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月歌VSダラス 4


勝った。


ダラスは、その結果を当然のものと受け入れる。


黒い炎に包まれる一人の少女。

ふらり、と身体がゆれ、ゆっくりと跪く。


前世にしろ、今世にしろこの姿になって負けたことなど一度しか存在しない。


前世のダラスは、埼玉と融合したアルカディアオンラインと似た世界に生を受けた。

アルカディアオンラインに似た世界は北部は緑豊かな反面、南に下ると砂漠が広がる世界だった。

砂漠は年々広がり、その現状を解決するすべを求め、多くの冒険者達がアルカディアと呼ばれる古代の都を目指した。

ダラスは砂漠化を憂いでいた。そんなダラスは冒険者達の一人として旅立つ……わけでは無かった。


ダラスは召喚士にして学者だった。

この砂漠化が人の手に余るものだとダラスは気づいていた。

だから、ダラスは考えた。人の手に余るものだとしたら、自身が人の枠を超えればいいのではないだろうか?と


そう考え、偶然手に入れたアルカディアの遺産と執念に似た研究の果て。

彼は神に至る道を発見したのだ。


彼は歓喜し、儀式を行い、そして失敗した。


神にいたるはずの身体は、人類の敵とされる悪魔へと変換され、そして最終的に人類の敵として追われ続け、最終的に罠にはめられ命を落とすこととなった。


だが、その人生のうち、真っ当な戦いにおいては負けたことがない。

ダラスが手にした黒い炎は、強力だった。

威力がではない。その性質がだ。どんなに力を秘めた武器であろうが、その力を掻き乱しガラクタへと変える炎。身をまとう装備を破壊し、相手の身体を蝕むその炎。

ただ、炎を放つだけ。それだけで勝負はついてきた。


だから、今回もいつもと同じ。

いつものように炎を放ち、いつものように相手が燃え、それで戦いが終わる。


そう、思っていたのに……


声が、聞こえた。

「オーダー」

小さいか細い声、しかしその声は確かにダラスの耳にも届いていた。

「月詠」

《オーダー確認。スペシャルスキル『月詠』発動します》


月歌の声に世界が答える。

次の瞬間、月歌を覆っていた炎が霧散した。

「あー、死ぬかと思った」

ゆっくりと起き上がる月歌に、ダラスは何も言えなかった。


あり得ない光景だった。

力ずくで破られた訳ではない。ただ、風の前にした塵のようにあっという間に霧散した。

そうとしか思えない現象。


「なに、をした」

なんとか絞り出したのはそんな言葉。

「さあ?簡単に手の内を晒すと思う?」

余裕たっぷりの態度に、ダラスは奥歯を噛みしめる。

黒い炎はダラスにとって、まさに必殺とも言える技だった。

しかし、今、この瞬間を持って、ダラスの炎は必殺と言えなくなった。

必殺とは、必ず相手を殺すからこその必殺。こうも簡単に凌がれてしまえば、それは必殺と呼ぶことは出来ない。


「ふ、ざけるな。私を見下すか。装備を見ろ。防具はすでにガタガタ。あと一撃でも私の攻撃を食らえば確実に壊れる。防御力の無い騎士など、でくの坊にしか過ぎない、違うか?」

防御力が最大の武器とも言える騎士職にとって防具は一番な装備と言える。

状況だけ見れば、ダラスが圧倒的に有利とも言える。

しかし、状況的に絶体絶命のはずの月歌は、そう言われきょとん、とする。


「え?ああ、そうだね。確かに大事だけど。うん、脱いじゃえ!!」


あっけらかんと意味不明な言動と共に、彼女の防具が消え失せる。

鎧、兜、小手、靴、そして、インナーが消え失せる。


「な、ななななななななななっ、貴様何を考えてっ」


残されたのは、裸になった月歌の姿。

白く白魚のような肌を隠すことなく曝け出し、さすがのダラスも動揺する。

「あはははは、僕は男だよ。なんで恥ずかしがるのかなぁ?」

胸回りと局部が謎の光で隠されているが、寧ろその部分だけが隠されたことで、そこにあるであろう男性の象徴を確認できず、女性の裸体にしか見ることが出来ない。


「ああ、たまらないなぁ、この感覚。ああ、ようやく、ようやくだ。ようやく僕も本気を出せる」

月歌は身体全体で、世界を感じようと腕を広げる。

指先からつま先まで世界と一体になるかのような感覚に、身体がぶるりと震える。

あまりの快感に、漏れた吐息が熱い。


「そ、装備を外すとは愚か者だな。動揺を誘うなら他の手を使えばいい物を。これで貴様の勝ち目は無くなった」

「そう、思う?本当に、動揺を誘うことだけの為に脱いだと思っているの?」

クスクス、と笑う月歌。

先ほどまで、美しくはあったが色気を感じなかった月歌にむせ返るような淫靡な香りがその場を満ちていく。


「さあ、舞いましょう。どちらかが果てるまで」

「はっ!上等」


月歌がくるり、と周り、ダラスの身体から黒い炎が吹き出す。

二人の戦いが佳境を迎える。



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