』
俺と師匠は改めてそれを見る。
これ、消すんだよね。
俺が。
無理じゃない?
もうおっさんだよ、俺。
『そうですね。今のペースだと、数百年で出来ればいい方では?』
『老後もやる事ができて良かったじゃないですか』
そんなに生きられるかい。
老後までこき使うかい。
そう話していると、クリスタルの山の横を通り過ぎ、再開発エリアに入る。
ものの見事に何もない。
所々に、機材や休憩所らしきテントがあるだけだ。
「昔ここは、古くなったり崩れたりした家屋が沢山あったんですよ」
ハルヴィンダちゃんが周囲を見ながら説明してくれる。
「犯罪の温床にもなりますし、少しずつ解体していたんですけど、
ここ数年で一気に取り壊しが始まって」
「今はこの有様です」
「取り壊しも、もう南東の一部だけですし」
「最近は大型の魔動機も入って、最後の仕上げに入っています」
指さされた方を見ると、遠くで重機らしき物が動いている。
確かに、一気に重機でやった方が早いもんな。
でも、廃材の分別とかしなくていいのかな。
中には再利用できる資材とか、貴重品とか。
「うーん、現場監督の話では」
「長い事放置されていたから、再利用できる資材はほとんどないらしいです」
「貴重品があっても、とっくの昔に盗難に遭っているだろうって」
「だから、まとめて壊して処分するって。その方が早く整地できますから」
そうなのか。
確かに分別していたら時間がかかるしなぁ。
でも大丈夫かな。
山とか谷とかに捨ててないよね。
「やだなぁ、店長さん」
ハルヴィンダちゃんが笑う。
「そんな事をしたら、山や谷の神様に怒られてしまいますよ」
そうだよね。
現代日本でも神様が天罰を落とせばいいのに。
『こちらでは、石材などは細かくして道路建設に使っていますね』
師匠が空から淡々と説明してくれる。
『主要道路は完成間近ですが、帝国全土に道を整備するみたいですので、
資材はいくらあっても問題ないですし』
『燃やせるものは燃やして、
後は道路整備での埋め立てなどに使っているみたいですよ』
なるほど。
帝国は、戦後日本みたいに高速道路じゃないけど、道を張り巡らせているんだ。
確かに流通の便が良くなるもんね。
しかし帝国政府はお金あるんだな。
帝国全土って、日本よりでかいぞ。
『ヨーロッパくらいありますね』
そんなに。
スゴイなぁ。
そうこう話していると、沢山の人と出くわすようになった。
測量をしている人。
これから建てるのであろう建物の資材を運んだり、降ろしている人。
一部では道路が整備され、建築が始まっている所もある。
「西側では、もう建物が建って、
お店が開いていたり、人が住んでいる所もあるんですよ」
なるほど。
結構進んでいるんだなぁ。
そうした人達の間を抜けて、再開発エリアの南東方向へと向かう。
途中で、俺達みたいにリヤカーを引く人達とも出会う。
俺達と同じく、出前の配達らしい。
屋台で販売する人達は、もう朝から現場で用意をしているらしい。
販売予定の場所に着くと、ハルヴィンダちゃんとセバスさんが
手慣れた手つきでリヤカーを展開し、受け渡しができるよう準備を始める。
おっと。
周りの屋台や出前が気になるが、手伝わないと。
今日は弁当を配るだけでなく、ここでドネルサンドを作るからなぁ。
早速俺は、飲兵衛親方達の謎の技術で道中焼かれていた肉の仕上げに入り、
肉を削ぎ、ドネルサンドを作っていく。
出来立ての温かくて美味しいのをお届けだ。
味はみんなから合格を貰っているから問題ないぞ。
しばらくすると、いつもヘイムに来てくれる常連客が集まってくる。
「あれ、店長じゃん。なんでいるの」
「遂に、店で居場所なくなって現場送り?」
「おお、出来立てかよ」
色々と声をかけてくる。
こういうのも偶にはいいなぁ。
でもな。
居場所なくなってないからな。
今度店に来たら、ロシアンたこ焼き出してやる。
チョコ入りの激甘の奴だ。
覚悟しとけよ。
そう思いながらお客様をさばいていると、
時々、衛兵らしき人や、取り巻きを連れた人が近づいてくる。
だが、セバスさんが睨むと消えていく。
なんだ。
商業ギルドか帝国政府の嫌がらせか。
「あれはですな、店主殿」
セバスさんが、いつもの涼しい顔で説明してくれる。
「ヘイムの営業に一枚噛ませろと、言い寄ってくる貴族の手下どもです」
セバスさん曰く、ヘイムが有名になってきた頃から、ちょくちょく来るらしい。
ヘイムの経営権をよこせ。
もしくは共同経営になり、ヘイムを利用したい。
そう考えている宮廷貴族や、
家の経営が上手くいっていない家からの嫌がらせらしい。
ちょっと聞いてないんですが。
教えてくれないと対策取れないよ。
大丈夫なの。
何かされてない。
「大丈夫ですよ、店長さん」
ハルヴィンダちゃんが、いつぞやのグレートアックスを取り出す。
「これで一度素振りしたら、誰も近づいて来てません」
それを見て、常連客達が歓声を上げる。
「店長さんが絡まれても、追い払いますから」
笑顔でそう答えてくれるのは、大人として頼もしいと思っていいのかどうか。
それに、力押しが駄目なら絡め手とかで来られたらね。
「そちらは問題ありません」
セバスさんが、表情一つ変えずに答える。
「姫様にご報告して、対処済みです」
「どこの家の者か調査済みで、いつでも動けます」
そうね。
そうだった。
セバスさん、そういうの得意ってこの間初めて知ったよ。
アンリ先生の正体を知った時に。
ハルヴィンダちゃんの事、頼むね。
あと、頼りないかもしれないけど、報告してね。
これでも、店長で保護者の一人のつもりですから。
そして、お昼も終わり、後片付けを始めた頃だった。
お昼を終え、そこら辺でめいめい休憩したり、現場へ戻る労働者達の間に、
少し変わった服装をしている人がちらほら見える。
そして、俺の目の前にも数人。
残暑とはいえ、まだ暑いのに、顔が見えないようにフードを被った子供達がいる。
一瞬、孤児かと思ったが、被っているフードは綺麗で頑丈そうに見える。
どれもお揃いだ。
民族衣装かなにかか。
子供達は、売れ残ったケバブ肉を見ている。
出前用にしては大きかったかな。
まだ、いい匂いをさせながら焼けている。
「ねぇ、あれ売り物なの?」
一人の子がそう聞いてくる。
側にいたハルヴィンダちゃんが、困った顔をした。
「ごめんね。あれは出前用で」
「私達、出前以外で販売してはいけないの」
「店舗販売の許可証を持ってないの」
そう言って、申し訳なさそうに謝る。
そうなんだよな。
商業ギルドの許可の種類が違うから、販売出来ないんだよな。
資格もいくつか必要らしいし。
悪いな、と俺も言おうとした時だった。
子供達のお腹から音が聞こえる。
俺も腹が減った。
「ハルヴィンダちゃん」
俺はケバブ肉をちらりと見る。
「立ちっぱなしで、おっさん疲れたよ」
「この重たいのを持って店まで帰るの、しんどいよ」
「荷物を減らそうよ」
俺の言いたい事が解ってくれたのか、ハルヴィンダちゃんが小さく笑い、
ドネルサンドを配る用意を始めてくれる。
「という訳だから、ギルドの人や他のお店の人が来たら、そう言うんだぞ」
そう言いながら、俺はドネルサンドを作り始める。
この子供達だけでなく、他のフードを被った者達も集まってくる。
ちゃんとお金も払う。
やはり孤児とかではない。
でも、さっきから見ていると周りの人達の反応が変だ。
特に邪険にしている訳じゃない。
けれど、どこかよそよそしい。
なんだろう。
この世界では、一部のハイ・ヒュマや傲慢な貴族以外に差別とかはないと
聞いていたけどなぁ。
何か、関わりたくないという雰囲気を感じる。
そんな事を考えていると、フードを被った人達がドネルサンドを食べだす。
食べる時も、フードを深く被ったままなんだ。
目の前の子供も顔は見えないが、美味しそうに食べてくれる。
「どうだ、美味しいか」
つい、子供の頭を撫でてしまう。
その瞬間だった。
「その手を離せ」
冷たく恐ろしい声が、後ろから聞こえた。
首元には刃が突き付けられている。
えっ。
何。
「店長さん!」
ハルヴィンダちゃんが、グレートアックスを構えて向かってくる。
次の瞬間、俺は突き飛ばされた。
俺に刃、いやレイピアを突き付けた者は、
子供と俺の間に入り、こちらへレイピアの切っ先を向ける。
そして、俺の前に立ったハルヴィンダちゃんと睨み合う。
セバスさんが、さらに俺を背中に庇った。
えっ。
何事でしょうか。
頭を撫でただけだよね。
いつの間に俺の後ろにいたの。
師匠の警告もなかったよ。
それに、もうスケープドールないんだよ。
ハルヴィンダちゃん。
そんな恐ろしい人と武器を構えて向き合ったら危ないよ。
先程まで優雅なお昼だったのに。
辺りは一気に、危険な空気に支配されていた。
師匠のニューワールド講座 65
~アステリア帝国の広さ編~
師匠。
『なんです。』
アステリア帝国って、
そんなに大きいのですか?
『そうですね。』
『帝国全土で言えば』
『だいたいヨーロッパくらいでしょうか。』
えっ。
スゴイですね。
そんなに広かったら、
移動だけでも大変じゃないですか。
あっ。
でも西園寺財閥って、
南方で獲れた魚介類を新鮮なまま
帝都へ運んでいるって言ってましたよね。
アイテムボックスですか?
『違います。』
即答だ。
『普通に運んでいます。』
どうやって。
『港の加工場で魔術加工を行い』
『その後』
『空中モノレールで帝都へ直送です。』
空中モノレール?
『ええ。』
『弾丸特急ですね。』
『港から帝都まで僅か一日です。』
は?
『ちなみに』
『馬車なら一ヶ月。』
『鉄道なら三日。』
『飛空艇で一日。』
『空中モノレールもほぼ同じです。』
ちょっと待って。
それ速すぎない?
『速いですよ。』
『ほぼノンストップですから。』
『運転手も特殊訓練を受けています。』
『さらに専用の魔道具も装備しています。』
そんなに?
『Gが凄まじいですからね。』
『普通の人なら気絶します。』
『たまにそのGを体験したくて密航する馬鹿もいます。』
いるんだ。
『います。』
『だいたい後悔します。』
えっ。
じゃあ魔動車だけじゃなくて、
モノレールも鉄道も飛空艇もあるんですか?
『ありますよ。』
『これが無いと統治できません。』
『帝国は広いのです。』
『帝国各地を結ぶ鉄道網。』
『物流を支える空中モノレール。』
『軍事輸送を担う飛空艇。』
『これらが帝国の血管です。』
なるほど。
『逆に道路整備は遅れています。』
『現在の帝国政府の重点政策ですね。』
『なにせ魔動車を持てるのは一部の特権階級だけですから。』
飛空艇って何に使うんです?
『主に軍ですね。』
『普段の治安維持は衛兵。』
『領内の問題は領主軍。』
『国境は辺境伯軍。』
『それでも対応できない時に騎士団が出動します。』
『通信魔道具で連絡を受け』
『飛空艇で現地へ急行。』
『そんな流れです。』
おお。
飛空艇って本当にファンタジーだ。
飛行機は無いのですか?
『ありました。』
えっ。
『今はロストテクノロジーです。』
『整備はできます。』
『ですが新造は不可能です。』
もったいない。
『そうでもありません。』
『人も物資も飛空艇の方が大量に運べます。』
『しかも魔術で守れます。』
『飛行機の機銃やミサイル程度なら対処可能ですし。』
『そもそも貴重な飛行機を特攻で使う発想がありません。』
確かに。
『このまま技術が発展しても』
『個人用の小型飛空艇でしょうね。』
『ヘリコプターのようなものです。』
『空中停止もできますし。』
もう。
剣と魔術の世界なのか。
科学の世界なのか。
よく分からなくなってきました。
『ですよねぇ。』
『ですがこれくらいの移動手段が無ければ』
『帝国は維持できません。』
『それほど広大なのです。』
それでも大陸二位なんですよね。
『ええ。』
『大陸連合国。』
『USCはさらに広いですよ。』
うわぁ。
『空には飛空艇と浮遊都市。』
『大地には鉄道網。』
『海には魔動船。』
『移動手段だけで見れば』
『地球より進んでいる部分もありますね。』
なんだその世界。
『だから言ったでしょう。』
『この世界は色々と歪なんですよ。』
※アステリア帝国の広さはヨーロッパ級です。
※馬車だけでは統治不可能です。
※空中モノレールは物流の生命線です。
※飛空艇は軍の切り札です。
※飛行機はロストテクノロジーです。
※USCはさらに広いです。
※ヴァルナさんはまた世界観の広さに頭を抱えています。
※師匠は楽しそうです。
作者メモ
※本編のおまけ設定です。読み飛ばしても問題ありません。
※本編とは時空が違います。
※本編の都合により、設定が変わる事があります。




