〜第15話〜第5ラウンド、魔王vs天才軍師
「【ガレオソード】」
ダックワースの右腕にブルーの光の刃が現れる。
レオンはとっさに暗黒闘気の黒い刃を出し、受ける。
が、勢いはダックワースの方が強い。
「魔王レオン。ボロボロですねえ。あなたが万全の状態ならば白熱したいい勝負が楽しめたでしょうに、残念です」
レオンの首すじに青い刃が迫る。その刃先が皮膚にふれ紫の血がしたたる。
「まぁ、こうやってあなたを消耗させて楽勝になるようにしたのは天才の私の策なので、私が残念というのも変な話なのですが、まぁとにかくこのまま死んでください」
そのとき、ふとレオンが身を翻す。ダックワースがバランスを崩し、そして転ばされた。
「な……!?」
「……うおおおおおおおおおお」
転んだダックワースに勢いを増したレオンの黒い刃が迫る。ダックワースの身体が斬られようとしていた。
レオンの刃が地面を叩いた。
ダックワースの身体が消えていた。レオンはハッとする。
そして青い刃が背中から腹へ、レオンの身体を貫いた。
「ぐはっ」
レオンは血を吐いた。
瞬間移動魔法により、倒れた状態からすぐにレオンの背後にまわったダックワース。
レオンは肘を後ろに打ち、ダックワースはバックステップで避けた。
「いやあ素晴らしい。これだけ追い詰められているのになおも反撃をしてくる。どんなに傷ついても反撃をしてくる。素晴らしい。素晴らしすぎます」
大袈裟に騒ぎながら、ダックワースは呪文を唱える。彼の頭上に凄まじい魔力が貯まっていく。
「やばっ」
脅威を感じたビョンキがペロスを抱きかかえて、端に逃げ魔法バリアを張る。
レオンは眼をかすめながら暗黒闘気の塊を自らの前につくる。
「バリアをつくる気ですが。全く無駄です。なので、どうぞお好きに」
ダックワースの頭上に巨大な球体ができた。
「【メテオヴァリエール】」
球体は弾け、無数の流星がレオンを襲う。
レオンの目の前の暗黒闘気は、獅子の口の形をかたどった。
「【獅子王流弾】」
その口から、強烈な暗黒闘気の塊が吐き出された。
「なに?」
これはダックワースも予想していなかったのか、暗黒闘気をモロに喰らう。
しかし、同時にダックワースの流星もレオンをモロに捉えた。
闘気と魔法の激しい応酬に、玉座の間は爆煙に包まれた。
◇◇◇
煙がおさまろうというときだった。
「ダックワースよ。それも計算通りか?」
玉座に座るグルスの王ナダの声だった。
「いえ、これは天才の私といえど予想外です」
衣服がところどころちぎれ、傷を負ったダックワースが立っていた。その表情は彼らしくなく真剣な真顔だった。
彼の目線の先、レオンは立っていた。
ただし、立っている、というだけで、案山子のように微動だにしなかった。
「ナダ様、天才の私としたことが手こずって申し訳ございません。ですが、これで最後です」
再びダックワースは呪文を唱えだす。
「おう、魔王くん」
緊迫した場を、陽気な声が切り裂いた。
傷だらけのオチョアが扉に立っていた。
「……勇者オチョア、今さら何しに?あなたはゲームの敗者です。脇に退いていてもらいましょうか」
「そう憤るなよ天才軍師サマ。ちょっと魔王くんに忘れ物を届けにな……ホレ」
オチョアは実に軽そうに、その大きな鉄の塊を放った。
「オチョア、それ……」
ビョンキが呟く。オチョアが渡したのは聖剣【ギャラクゲンジ】。
「ああ、これは魔王くんのものだよ」
そうオチョアは言う。が、レオンは固まったまま微動だにしない。
「これだけだ。あとは好きにやってくれ」
オチョアはにんまりとしてその場にへたりこんだ。
ダックワースは少しつまらなそうな表情を浮かべながら、呪文を唱え始める。
彼の頭上に巨大な魔力の塊が現れ始める。それは先ほどよりもさらに大きい。
魔王レオンは滅びる。
その場にいる誰もがそう思った。
そのとき、レオンの腕がそっと動いた。
静かにギャラクゲンジを握り、それを振り上げた。
しかし、相変わらずレオンの眼には骸のように生気がない。
ダックワースの頭上の球体は満ちていく。
レオンの口が何やらを呟く。それはどうやら呪文だった。
「【ブロテノス】」
レオンが振り上げたギャラクゲンジに稲妻が落ちた。
大剣に染みこむ雷。レオンはゆっくりと構えた。
ダックワースは眼を見開く。そしてとうとう唱えた。
「【メテオヴァリエール】」
無数の流星がレオンを襲う。レオンは流星を身体に受けながら飛ぶ。彼の身体はさらに傷ついていく。
煌きだすギャラクゲンジ。そして、レオンは言った。
「【雷覇斬】」
大剣の煌めきと流星の煌きで、玉座の間の天井は沸騰した。




