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なるほど……?

 ザカライアとの戦いの最中、俺はマーリンと話したあの夜のことを思い出していた。


―――

――


「魔法を教えてほしいだと?」


 マーリンは俺にすべてを打ち明けたあと、そんなことを言い出したのだ。


「うん。だってアレクさんはほとんど一人で敵をせん滅させたでしょう? ボクらだけじゃメメント・モリを守りきれなかった。ボクは、ボクもアレクさんと同じ雷魔法使いなのに」


 そう言ってマーリンは悔しそうにうなだれた。とはいえ俺も魔法を実践で使い始めて日が浅いので、教えられるほどは詳しくないのだ。俺は腕を組んで唸る。


「しかし俺も我流だからな。俺の使える魔法を教えてやることぐらいなら……」

「それでいい! じゃあアレクさんがあのとき使った魔法を教えてください」

「雷伝か? 構わんが……ここじゃなんだ、場所を変えよう」


 屋内で魔法をぶっ放して家屋を破壊した前科もあるので、二人で夜のメメント・モリを抜け出した。夜中に女性と二人で外出するというのは背徳的な気もしたが、実際の気分としては幼少期に悪友と悪戯したときと変わりない。


 そんなことを考えながら到着した丘はかつてのジャスミンとの修行場所であり、今は捕えた騎士たちで大変混雑している。彼らは氷で作られているであろう檻に数人ずつまとめて放り込まれている状態だった。寒さを抱き合って凌いでいる様子を、エレメントたちが静かに見張っている。絡まれても面倒なので、俺たちは見つからないように端の方まで移動する。満天の星に見守られながら細々と練習を開始した。


「マーリン、お前は魔法を覚えたばかりだったな。イスラフィールとはどんな訓練をしたんだ?」

「一度に撃てる魔法の出力を上げる訓練ですけど……」

「それだけか?」


 マーリンはこくりと頷いた。出力を上げるのは魔法鍛錬の基礎中の基礎だ。手を伸ばして正面に構えて狙いをつけ、手先、あるいは指先から魔力を魔法に変換して打ち出す。マーリンが語ったのは、魔法を使えるものならば誰でも一度は聞いたことがあるほどメジャーな訓練法だった。


「ということは……。お前ができるのは、これみたいにシンプルに撃ち出すものだけだな? 雷魔法【小】雷撃」


 俺は雷を正面に撃ち出す。光がバチッと小さく弾け、伸ばした手の延長線上にあった木に命中する。木は焦げ臭いにおいを発し、少し木の皮がはがれている。


「そうです。それで、痺れが広がるような魔法はどうやって?」


 俺は空を見上げながら、魔法を使う時の自分のイメージを思い出す。指をさした星から星座を作るように線が繋がっていくような、一番強い光をほかの星へと伝えていくような、そんな感覚。と、そこまで無意識的に言葉にしてふと我に返った。そして自嘲気味に笑う。俺は結局、彼女を意識しているのだ。その素性を知ってなお。


「要は魔法をどんな形で表現するかだな。まっすぐ撃ち出すだけなのか。あるいは……拡散させたり、連鎖させるのか。雷魔法【小】散電、雷魔法【小】雷伝」


 照れくささをごまかすように立て続けに放った二度の魔法。一度目の光は足元の草をマットでも敷いたかのように焦がす。二度目は当たった皮のはがれていた木がひび割れ、その木からさらに光が伝って皮のはがれた木を一本増やした。


「なるほど……?」


 わかったようなわからないような顔でマーリンは返事をした。こんなものは言葉でいくら聞いてもわかるものではないだろう。同じ魔法でも同じイメージで制御しているとは限らないからだ。赤ん坊が理屈で歩き方を覚えるのではないように、結局は体で覚えるしかない。


「それは使い手のイメージと工夫次第だ。自分の魔法で何をしたいか、どんな風に使えるか。色々考えて試してみるといい」


 マーリンは首をかしげながらも練習にかかり、その夜のうちに雷伝を習得した。


―――

――


 俺は自分がマーリンに言ったことを思い出して笑う。ちょうどあの夜のように。人には偉そうに言っておいて、自分はこのざまか。


「何がおかしい?」

「いや、なに……人に教えるのは自分の身にもなるものですね。……雷魔法【大】暴雷ッ!」

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