表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/51

奇襲1

すみません、先週風邪でダウンして更新できませんでした。



月歌が好んで使うその本を片手に持ち、森を進んでいく。

何も彼女はソロでこのダンジョンをクリアしようと思っている訳ではない。

厚木には百合がいる。おそらく、月歌が『帰らずの森』に向かったという情報は彼の元に届いているだろう。

その話さえ伝われば、朽野は自分を追ってくるはずだ。


(先輩は、自分が変わったっていうけど、そう簡単に納得出来ませんよ)


関東動乱時、何かあったのは月歌も理解している。

彼は『英雄』だ。裏での活動をメインにしていたので表にその名があがってくることは無かったが、それにふさわしい実績を積んでいる。


朽野は動乱後、表舞台に立つ予定だった。

『円卓』も、彼の功績を公表する手はずになっていた。


『円卓』側としては、戦後、国側に朽野を引き入れたい、という思いから。

そして、朽野としては、女の子にチヤホヤされたいからだ。

彼の願望を聞いた時、月歌達は苦笑したものだ。

自身の内心を隠すのが得意な彼のことだ。目的はそれがすべてではないだろう。


恐らく、モテたいというのは、話半分だろう。

しかし、半分は本気だったはずだ。

それを、きっぱり捨ててまで出奔したのには何らかの理由があるはずだ

そして、それがきっと、朽野があんな態度を取っていることに繋がっている。そんな気がするのだ。


「まぁ、このダンジョンに入った段階で先輩は来るだろうけど」

このまま、朽野を待っていようか、と考えるが、しかし月歌がいるのはダンジョンの入り口付近だ。

ここにいたら、連れ戻されてしまう可能性もある。

「なら、もっと奥に行くべき、かぁ」

月歌の目的は、一つ。

朽野と肩を並べて戦うこと。

共に、戦場を駆け抜けた仲だ。そうすれば、朽野がどう変わったか、肌で感じることが出来るはずだ。

とはいえ、朽野が変わっていようが、変わっていまいが月歌がする行動は変えるつもりはない。

彼が何と言おうと付きまとう。それが月歌の生き甲斐なのだから


「まぁ、それでも変わっていないほうがいいんだけど~」


モンスター達を倒して、これで何組目か。憂さ晴らしが出来たおかげか、

月歌のテンションも落ち着いて来たところだ。


「さて!気を取り直して奥へ行きますか」


『帰らずの森』。

基本、同じような十字路が続くマップで、決まった通り進まないと奥へは進めないようになっている。


戻るにしてもこれもまた決まった通りに戻らないといけないという面倒くささ。

しかも、敵も経験値が少ない癖に、やっかいなのが多く、不人気なエリアとされている。


そんなダンジョンだが、ルールさえ理解してしまえばモンスターを除けば、攻略しやすい仕組と言われている。


このダンジョン、一見、同じに見える十字路もそれぞれの道で特徴がある。

赤い花が咲いている道。青い花が咲いている道、黄色い花が咲いている道。そして、花が何も咲いていない道だ。


基本、赤い花の咲いている道、青い花の咲いている道、黄色い花が咲いている道という順番を選んでいけば、奥へと向かうことが出来る。帰る時は、ひたすら、何も咲いていない道を選べばいい。


今、月歌が選んだのは、青い花の道。次の十字路で黄色い花が咲いている道を選ぼうとして、足を止める。


「ん?」


ふと、違和感を感じた。

赤い花の咲く道。そこがやけに気になる。

月歌の六感はかなり優れている。神ががっていると言ってもいい。

しゃがみ込み、地面を調べる。

地面が僅かに抉れ、一本の線になっている。その線の向かう先は、赤い花の咲いた道だ。


(誰かを引きずった後、多分鎧か何か着た人かな?)


モンスター達が倒した冒険者を連れ去ったのか?

しかし、それにしては多少違和感がある。


月歌は、赤い花の道を進む。

その先にあるのは大広間。

この帰らずの森は、基本の十字路の他に、ランダムにこうした広間が置かれている場合がある。


大抵、宝箱が置かれていたりと嬉しいイベントがあったりするわけだが・・・

「・・・・・の冒険者か」

「では、・・・・に連絡を」


聞こえてくる男達の話し声。

どうやら、今回はどうやらきな臭いイベントになりそうだ。


さっと、月歌は、しゃがみ込む。

運良くそこは草むら。月歌の小柄な体格ならば上手く紛れることが出来る。匍匐全身でゆっくり進む。


近づくにつれて次第に話しの内容が聞こえてきた。

「で?軍曹殿、この冒険者達どうしますか?たっく、なんでこんな場所に冒険者が・・・・・・」

「不人気なダンジョンとはいえ、いずれ冒険者は来るだろうというのは予想ついてたはずだ。上の判断を仰ぐが、恐らく処分だろうな。海老原三等兵。この件を隊長に連絡入れてくれ」

「はっ」


・・・・・間違いなく、どこぞの国に所属している軍人だ。

そして、数は5人。侍風の男に、第二次世界大戦のドイツ軍風の男。ナイツオブラウンド以外出身の騎士風の男。そして、アラビア風と陰陽師風の魔法職二人てんでバラバラだが、気になるのが一人いる。どこかスチームパンクっぽい歯車が取り付けられた黒のコートを着た男。

連中から軍曹と呼ばれたその男の腰には、レイピアと青い光を放つランタンが下げられている。

そのランタンはマギカを呼ぶ為の媒体、つまりはマギカ使いだ。

こんな、狭い上に、補給の見通しも立たないダンジョンにマギカ使いを投入しそうな軍といえば、間違いなく東京だ。


マギカは強力だが、燃料が切れればただの鉄の塊となる。

その上、こうも狭いとマギカの動きは制限されろくに暴れることは出来ない。

戦略で考えた場合、この場にマギカ使いを投入するのは馬鹿としか言いようがないが、しかし、一戦だけで考えた場合、冒険者がマギカと戦うのは相当きついだろう。


しかし、何故、東京がこんなところに?

朽野と月歌は、まず東京が出張って来ることは無いと予想していた。

それは、東京の裏事情を知っている者の視点からの判断であるが、現実として、ここにいるわけで・・・・・

(あ、いや、別に東京と決まった訳じゃないか)


では、どうするか?

このまま、様子を見るか、否。

(本人達から聞き出しますか)


転がった石を拾い、反対の草むらに向かって投げる。

ガサッという音と共に、兵士達の視線が音の方向に向く。

それと、同時に月歌が飛び出す。


「なっ!貴様!」

いち早く気がついた侍風の男の横をすり抜け、黒いコートのマギカ使いに向かって剣を振りかぶる。

「くっ!」

腰のランタンに手を伸ばそうとするが遅い。

「オーダー、『セイント・クロス』!」

剣が十字を切る。

相手のHPがごっそり削れる。が、まだ十分ではない。

とどめの一撃を刺そうとするが、周囲の兵士達が一斉に動き出す。


あわてず、月歌は本を取りだし剣に挟む。

「オーダー、『異典焚書』」

《オーダー確認。『聖火教典』1ページ消費。『正義は絶対の恵み』発動確認》

瞬間、剣から炎が吹き荒れる。

『正義は絶対の恵み』このスキルは、範囲内の敵には大ダメージを与え、範囲内の味方には、攻撃、防御力を強化させるという効果がある。


戦士職でも、並の相手なら一撃で倒せるような攻撃。

しかし、やはり相手も並ではない。

二人の魔法職がHPを0にしてへたり込むが、戦士職は、HPの大半を失いつつも、月歌に一撃を与えん、とそれぞれの武器を振りかざし、襲いかかってくる。

「こわっ」

そう言いながらも月歌の口に浮かぶのは笑顔。

四方から攻めてくる戦士達。月歌は、HPを失ったマギカ使いの背中を押す。

よろめきながら、侍の目の前へ。

「くそ!!」

侍が、マギカ使いを正面から受け止める。

その隙に、月歌は、剣を構えたまま、体を反転。

背後で剣を振りかぶっていた騎士の男の首に月歌の剣がたたき込まれる。

「いぎぃ」

HPが減っていれば、Hpと言う名のシールドはその衝撃を吸収しきることは出来ない。

騎士の男は、豚を絞め殺したかのような悲鳴を上げて倒れ込む。

「このっ!伊東の敵!!」

剣を腰溜めに構え、突進してくる。

その動きに連携するようにもう一人の銃使いが月歌に銃口を向ける。

どうするか?聖石法典使えば、何とかなるがこんなところで本を無駄にする訳にはいかない。

なら、どうするか?

「オーダー『マテリアル・シールド』」

防御力を上げる魔法スキルを発動。そのまま、銃使い向けて突進する。

「ひっ」

悲鳴を上げながら、銃の引き金を引く。銃のタイプはボルトアクション方式。連射出来ない銃だ。だから・・・・・・


トン、と軽く地面を蹴る。横へとふわりと浮かぶ体。銃弾は、僅かに腕を掠め後方へ飛んでいく。


慌てて、排莢しようとレバーを引く兵士。そんな暇を与えまい、と突進する月歌。

「させるかぁぁぁぁぁぁ!!」

しかし、それを拒む影がある。侍の男だ。

どうやら、追いつかれたようだ。

当たり前だ。あちらのほうが足が速い。しかも、自分は回避行動を取ったのだ。追いつかれるのは必然。

「オーダァァァァ!!『兜割り』!!!」

「オーダー『ストレングス』」

相手が攻撃スキルを使うに対し、

月歌は、防御、攻撃、素早さ、器用さなどステータス全般を上げるスキルを発動。

様々なステータスを上げる分、効果は薄いこのスキル。

しかし、諸々のステータスが上がるのは戦士職からすれば有り難いし、何より、マテリアルシールドと同時併用が可能というのが有り難い。

ガン、と頭に叩きつけられる刀。

僅かな衝撃と共に、HPが僅かに減る。

だが、それだけだ。

「なっ!」

驚いた表情を浮かべる侍の男。

兜割りは、侍の初歩スキル。しかし、シンプルな打撃スキルなだけあって、スキルレベルを上げればそこそこの火力になる。

一撃で倒せるとは思ってはいないだろうが、それなりのダメージを与えられる。そう思っていたのだろう。

だが、職業柄、防御力が高く。高レベル、それに加えスキルで防御力を強化しているのだ。当然の結果とも言える。


「くっ!オーダー!」

「遅い」

ガン、と剣で殴る。

スキルは確かに強力だ。だが、オーダーをしないと発動出来ない。

遠距離で戦うには気にならないタイムラグだが、近接戦だと致命的だ。

「対人戦のイロハを覚えてから出直して」


まぁ、生きて帰れたらの話だけど、と心の中で付け加える。

とどめの一撃を食らい、侍は膝から崩れ落ちるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ