見た目、美少女の相棒
「で、それが原因で遅刻してきたと」
「・・・・はい」
真っ青な顔で、朽野は都子の前で正座させられていた。
冬はまだ訪れていないとはいえ、その足音が聞こえるこの季節、地面の冷たさが身にしみる。
そこは、相模川の河川敷。
一応、フィールドでありモンスターの出るエリアではあるが、ここには多くの人が賑わっている。
川で漁をする人、沸いたモンスターを狩ろうとする冒険者。そして、そんな冒険者相手に商売する露天商の人達と人々の往来がそれなりにある。
一応、ここで出るモンスターのレベルは低い。
それでも危険地帯であるこんな場所に人が集まるには厚木の食糧事情も大きく影響している。
厚木は、東に食料を依存しているが、実のところ神奈川全体でみた場合、人口に対して畑の数が足りていない。
ゆえに、多少危険を犯してでも、川魚を取る必要があるのだ。
「しかし、『フレイヤーズ』との合コンですか。彼女達、酒の強さは有名でしょうに。こうなるのは予想出来ていたでしょう?」
「男は、負けると解っていても、戦わないといけない時があるのサ」
歯をきらり、と輝かせる朽野に、都子は、小さため息をつく。
『フレイヤーズ』、厚木を拠点におく冒険者グループだ。
可愛い系から、美人系。様々なタイプの美女で編成されており、それでいて強いということで、厚木において人気があり、そして一部ではとても恐れられているグループだ。
恐れられているその理由。それは、酒癖の悪さだ。
下心をもって彼女達と飲みに出かける男共はそれこそ星の数程いたが、そのすべてが彼女達の酒癖の悪さの前に破れ、トイレへと逃げる羽目となっている。
そして、都子の目の前にも、その犠牲者がいる訳だが、とても同情する気にはならなかった。
「遅刻して、しかも酒が抜ききれない状態で来て、本当いいご身分ですね。感心します」
「あ、あははは。いや、これくらいなら午後には完全に抜けるよ?本当」
彼女の冷たい目線に、冷や汗をかきながら朽野は答える。
「まぁ、いいです。今回の相棒もまだ到着していないようですし」
「あー、まだ厚木に到着していないとか?」
彼女の怒りが収まったことにほっとしながら朽野は返事を返す。
かつての日本通り交通網がしっかりしている訳ではない。
なんらかのトラブルで到着が遅れるのは日常茶飯事なのはよくあることだ。
「いえ、先日到着したようです。ですが、どうやら飲み過ぎたみたいで少し遅れてくるそうです」
「仕事前だというのに何を考えているんだ?」
「それ、あなたがいいます?」
「俺のほうが早く来たので、まだマシかなーと、あ、いやすみません調子のりました」
冷めた目でこちらを見ている都子に反論するが、ゴミを見るような目に切り替わりつつあるのを見て慌てて撤廃する。
「まぁ、いいです。今日はそこまで忙しいわけではないのでもう少し待ちましょう」
そういって、都子が衣のついた何かを口に入れる。
どうやら、自分が来るまでの間で何か買っていたらしい。
「露店で売っていたんです。フィッシュアンドチップス『もどき』。食べてみます?」
「では、一つ」
一つ貰い、口に入れる。
さくっとした食間。味はそれなりだ。
「まぁ、味は大分再現出来ているんじゃないかな、材料は?」
「知らないほうがいいと思います」
多分、とれた魚とかだったら大々的にやっているだろうし。
まぁ、ろくな素材ではないのだろう。
「都子ちゃん、そんな物食べさせないで」
これがゴブリンの肉とかだったら正直泣く。
「先輩って、結構繊細ですねぇ。そんなところも素敵ですが、あ、これ美味しいじゃないですか。どこで売ってました?」
突然の声と共に、横から延びてきた手が、都子のフィッシュアンドチップスもどきを一つ持っていく。
その声に、聞き覚えがあった。
いまだする頭痛がいっそう酷くなるのを感じる。
「相棒ってお前かよ」
振り返ると、一人の美少女が立っていた。
風に吹かれ靡く黒い黒髪。
髪にあわせて、真っ赤なマントも翻っている。
実戦を全く意識していない露出度の高い銀の鎧。
露出している腹部は雪のように白く、そして細い。
全体的に小柄で、可愛らしい容姿だ。
しかし、全身からは溢れんばかりのエネルギーを感じる。
「なーに、嫌らしい目で見ているのですか~、先輩?」
「・・・・・いや、以前見かけた時より太ったか?」
「あ、ヒドいですよ!先輩。こーんな可愛い後輩に向かってそんなこと言うなんて! つきあってくれたら許してあげます」
視線を上に向ける。そこには人形のように整った顔立ち。しかし、楽しそうに弧を描く目と口は、人形らしさからかけ離れている。
そう、絵に描いたような美少女だ。
朽野は、はぁ、とため息をつく。
自分を慕ってくれる後輩。ありがたい話である。
そう、この後輩が見た目通り『美少女』だったらの話だが
「あの、知り合いですか?」
目の前の人物の高いテンションに、都子が恐る恐る聞いてくる。
こう見えて、都子は人見知りの気がある。
こんなハイテンションの人物相手だと気後れしてもおかしくない。
「あー、こいつの名前は近衛坂『陽介』」
「はい?陽介?」
朽野の言葉に、都子はぽかん、とした顔で『彼』の顔を見る。
「ああ、こいつは、男だ。多分、な」
※作者は男の娘は好きですが、男の娘×男 は好みではありませぬ。
男の娘×女の子が大好物なので、男の娘×男 な展開はしない予定です。




