EX:なんでバラすんですか!
「魔王ではなく、このお嬢さんが爆破します」
フェルレインは急にとんでもないことを言い出した。爆弾発言とはこのことだ。
「何でバラすんですか!」
「フェルレイン様が俺たちの研究を良く思ってないのは知ってますけど、俺らも王の命令でやってることなんで。お戯れもほどほどにして、先にご兄妹で話をつけてもらえますかい?」
最初に一瞥して以降、ダリウスと呼ばれた男はこちらに見向きもしない。完全にスルーされているのもフェルレインの狙い通りなのだとしたら、とても恐ろしい人のような気もする。
「ほら、私の言うことなんて誰も信じてないんですから、今のうちにさっさと爆破してくださいな」
「そう言われても、どこを狙えばいいのか……」
「もういいわ、自分でやるのでちょっと失礼しますね」
「あ、んっ……ちょっと、あっ……どこを……もう! どこ触ってるんですか!」
フェルレインはいきなり私の体をまさぐってきた。私は彼女の手から逃れると、自分の体を守るようにしてフェルレインから距離を取る。
「はいありがとう。みんな! 今すぐ逃げなさい!」
隠し持っていた爆弾を奪われたことに気付いたのはそれが投げられた直後の事だった。大きな爆発の後、地下の研究所は瓦礫の下に埋もれることになった。
「ぷは! フェルレインさん……?」
魔法でなんとか瓦礫から身を守った私は、爆弾魔の方を見る。
「ごぼごぼ……がべ!」
「わ、ごめんなさい!」
爆風を防ぐために私が生成した水で溺れかけていたフェルレインを助け、息を切らす彼女に尋ねる。
「どうしてこんな無茶を?」
「けほっけほっ……。それはさっきも言いましたよ。私の目的は果たしたし、私が爆破したからあなたが罪に問われることもないわ。もう行きなさい」
「下手をすれば死んでましたよ! 他の方だって……」
「この研究所には魔獣の素材を自分で取りに行くような武闘派しかいないから大丈夫ですよ。ジャスミンさんは優しいんですね?」
何が大丈夫なんだろうか。破天荒すぎてついていけない。
「いえ……。フェルレインさんは国のためにこんな無茶をするなんて、なんだからしくないですね」
「うふふ、そうですね。兄のように汚いことをしてでも国を強くする方が正しいのかもしれませんが、私はそういうやり方は嫌いです」
「もしかして……クーデターでも起こすつもりでしたか?」
「まさか。私は何もしませんよ。私は、ね」
フェルレインは意味深にウインクする。心を読めるのだから、自分が思ったように人を操るのは得意ということだろう。しかしそれならば協力できることがほかにもありそうだ。
「あなたがお兄さんの……ギルバート王のやり方に反対だというなら、私の考えに乗りませんか?」
「……ふふふ。いいわ、そんなにうまくいくかはわからないけど、作戦が上手くいかなかったときの保険になってあげる」
読心魔法は恐ろしい魔法だが、説明をしなくても伝わっているというのは便利でもある。
「ありがとうございます」
「私にもいいお話だもの。気にしないで。それより……」
フェルレインがきょろきょろと周囲を気にしている。
「どうしました?」
「誰かがあなたを呼んでる。あっち!」
瓦礫を魔法で押しのけて進んでいくと、崩れた天井部分に人が倒れていた。
「嘘……アレク!?」
私は息を吞んだ。目の前の光景が現実だと信じられない。それに、こんなことありえない。でも私があの人のことを見間違えるはずがない。
――アレクが負けるなんて。




