報酬が魅力的だったので・・・
今回は短めです。
「あー!! またその名前で呼ぶ!いいですか、先輩、私は、キューティー月歌!ツッキーと、うげっ」
とりあえず、うざいので頭を殴っておく。
「先輩の愛が痛い」
今日何度目か解らないため息を朽野は吐いてから都子の方へ振り返る。
何というか、朽野と同じように頭痛を堪えるように頭を押さえている。
「えーと、本当に、本当に男性なのですか?」
「あー、多分」
多分がつくのは陽介、もとい月歌の性別を確かめたことがないのだ。
名前からすれば確実に男なのだが、しかし彼(?)の容姿や声は完全女の子にしか見えない。
「都子さん」
「・・・・・・なんでしょうか?」
「チェンジで」
「この方、知り合いのようですが強いのですか?」
「残念ながら」
「では、却下で」
「デスヨネー」
はぁ、と朽野はため息を吐き、目の前の月歌にどんよりした目を向ける。
「と、いうか先輩、いつ神奈川に戻ってきたんですか?みんな心配してましたよ~?」
「あ~、色々あってな」
「色々ってなんですか!色恋沙汰ですか?」
「・・・・・・なんでそうなる」
「先輩の色々というと、それしか思いつきません!そもそも、神奈川出る時、『この狭い神奈川では理想の彼女は見つからない!俺は世界に目を向けるんだ』と飛び出してましたし」
「そんなことで国を飛び出したのですか?朽野さん」
月歌の言葉に都子がジド目で見てくる。
「そ、そんなことよりなんでお前が出張ってきたんだ?それほどの案件なのか?」
話を誤魔化そうと朽野は月歌に話を降る。
「私は先輩の為なら火の中水の中!先輩のお手伝いをするのが後輩の仕事ですよっ!」
「茶化すな。お前が横浜から離れること事態がおかしいだろ。A級冒険者の近衛坂陽介君?」
「月歌ですっ!」
「で? どうなんだ?」
はぁ、と話の通じない馬鹿を無視し、話の分かる人間に声をかける。
「まさかA級冒険者を寄越すとは予想外ですが、ですが『お上』はそれほど、今回の件を重要視しているのかと」
と、なるとだ。今回の仕事断るのは難しいということだ。
とはいえ、何が起こるか解らない『帰らずの森』だ。
戦力だけ見れば、彼は戦力としてみればかなり優秀だ。
彼は、色々と問題のある人物だが、この神奈川において上位と言っても過言ではない力を持っている。
立場上冒険者となっているが、彼本人の希望があったのとまともな組織では運用出来ないから冒険者という立場となっている。
実際の所、神奈川の中枢ともいえる『円卓』の専属契約状態だ。
「つまり、上はこいつの子守をしろと?」
「うう、僕結構強いんですよ~。先輩も知ってるでしょう!」
「この方がどのような人か解りませんが、しかし私としては、受けて貰えると助かります。『お上』の評価もありますし」
都子の場合、朽野と『お上』との橋渡し役としての立場がある。
何故、朽野が神奈川中枢から直接依頼を受けないのか、その理由は解らないが橋渡し役としてそれ相応の利益を得ている。
そして、恐らく目の前のこの男(?)はその事情を知っている。
誰にでもヘラヘラと曖昧な笑みを浮かべている朽野。
それが、この月歌には乱暴に振る舞っている。表面上嫌っているようではあるが、しかしどこか一定の信頼を寄せているようにも見える。
「そうですか。受けて貰えませんか」
「えー、先輩!たまには一緒に暴れましょうよ~。先輩と一緒なら地獄までご一緒しますよ~」
「馬鹿。俺は地獄に行きたくないの!安全マージンとった行動したいの!」
「先輩、胸張っていうことじゃないですよ?そんなんだからモテ、ぎゃーーー」
口の悪い後輩の頭にアイアンクローをする朽野。
嫌がっているそぶりは見せているものの、明白に断ってはいない。
つまりは、ジャレているだけと都子は判断する。
「しかし、困りましたね。今回は特別報酬も用意したのに」
だったら、軽く背中を押せばいいだけのこと。
都子はとっておきの報酬を提示する。
「たまたまですが、三日後、我々の商会の受付嬢が参加する合コンに男性枠が空いたのですが、仕方ないですね。他の男性を・・・・・・」
「是非、受けさせていただきます」
印籠を前にした悪代官の如く、見事な土下座を決めた朽野を、月歌は呆れた目で見るのであった。




