〜第14話〜第4ラウンド、大魔導師vs魔王、そして
満身創痍のレオンに容赦なく攻撃を続ける魔導師ペロス。
彼の発する紫の四角形はレオンの身体を切り裂き続ける。
まるで、下手な者が扱う操り人形のようにぎこちない動きしかできないレオン。
オチョアとの戦いで負った傷は相当深かった。
「魔王レオンよ。残念だが滅びてもらおう。人類の安寧のために」
ペロスが呪文を唱えると、巨大な十字架が宙に現れる。
「【パニシャロス】!!」
ペロスの放った十字架がレオンを脳天からつき刺そうと落ちてきた。
その十字架に、十字の切れ目が入った。
そしてバラバラになって崩れた。
ここで、皆は気づいた。玉座の間の天井を雷鳴のごとく切り裂き、そこに躍り出た人物がいたことを。
「……レオン様、大変お待たせいたしました」
青白い顔をした切れ長の目をした男が静かに言った。
「……オーティズさん」
レオンはその男を仰ぎ見た。彼はレオンの一番の腹心のオーティズであった。
「……貴様、なぜここにいる?」
ペロスがオーティズに問いかけた。
「……なぜ閉じ込めたのに?か」
「ああ、あの【ロッキアス】の箱から抜け出したとしても、グルスからゾゾリマへの道にはドラゴン達の軍がいたはずだ」
「ああ、あれか……、すべて倒したが」
「……何?」
「私も怒り狂っていたので、すべて首を切って殺そうと思ったが、マヤに止められた。そして今彼らはマヤに手当てを受けている。感謝をするのだな彼女に」
そう言うとオーティズは剣の先をペロスにかざした。
「お前らはいくつか罪を犯した。私を騙して閉じ込めた罪。ゾゾリマの城を犯し、レロン様やレオン様の玉座を犯した罪。そして、レオン様を傷つけた罪だ」
オーティズの剣が暗黒闘気にまみれる。そして彼は飛び込んだ。
「【シルディアル】」
ペロスの呪文によって、いくつもの盾が現れる。その盾によってオーティズの挨拶がわりの攻撃を防ぐ……はずだった。
オーティズの剣撃はペロスの盾を撃ち破り、ペロスの杖を折り、ペロスは血を吐き膝を地につけた。
「叔父様っ!!」
ビョンキが血相を変えて、ペロスに駆け寄る。
「……何だ小娘、貴様も殺すぞ」
オーティズはビョンキに剣を向ける。
「オーティズさん、彼女はお世話になっておりまして、敵ではありません」
レオンは慌てて言う。
ペロスは震える脚を押さえながら言った。
「くくく、何と迂闊であったことか。魔王レオンの力ではなく、その配下の力をはかり間違えるとは……。オチョアよ、我々も年をとったものだな……」
ペロスはそう言うと前のめりに倒れた。ビョンキは慌てて回復魔法をかける。ペロスがすぅすぅと息をしているのを見てふとため息をついた。
「ダックワースよどうする?魔導師ペロスまで倒れてしまった。今度こそ私の出番か」
「……やめましょうウシマさん、殺されます」
ダックワースのことばにウシマはムッとした顔を見せた。
「ビョンキさんは戦うどころではない。ウシマさんはあの魔王の配下に勝てない。というわけで……」
「私の出番か、ダックワースよ」
玉座に座っていた、オレンジ色の髪の男が立とうとしていた。
「ナダ様、まだ座っていて結構ですよ」
ダックワースは制止した。
「ここは、私が戦いましょう」
ダックワースは静かに上着を脱ぎ、オーティズの目の前に立った。
「ふふふ、意外そうな顔をしていますね」
ダックワースは愉快そうにオーティズの顔を扇で指した。オーティズは暗黒闘気の剣撃を有無を言わずに浴びせかける。
それをダックワースは扇を捨て、右手で受け止めた。
「な?」
オーティズの暗黒闘気はダックワースの魔力をこめた指を切り落とすことができない。
オーティズの顔に、鼻歌まじりのダックワースの顔が近づく。
そしてダックワースは呪文を唱えた。
「【ヴァヌアーズ】」
ダックワースがかざした左手からは、灰色の球が出た。その球はオーティズの目の前で炸裂し、オーティズの身体は吹っ飛ばされた。
彼の身体は壁に激突し、もう起き上がることができなかった。
「オーティズさん!!」
レオンは声を荒げる。
ビョンキはそっと呟く。
「アイツの恐ろしさは、その才能が戦略だけではなかったこと。アイツは魔法においても、この私を上回る才能を見せていた……」
自分の師であり叔父であるペロスを圧倒したオーティズを見てもビョンキは少しも狼狽えない。
それはダックワースの力を知っており、あまりの才能を苦々しく思っていたからだ。
「さぁ魔王レオン。ラストバトルと参りましょう」
ダックワースは優しく声を掛けた。




