〜第12話〜第3ラウンド、魔王vs勇者
「先生、冗談ですよね?」
レオンは真っ青な顔で問いかける。オチョアはにこやかに言葉を返す。
「ははははは、魔王くん、この前の組手で俺はマジにやって負けたって言ったよね」
「ええ」
「すまん。あれは嘘だ」
「……え?」
「俺は本気を出していなかった」
「……確かに。僕は先生が絶対本気を出していないと思っていました。先生が本気を出していたら僕は勝てるはずがありません」
「だろう。だから俺は今日は本気を出す。そして……お前を殺す」
にこやかだったオチョアの顔がどす黒い殺気で染まる。
そして、次の瞬間大広間で爆発が起こった。
◇◇◇
爆発の正体はオチョアが唱えた爆裂魔法。レオンはそれをバリアでガードしたのでダメージはほとんどない。だが、爆発の煙で視界が曇った。
レオンがそれに戸惑う暇すらなかった。オチョアの指がレオンの両目を突いた。
「ぐっ!!」
レオンの視野は全て奪われる。次の瞬間オチョアの肘がレオンの喉元に炸裂する。
レオンは声を出すことすらできずに倒れる。そのまま倒れたレオンに向けてオチョアは飛び、膝をみぞおちに突き刺した。
レオンはグッと血の混じった反吐を吐く。オチョアはそれを見下ろしながらゆっくりと呟く。
「ビョンキちゃん。【ギャラクゲンジ】を出してくれ」
オチョアの耳に伝達魔法の音声が届く。
「……本気?」
不安げなビョンキの声が伝達された。
「早い……って言うの、また?でもさあ、今のうち早くトドメを刺さないと」
ビョンキの声がさらに曇る。
「……それもあるけど、本気でレオンを殺すの?あんた、あれほど仲よさそうに教えてたじゃない」
「変なこと言うねビョンキちゃん。勇者が魔王を殺すのは当たり前でしょ」
淡々と言うオチョアに、ビョンキの「はあ」というため息が返ってくる。そして程なくして「わかったわ」という言葉が聞こえた。
オチョアの目の前が光り、3メートル長の巨大な大剣が現れた。
【ギャラクゲンジ】。勇者オチョアが扱う、必殺の魔剣だった。
◇◇◇
ギャラクゲンジを構えたオチョアを見て、レオンは動揺した。
かつて、レオンはギャラクゲンジを使ったオチョアに対し人生ではじめての敗北を喫していた。
オチョアが凄まじい速さで斬り込んでくる。レオンはとっさに暗黒闘気で巨大な刃を使い、それを受け止める。
が、息もつかせぬように二撃目三撃目が来る。初めて戦ったときと同じ。オチョアはこの巨大な剣を紙切れのように軽やかに扱う。けれど一撃一撃は凄まじく重い。だが……。
動きが見える。剣撃も受け止められる。
レオンは三ヶ月前と違い、オチョアのギャラクゲンジの攻撃を余裕を持って見れる。そして、レオンは攻撃の隙をぬって、自ら刃を振るった。
「おりゃあああああ」
オチョアは受けにまわる。さらにレオンが二撃目三撃目を振るう。オチョアが押されていた。
そして、とうとうオチョアは後ろに飛び、剣のぶつかり合いから身を引いた。
自らの成長を実感し、笑顔になるレオン。
そしてオチョアも……笑った。
「魔王くん、一つ教えてやろう」
「……え、何ですか先生?」
レオンは仰々しく返事をしてしまう。
「このギャラクゲンジは一見ただの大きな剣のように見える。ひたすら大きくて丈夫な剣。俺も基本的にはギャラクゲンジをそうとしか扱わない。けれどねえ、それはギャラクゲンジの正しい使い方じゃないんだ」
オチョアはギャラクゲンジを天にかざす。
「魔王くんはマルミナストーンって知ってるか?」
「……はい。魔法をその石にかけると、その魔法を吸収し、貯めておくことができる不思議な石ですよね。魔子宮に教わりました」
「それ、実はギャラクゲンジはほぼ100%マルミナストーンでできている」
「……え?マルミナストーンはとんでもなく稀少な石で世界中で合計1トンほどしか存在しないと言われている石じゃないですか」
ギャラクゲンジは見たところほぼ1トンかそれ以上ありそうに見える。
「だろう。そういうイカれたレベルに贅沢な剣なんだよ、コレ」
オチョアは笑った。
「で、これを正しく戦いに使うと……恐ろしいことになるんだ……」
そう言うとオチョアは真面目な顔になり、呪文を唱え始めた。
「【ブロテノス】」
雷撃魔法を唱えたオチョア、しかし稲妻が落ちたのはレオンにではなく、ギャラクゲンジにだった。
ギャラクゲンジは、雷を受けたと思えないほど静かだった。
そしてオチョアは飛んだ。再びレオンに剣撃を与えようとしていることは明らかだった。
レオンは刃を構えた。
その時、静かだったギャラクゲンジが眩く光り始めた。まるで爆発する直前みたいに。
「【雷覇斬】」
オチョアの剣撃。レオンは受け止める。が、同時に雷がレオンの目の前で爆ぜた。
その爆発には音すら無く、レオンは光に飲み込まれた。
コンマ数秒後、ゾゾリマの城は揺れ、窓という窓から光が漏れた。
大広間は粉塵にまみれ、全く視界がきかない。
粉塵が収まったとき、そこにはぼんやりと立っているオチョアがいた。
「そういうことだ。すまないな魔王くん」
オチョアの目の前には皮膚が焼けただれ、真っ黒焦げになったレオンが転がっていた。




