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ラックコントロール


「たぁ! とう! はっ!」


霧崎が、武器のハンマーを振り回す。

霧崎はナイツオブラウンドオンライン系の職業についている。

回復系の職業だが接近戦が出来ない訳ではない。

スキル構成次第では準アタッカーとなり得るだけのステータスを持ち、ここにくることが出来る適正レベル、もしくはそれ以上のレベルの持ち主だ。

しかし・・・・・・


「はっ!く、な、なかなかやるな!あ、こら、一斉に来るな。う、うわーーー」


「うん、下手だね」

「何というか、すまん」


霧崎の戦い方は、何というか下手だった。

レベルは十分、装備もそれなりに整っている。

しかし、体の使い方がなっていなかった。

運動神経が元々無いのだろう。こう動きたいというイメージはあるようだが、体がついて来てくれない、そんな印象を受ける。


「えと、何で彼、あそこまで自信満々だったのかな?」

「ああ、彼は正直頭はいい。戦況を読むことはすごく上手いのだが、何分、彼自身が自分の戦闘能力を過信している節があってな」

「そーそー、ザッキーは後方で指揮と回復に専念させるとかなりすげぇんだけどねぇ」

そう、岩島は頭を抱えるように、阿部はヘラヘラと笑いながら答える。


「お、おい! 阿部。私を助けろ!!」

さすがにやばいと思ったのか、阿部に向かって助けを求める。

「うぇーい、いいの?俺達動いちゃって、力見せるんじゃないの?」

しかし、答えたのは、ケラケラと笑う阿部だ。

「う、ぐ。それどころではない!阿部。いや、リーダー、助けてくれ」

「へ?」


つい、月歌は、変な声を出してしまう。

リーダー?誰が?このヘラヘラしているチャラ男がリーダー?


岩島を見ると苦笑しつつ頷く。

「あはは、解ったよ~。んじゃ、岩ちゃん、行ける?」

「愚問だ。いつでも」

「んじゃ、俺達、ハイヤーズのいいとこ。後輩ちゃんに見せちゃうよ~!」

そういって残り二人が、モンスターめがけて突撃する。



◆◇◆◇


「岩島、前へ突出しすぎだ。少し下がれ。阿部。岩島が後退する時間を稼げ。行けるか?」

「余裕っ!」


なるほど、良いパーティーだ。

月歌は、そう判断する。

勢いがあるが猪突猛進っぷりがある岩島を、全体を見る目のある霧島が上手く制御し、ちゃらい言動が目立つが堅実な戦い方をする阿部が上手くサポートをしている。


岩島も阿部も厚木ではトップクラスの力を持っている。

霧島は、戦闘能力は低いが、しかし冷静に戦況を広い視野で把握し、上手く仲間に指示を出している。回復のタイミングも絶妙だ。


そして、この三人は上手くかみ合っている。

互いが自分の役割を把握し、上手く立ち回っている。

言うのは簡単だが、それを実行するのは何気に難しいのだ。


恐らく、更に強いモンスターが出る西部でも十分やっていけるだけの実力が現時点でもあり、もしかしたらもっと延びるのではないか、と思わせる輝きがある。


しかし・・・・・・


「なんで、こいつがリーダーなのですか?」

戦闘が終わってからの月歌の第一声はそれだった。


「こいつって酷いなー。後輩ちゃん~」

ヘラヘラと笑う阿部。

別に三人に比べて優れているという訳ではない。

パーティーをまとめるという点なら、岩島のほうが優れているように見えるし、作戦を立て指示をするのは霧崎がずば抜けている。

しかし、阿部は特に何もない。戦闘能力は岩島と同じくらい。霧島の指示には素直に従っているがリーダーとしての素質が一切感じられないのだ。


「あー、確かにな」

「ええ、私としても岩島か、私がリーダーをすべきだと思ってはいるのですが」

「ええ、ちょ、二人ともひどくね?俺、めっちゃリーダーっぽくね?」

「全然、ぽくは無いな」

「ええ、全然駄目駄目です」


仲間二人にも駄目だしを食らっている。

「じゃあ、何でこの人をリーダーにしたのですか?」


「リーダーじゃないとこいつがメンバーに入らないというからな」

「ええ、本当に、この馬鹿がスペシャルスキル持ちじゃなかったら、さっさと追い出していたのですが」

苦笑する二人に、月歌が一人驚きの表情を浮かべる。


「え?スペシャルスキル持ち? こんな人が?」

「そそ、俺、こう見えてスペシャルスキル持ちなのよ。ほめてくれてもいいんだよ」


スペシャルスキル。

強い信念や、磨き上げた技がシステムに組み込まれた結果、発生するスキルだ。

このスキルを持つ者は何というか独特の空気を持つ者が多い。

凄味というべきか、見るものを引きつけるカリスマにも似た雰囲気だ。


考えて見れば当たり前の話だ。

スペシャルスキルに組み込まれるまで技を鍛え上げるというのは生半可なことではないし、

スペシャルスキルに組み込まれる程、強い思いを抱くことは通常では不可能だ。

常人では出来ないことを成し得た者。それが独特の雰囲気となって現れるのは必然とも言える。


しかし、目の前の阿部という男にはそういった気配が一切感じられない。

中には、そういった雰囲気を隠すのが上手い者もいるが、目の前の男はそういったのとは恐らく違う。


「へぇ、珍しいですね。一体どんなスキルです?」

「知りたい?だったらーー」

「いいからさっさと教えなさい」

「ちょっと、後輩ちゃん、俺達に辛辣過ぎない?」

「元から僕はこんな性格ですよ」

月歌は仲間以外には、こんな対応だ。

逆に言えば、仲間と認めた相手にはとことん大事にするのだが


「俺のスペシャルスキルは『運気操作ラックコントロール』。望んだ結果に対して、幸運にも引き当てるんだよ。例えば、レアな素材が欲しいと望めば、幸運にも群生地を発見したり、モンスターに発見されないようにっ!と望めば、運良くモンスターが他の冒険者が掃討した後だったりする感じかなぁ?」

「はっ?なにそれ?」

運命を操作するスキル。それはスペシャルスキルでもトップクラスのレア度を持つ能力だ。

そんなスキルを持つ者が無名のままなんて、まずあり得ない。

その疑問を月歌が口にすると、阿部が珍しく悔しそうな表情を浮かべる。


「いや、それがさ。みんな酷いんだよ。俺がスペシャルスキル持ってる!と言っても誰も信じてくれなくてさ。岩ちゃんとザッキーだけだったよ。俺を信じてくれたの」

「信じた訳ではありません。ただ、検証した結果信じざる得なかった。それだけの話です」

確かに、スペシャルスキル持ちというのは独特の雰囲気を纏っていることが多いし、自称スペシャルスキル持ちと名乗っている偽物は数多く存在している。この男もその類と勘違いされたのだろう。


「それにこいつが有名にならなかった理由としてかなり欠陥のあるスキルというのもある」

「うわっ、人のスキルを欠陥とか言うなよ」

「事実でしょう? 幸運になるスキルではなく、運気を操作するスキル。つまりは、目的のことに関してはとてつもない幸運が舞い降りますが、その分、他のことで不幸が発生する。今回も『森の異変についてヒントが欲しい』と願った結果、東京軍と遭遇することは出来ましたが、奇襲を食らう結果となりました」

「前もお前、一生暮らせるだけの金が欲しい!と望んで竹藪から金塊を見つけたは良いが、元の持ち主のヤクザにばれてコンクリート詰めされそうになってたじゃないか。折角の金もヤクザに回収されてるし」

「いや、このスキルすごく便利だぜ。ほら、晩飯をかけたじゃんけんだったら負け無しだし」

「まぁ、あの時の不運は小銭を落とす程度でしたね。おかずにかかる費用を考えると多少得した、と判断すべきですが」


なるほど、実現が困難になればなるほど、他のことに対しての運気が吸い取られ結果、不幸なことが発生するというわけか。

じゃんけんに勝つ程度なら実現できる可能性は高いから被害は小銭程度にすんだが、一生暮らせるだけの金が欲しいという実現不可能に近い願いを望んだ結果、その反動でヤクザに襲われ死にかけた訳だ。


かなり凄いスペシャルスキルではあるが、何というか使い道が本当に少なそうだ。

しかし、それでも因果を操るスペシャルスキルだ。武芸とか信念では身につくものではなく本当の意味での異能だ。


「君、もしかして前世の記憶とかある口?」

「へ?ないない。何、月歌ちゃん、スピリチュアル系の人?」

月歌は、ある可能性について口にしてみるが阿部はきょとんとするだけ。

となると、月歌と同類・・・・・・

「生まれついての体質かぁ」

スペシャルスキルの中でもレア中のレア。

元々の特異体質がそのままスキルとなるパターンだ。

正直、自分以外であったことあるのは二人目だ。

数少ない同類がこんな馬鹿であることに嘆いていると、阿部が月歌に真面目な表情を向ける。


「まぁ、それはともかく、後輩ちゃん。君に一つ提案があるんだけど」

真面目な顔でも、どこか軽い感じがするが、それでも彼なりに真面目なのには変わりない。

「もし君が良ければ、今回の事件の大本に近づけるよう『望んで』もいいよ」

その言葉に、月歌は息をのむ。

「・・・・・・いいの?」

それは、彼にとって大きなリスクだ。

この帰らずの森は広大だ。虱潰しに探すのはどうしても時間がかかる。

もしかしたら、このまま探せばすぐ発見できる距離にいるかもしれない。

しかし、巧妙に隠れているとしたら、間違いなくその際発生する災いは、彼に降り注ぐことになる。


月歌の言葉に、阿部はポリポリと頬を掻く。

「まぁ、正直、嫌だけどさー。このままだと厚木に被害が出る訳でしょ?あんな町でも俺の故郷な訳だしさあ。たまにはがんばらないと、と思った訳ですよ」


相変わらず軽い彼の言葉。しかし、そこに込められた思いは本物だ。

「岩ちゃん、ザッキー、二人もそれでいいよな?」

「ふん、リーダーはお前だ。お前が決めたことには従うさ」

「元より上を目指す以上、リスクは承知の上です」


三人の言葉に、月歌は小さく目を瞑り、そして・・・

「うん、岩島君、霧崎君、そして阿部君。君達の力、僕に貸して」

月歌は初めて、彼らの名前を呼ぶ。

それは、彼らを仲間と認めたということであり、つまりは・・・・・・

「代わりに僕は全力を持って君達を守り抜くよ」

にこりと、笑う月歌。突然の変化に岩島と霧崎は呆然とするが、阿部だけは、大きな笑みを浮かべる。


「よし!んじゃ、やりますか。オーダー!『運気操作ラックコントロール』」

彼がそう告げるとともに、突如地響きが鳴り始める。


「な、なんだ!」

「揺れる揺れる揺れる!!」

「みんな、僕の側に。オーダー!!」


月歌が三人に駆け寄り、スキルを発動。

それと同時に、地面が割りながら、巨大な触手が飛び出す。

ムチのようにしなったその触手は打ち付け、気が付くと空へと打ち上げられていた。


幸運操作ラックコントロールは、因果操作系なので上位の部類に入り、単なる技がスペシャルスキル化したものと比べるとかかなり上位に位置します。時間操作などに並ぶレア度。間違いなくトップクラスです。

ですがレア度が高くても、リスクが高すぎてあまり使い道がないという・・・


朽野にゾッコンな月歌を惚れさせるとか、世界の王になりたい、という願いも、願えば幸運に幸運が重なり叶えることは可能。ですが、本来では万が一にも有り得ない願いなので、叶えたと同時に非業な死を迎えるという・・・

現実的な使い方として、薬草の採取する際、その薬草を探すのに使う。じゃんけんに勝つとか小さいことに使うくらいでしょうか


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