朽野VS國武 1
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顔に、苦笑を浮かべていた朽野だが、内心ヒヤヒヤだった。
まず、この爺さん。確実に強い。
「あー、そこ三人。悪いけど、邪魔が入らないようにあの大穴のところで見張ってて」
「朽野さん、俺たちだってっ!」
「悪いけど、お前らが手に負える相手じゃないわ。これ」
そう、この爺さんの強さはレベルによるものではない。そのあり方である。
この世界、レベルを上げれば能力的には強くなれる。
ステータスの上昇にスキルなど恩恵は様々だ。
しかし、実際無駄にレベルが高くて使い者は一定数存在する。
武器を使いこなすだけの腕と、実戦で怯えないだけの度胸。そして、戦いにおける立ち回りなど、戦いは様々な要素が絡んでくる。
レベルが高くても、これらが出来ていなければ役に立たない。
逆にレベルが低くても、これらが高ければ十分に戦力になるのだ。
レベルで比較すれば、間違いなく朽野のほうが上だ。
もしかしたら、この三人とレベル的には大差無いかもしれない。
元々の世界では、ナイツオブラウンドにおけるヘビーゲーマーだったのだ。
レベルにおいて負ける要素は無い。
しかし、それ以外ではどうだろうか?
不用心に近づいて来ているようで、その足裁きに間合いの取り方。刀には軽く手を添えているだけだというのに、首元に刃を突きつけられているような感覚に陥る。
明らかに剣術においては達人といえる人物だ。
恐らく、三人もそれを感じているのだろう。そろそろ、と後ずさりする気配と共に、ダッと駆け出す。ほっとしながらも、目の前の敵に意識を集中させる。
(結構、しんどい相手になりそうだなぁ)
「考えは纏まりましたかな?」
「あー、いや、この爺さんどうやったら殺せるかなーとか考えてたけど、なんか無理そうで。帰っていい?」
「ほほ、物騒なこと言いなさるな。まずは少しずつお互いのことを知る必要がありますなっと」
すっと、國武が一歩踏み込み、そしてーー
突然、右側から刃が現れる。
「くっ」
狙うは、朽野の首。
阿部相手にも使った全く同じ箇所を狙った一撃。
馬鹿の一つ覚えのような攻撃だが、認識出来なければ同じこと。
相手に気づかれず攻撃出来ればクリティカルヒットとなる。
この攻撃は、通常攻撃にしか過ぎないが、國武にとって必殺の一撃でもある。
HPと防御力の低い銃剣士にとって、致命的な一撃だ。
ギリギリで気づいたようだが遅い。その刃が朽野の首に吸い込まれるより早く朽野は声を上げる。
「『プリッツ』!!」
突剣は、國武のほうに向けられている。
國武の刀が、朽野の首に到達するよりも早く朽野のオーダーが発動される。
「はっ」
朽野の身体が稲妻へと変換され、國武へと奔る。
國武の口元が笑みを作ると同時にその身体が吹き飛ぶ。
國武の身体は地面へと叩き落とされる。
直撃だ。
レベル差を考えると恐らく四分の一はダメージを与えられたものと考えるが朽野はそう簡単に倒せると思っていない。
立ち上がるより早く、朽野は、銃を構え、その老人に向けてトリガーを引く。
「オーダー『フォルテッシモ』」
「おおっと」
轟音と共に放たれた一撃を、國武はコロコロと転がり避ける。
次の一撃を放つより早く、老人は起き上がり距離を詰める為に前へ出る。
しかし、朽野は、銃剣士。早さと攻撃力が売りの職業だ。
そして、通常攻撃で遠隔攻撃のすべがある。ならば、すべきことは一つだ。
距離を縮めさせないよう後ろへと走りながら、再びトリガーを引く。
放たれた銃弾は、國武の刀で弾かれる。
恐らく、朽野の銃口で射線を、指の動きでタイミングを掴んでいたのだろう。
言うのは簡単だが、常人に出来る技ではない。
「ほほ、なかなか嫌らしい行動に出ますな。剣での戦いで銃は無粋ですぞ」
「いやいや、俺は臆病者なんで、そんなおっかない技使える相手に接近戦なんて出来ないですよ」
事実、國武の『消える刃』を朽野は恐れていた。
朽野の知る限り、そんなスキルは存在しない。となると國武が生み出した固有の技、スペシャルスキルに該当すると思われる。
スペシャルスキルは、その使い手の強い思いや、鍛錬の果てに手に入れるものだ。
そんな技を持つ相手に接近戦に挑むなど、自殺行為でしかなかった。
「いやいや、棺桶に片足を突っ込んでいる爺ですゆえ、そんな恐れることありませぬぞ。それに主もそこそこの使い手であろう?ほれ、剣で語り合おうでないか?」
「やー、ほら、俺って所謂最近の若者ってやつで剣なんてそんな使えませんよ」
「ほっほっほ、神童と呼ばれたあなたがこの程度の老人相手に何をってますことやら」
その言葉に、朽野の動きが僅かに乱れる。
お陰で、射線が僅かに乱れ、國武の頬を掠るが、逆に國武の笑みは深くなる。
「ご老体、どこでそのことを?」
「ほっほっほ、さてさて、何から話をすべきでしょうかのう?」
表情が硬くなる朽野とは対照的に、笑みを深くする國武。
「ともあれ、飛び道具を封じさせていただきますかの?主にはそれは似合わない」
そう言って、國武が刀を地面へと突き刺す。
嫌な予感がした。朽野は銃のトリガーに指を掛けーー
「オーダー『天覧死合』」
「オーダー『フォルテッシモ』!!」
その差した地面から光があふれ出る。
その光を浴びた朽野の耳に、世界の声が届けられる。
【スペシャルスキル『天覧死合』が発動されました。
レジスト失敗。遠隔攻撃及び、通常スキルの使用が制限されました】
カチリ、と引いたトリガー。しかし銃弾は放たれることなく、代わりに致命的な情報がアナウンスされる。
【『フォルテッシモ』発動に失敗しました】
「ご老体、何をしやがった?」
「ほほほ、駄目ですなぁ。最近の若い者は、スキル?とかいうのに頼りすぎている。儂の若い頃にはそんな者は存在しなかったからのう。じゃから、封じさせていただきました」
「老人、考えの押しつけは嫌われますよ?」
「ほっほっほ、嫌なら拒絶すればよろしい。儂を殺せば元通りですぞ」
そう言って、老人は再び腰の刀に手を添える。
「何、時間はたっぷりある。昔話でもしながら死合うとしますかの?」
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さ、催促じゃないよ。本当だよ(目をそらす)




