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狂人との遭遇

更新が遅くなりました。ポメラを含めたその他もろもろ無くして(取られて?)テンション落ちましたが、とりあえず復活です。

ポメラの中にある一ヶ月分の書き溜めと設定資料を無くしたのが痛い(滝汗



地響きの間隔が次第に短くなっていく。

この森に入って揺れ事態は何度もあったがこうして連続で起きるのは初めてだ。

「ちき、いや、朽野殿。この異変は一体?」

この揺れの原因が今回の出来事の根源だとするならば、この奥で何かが起きているということになる。

「解らない。だけど、今までの経緯からして碌なことじゃないんだろうなぁ。あー、帰りたい」

「先輩帰りたいんですか?なら、帰ります?」

朽野の言葉に、月歌は笑顔で答える。

そんな月歌の様子に、朽野は小さくため息をつく。

陽気で社交的に見える月歌だが、実のところ、かなり排他的だ。

関係ない人間がどうなろうと、それこそ本厚木の町がどうなろうとあまり気にしないだろう。

その代わり、一度懐に飛び込んだ相手にはとても親身になる。

その月歌の中で、常に中心にいるのが朽野だ。

だから、朽野が帰ると本気で言えば、月歌は間違いなく朽野について来るだろう。

最も、今浮かんでいるにやけ顔を見ていれば、本気でそう思ってはいないのが解る。


「あー、このまま放っておくわけにはいかないだろう」

「先輩、本当に甘いですよねー」

「お前が薄情過ぎるだけだ」

「あ、ひどいですよ、先輩。僕、結構、この国に尽くしてきたんですから」

「どうでもいい。どっちにしろ」

朽野が足を止め、視界をその先に向ける。


「あそこの奴らは逃がす気なんて無さそうだし、な」

その視線の先にいるのは、二人の男。

一人は、神経質そうな男。

むすっと口元を結んでいるが、視線はキョロキョロと周囲を観察している。


そして、もう一人は和服の老人。

その姿は今にも枯れそうな老木。腰には刀が差されており、その細い腕で振れるようには見えない。


とても強そうには見えない二人。

しかし、朽野と月歌は、肌で感じ取る。

ただ者ではない、と


特にニコニコと好好爺めいたその老人。彼からは一瞬たりとも目をそらすことができない。

穏やかで弱そうな外見。しかし、笑顔で歪んだその目の奥には、燃え滾る程の欲が見える。


嫌な目だ、と朽野は思う。

あんな目は今まで何度も見てきた。

ああいった目をするのは、戦うことがお姉ちゃんのいる店で酒を飲むより大好きな戦闘狂バトルジャンキーか、合コンより、人の血肉を見るのが大好きな殺人鬼シリアルキラーのどちらかだ。

とても友達にはなれそうもない人種だが、ねっとりとした眼がこちらをなめ回すように見ている。

「ご老体、なんでそんな眼で俺を見ているのですかね?」

「何、良い身体していると思っての?」

「いや、俺、年齢差10歳以上はちょっと、というか男は嫌いなのでご勘弁」

「ほほ、老い先短い老人に酷なこと言いますな?では、お友達からでどうでしょうかの?」

「いやー、そういうのは同じ趣味の方に仰ったほうがいいかと」

「いい加減にしろ!」


そんな二人のやりとりを見て、神経質そうな男が吠える。

「私を放って何を話している!國武!さっさと奴らを殲滅するぞ」

そう言って、男が一歩踏み出し、それに反応して阿部が朽野の前に立つ。

チームにおいて、阿部の役割は盾職タンクだ。

敵の攻撃を受け、味方を守る正統派の盾職タンク、ゆえに味方の先頭に立ち、味方を守る。

基本的に、彼の行動は盾職タンクにおいて模範的な行動であり、この未知な相手を前に咄嗟にそのような行動を取れた彼は見かけによらず優秀であると証明することとなった。


しかし、彼の行動はこの場合、悪手となる。

「やれやれ、ダラス様は気が短い。まぁ、有象無象は間引くとしますかの」

國武と呼ばれた老人がゆらりと身体を前へと傾け、そしてーー


「っ!」

先に異変に気づいたのは、朽野だ。

國武の動きは早いものではない。むしろ、緩やかなものだ。

しかし、気がつくと國武の刀はすでに放たれており、その軌道上には阿部の首を捉えている。朽野は、阿部の首を掴み引っ張る。同時にバリン、と何かが割れる音がする。

阿部のHPという壁が消失した音だ。朽野が引っ張ったおかげで阿倍の首元ギリギリを國武の刃が通り過ぎる。


「ちょっ!なんすか、今の!」

この様子からして阿部も刃が首元を通り過ぎたと認識出来ていない。

認識できない程、早い刃という訳ではない。

なのに、阿部は認識出来なかった。周りのみんなもだ。唯一、認識出来た朽野も反応に遅れる始末だ。


「國武の刀を避けた?」

「ほっほっほ、やはり見込み通りの男ですな。主は」

驚きの表情を浮かべる神経質そうな男と國武。


「ダラス殿、この男、一筋縄ではいかない様子。邪樹クリフォトの起動をお願いします。私はここで足止めしますゆえ」

「ちぃ、やはり発芽させるしかないのか」

「この場で殲滅出来るのが一番良かったですがの。恐らく厳しいかと」

「くそ、國武。時間を稼げ、私は邪樹クリフォトを起動させる」

そう言って、背後に向かって走り出すダラス。

そんな、彼の背中を、朽野は容赦なく銃で狙う。

「オーダー!『フォルテッシモ』」

彼の銃から放たれた銃弾は、ダラスの背中を打ち抜くはずだった。

しかし、響くのは、キン、という金属音。

見ると、その射線上には、いつの間にか國武の刀がある。

ダラスは無事だ。恐らくその刀で銃弾の軌道を反らしたのだろう。

「やれやれ、はめられましたな」

國武がそうつぶやくと、同時に月歌が彼の横を駆け抜ける。

月歌は、國武を無視し、遠くなるダラスの背中を追いかける。


國武はそれを止めない。いや、止めることが出来ない。

少しでも気をそらせば、目の前の男にやられる、それが予想出来るからだ。


弱そうな男だ。細い身体、気力の感じさせない瞳。まるで戦う者とは到底思えないその姿。

しかし、それが擬態だと國武は理解している。


同じく、どこにでもいる老人に擬態している國武の眼にはそれを誤魔化すことは出来ない。

そもそも、弱い男が國武の一撃を見切ることなどまず不可能だ。

「それで、ようやく相手して貰えるのですかな?」

「遠慮しないのは山々だけど、逃がしてくれないでしょう?」

そう、苦笑しながら朽野が細剣と銃を構える。

その様子に、國武は、わずかに眼を細め、刀に手を添えるのだった。


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