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奇襲2


それは、敵地での活動中のことだった。


『帰らずの森』での工作活動。

それが、自分たちに与えられた任務だ。

危険な任務になるだろう。妨害も入るだろう。

『ソルジャーオブフォーチュン』のプレイヤーである東城は、それ相応の覚悟してこの任務に挑んでいた。


しかし、任務地は、神奈川の中枢から離れた厚木の地。

ここは、神奈川の内陸部にあり、対モンスターとの備えは出来ていても、他国の介入といった点では全く備えがされていなかった。


森の異変に気づいているようだが、送られてきたのは、ただの冒険者。

まさか、奇襲をされるとは思っていなかったのか。

東城の狙撃銃と、マギカで簡単に制圧出来た。


それが油断を呼んだのだろう。


奇襲を仕掛けた自分たちが、その直後、自分達が奇襲を食らうとは夢にも思わなかった。


奇襲の一撃で、主力のマギカ使いを次の攻撃で後方の魔法使い達も潰されてしまった。


化け物だ、と思った。

自分達の上司である隊長と恐らく同等の存在。


背後から仲間が襲いかかろうとも、後ろに目があるかのようにカウンターを食らわせ、東城が銃で支援しようにも上手く射線に味方が入るように計算された足運び。


こんな強いプレイヤーが厚木にいるとは思わなかった。

レベルの問題ではない。敵に囲まれても萎縮することなくその度胸。

そして、囲まれているにも関わらず、相手を翻弄するその技量は間違いなく歴戦の戦士そのものだ。

「くそ、なんでこんな僻地に化け物がいるんだよっ」

こういう強いのは中央の横浜か、国境の全線にいるのではないのか?

そう東城は思いながらも、目の前に暴れ回っている以上、その事実から目をそらすことは出来ない。

しかし、そんな中、チャンスが訪れた。

仲間が減り、射線上に味方が写らなくなった。


『ソルジャーオブフォーチュン』はFPS系ゲーム。

他のMMORPG系にはない利点もある。その一つがヘッドショット。

銃で相手の頭をぶち抜けば、MMORPGのスキル以上のダメージを与えることも可能だ。


混戦になっている間、距離を取ったのは正解だった。

ふう、と呼吸を整え、銃を構える。

狙うは相手の頭。スコープで相手を見て、目があった。

スコープ越しで見る相手の瞳が笑う。

つい、スコープから目を反らしてしまう。

それに気づいたのか、化け物がこちらに向かって駆けだしてくる。


「ひっ」

瞬間、悪寒が背筋を駆け上がる。

恐怖に駆られ、狙いが定まらぬ間に引き金を引いてしまう。

ぱぁん、と乾いた音と共に、化け物の体が横に飛ぶ。

避けられた?あのタイミングで?


FPS系の利点として、射程と弾速の早さがある。

実弾と同じ速度で飛ぶ銃弾は、人間の動体視力では追うことは出来ない。

狙いが定まる前に打ってしまったのは確かだが、それでもヘッドショットを狙う場合の話。

これでも、東城は銃の扱いには自信があった。

大崩壊前にやりこんだこのゲーム。廃人とまではいかないがそこそこの腕であったと自負している。

だから、この距離であれば、どんな状況でも当てる自信があった。

事実、弾道は間違いなく彼女の胸に当たるはずだった。

それを避けた。弾丸をみたのではない。どうやって?理解出来ない。

しかし、理解出来なくとも敵は待ってくれない。


迫る敵に、手が震えそうになるも、レバーを引き次弾を装填しようとする。

しかし、東城の脳の冷静な部分が訴える。間に合うか?

レバーを引くのは一瞬、狙いを定めるのも一瞬だ。だが、一瞬の間が二回もあれば、相手の間合いに入るには十分な時間ではないのだろうか?


そう思った矢先。


「させるかぁぁぁぁぁぁ!!」

しかし、残った最後の仲間。侍の男が、化け物めがけて襲いかかる。

『陰陽の都オンライン』の侍職の男。

チームの前線を任される男が、化け物相手に切りかかる。

チームの最後の希望。だが、東城には結果が見えていた。


次の瞬間、倒れているのは仲間の侍の男。

立っているのは、勿論、自分達を追いつめた化け物の姿。


「で? まだやる?」


その化け物はニコニコと笑いながら近づいてくる。


まるで旧友にもあったかのようなにこやかな笑みで。

仲間の血で赤く染まったその笑みで。


初めて、その化け物の姿をしっかりとその目で捕らえた。

黒く艶やかな黒髪、日を浴びたことのないような白い肌。そして、作り物のように整ったその顔には、見るものをほっとさせるような笑みが浮かんでいる。


周囲の状況とそのギャップに吐き気がこみ上げてくる。

銃が手から滑り落ちる。


東城は悟る。

この女は化け物なんかじゃない、と

「たっく、俺達の死神がこんな可愛い子だったなんて」

諦めの言葉と共に、東城は両手を上げて降参するのだった。



◇◆◇◆


「別に僕は無差別な殺人をしたいわけではないんだけどね」


月歌は、敵兵を殺すことの抵抗を感じるほどヤワではないが、それを楽しむほど墜ちてはいないつもりだ。

数少ない生き残りの銃使いの男の尋問を終え、月歌は小さくため息をつく。

戦いの中死んだ敵兵は、草むらに上手く隠し、生き残った者達も両手・両足を縛った状態で草むらへ。

貴重な生きた工作員だ。町に帰ったら回収を依頼するつもりだ。

無論、敵兵に見つかって戦線復帰出来ないよう適当に痛めつけてはある。


この世界、回復スキルはあるがHPシールドを回復させるのみで、体の傷は直すことは出来ないのだ。


なので、医者は未だ必要にされているのだが、この世界人体に効く薬が少なすぎて、怪我がそのまま死に繋がることも多い。


そこら辺は加減しているのだが、運が悪ければ死に至る場合もある。

だが、そこまで月歌も面倒は見きれない。


ちなみに銃使いの男に関しては、多少手加減している。

貴重な情報を色々吐いてくれたからだ。


「まさか、本当に東京軍だったとは。うん、かなり驚きの展開」


現在の情勢からあり得ない出来事に月歌は頭を抱える。

頭がリアルに痛くなる。とある事情で痛み止めは持ち歩いているが、このご時世、痛み止めもかなり値が張るのだ。

そう簡単に使う訳にはいかないが、今回は使わざるえない。


何しろ、仕入れられた情報は、それだけではないのだ。

敵の総数はそんなにいない。上手くやれば月歌一人でも何とか殲滅出来るはずだ。


問題点は、リーダー格の存在だ。

「スペシャルスキル持ち二人かぁ」


スペシャルスキル持ちが弱い、なんてことはまずあり得ない。

スペシャルスキルは、強い信念や、鍛え抜かれた技が昇華したものだ。

それを得られるような程の者が一般兵と同じレベルなんてことはあり得ない。

加え、月歌のスペシャルスキルで感じた森の奥の気配。あれは、恐らく、スペシャルスキル持ちどころの話ではない。

「あー、絶対いるよ。嫌だなぁ。『ああいった連中』と戦うの」


そして、頭痛の原因は他にもある。

ちらりと横を見る。そこには気絶している三人の冒険者達だ。

なんかノリが軽そうな青年と、なんか頭が固そうな青年と、そして、なんかノリが悪そうな青年の三人組。


見覚えのある男達。そう、道具屋で朽野に絡んできた三人組だ。

見るだけで腹が立つ。朽野をけなしたのだ。それ相応の罰を与えたい、そう思っている。しかし・・・・・・


「ここに放置する、はわけには・・・わけにはいかないか」


そういった月歌は、三人に近づく。

せめてもの腹いせにきつい気付けをする為に


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