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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第6章〜魔五国連合蹂躙
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〜第9話〜第1ラウンド。vs鏡師

 レオンはゾゾリマの城に入った。

 馴染みのある城のはずなのに、あまりに静かで不気味だった。

 表の大きな扉を開けると、正面玄関の広い廊下が広がっている。

 レオンはしばらく歩みを進めたあと、その異様さに気がついた。


「こんなに鏡があったっけ?」


 廊下の壁中に大鏡が無数に貼りつけてあり、その大鏡がレオンの姿を映していた。

 廊下の先にある大扉の前に灰色い肌の大男が立っていた。


「ごお」


「あっ、タカマさんじゃないですか、どうも」


 火を使う怪力魔術師のタカマがそこにいた。


「すみません。僕は先に行きたいので、通していただいてよろしいでしょうか」


「ごお」


 タカマは静かに首を横に振る。


「そこを何とか」


「……ごおおおお」


 タカマは困った顔をしながら首を横に振り続ける。


「おいタカマ。世話になったからって気を使うなよ。そんあことじゃ世知辛い世の中、渡っていけねえぜ」


 軽い声が聴こえた。そして壁中の鏡に赤髪の男の姿が映った。


「俺のお姿を見せるのははじめてかな……。どうも魔王レオン様。どうも魔術師のシオミです」


 わざと丁寧に頭を下げるシオミ。


「あ、どうもレオンです」


 合わせて頭を下げるレオン。頭を下げつつ聞き覚えのあるシオミの声に、誰だっけ?と思案を巡らせていた。


「魔王様、もうおわかりでしょうが……、我々ふたりがゲームの第1ラウンドのお相手です」


「え?」


「まぁ、ここでゲームオーバーでしょうが」


 そうニヤリと言った瞬間、シオミが鏡から消えた。

 ハッとしたとき、背中に痛みが走った。鏡から出たシオミのナイフによる斬撃を背中に浴びせられていた。


「くっ」


 レオンの上着の布切れと血が舞う。同時にタカマが「ゴオ」と駆け寄り、腕を振り下ろす。

 レオンはふらりと避けた。

 タカマは腕を連続で振り下ろす。レオンは体勢を崩したまま何度も避ける。避けながらシオミの姿がまた消えていることに気づく。

 ふと左側の鏡を見るとシオミの笑顔が見えた。右手にはナイフ。レオンはヤバイと思って身体をひねる。

 次の瞬間、鏡から突如目の前に現れたシオミのナイフが突き上げられていた。

 レオンはこれを避けた。


「流石魔王レオン様だねえ」


 そうシオミが軽口を叩こうとしたときだ。

 シオミの顔面にレオンの拳がめり込んでいた。


「なっ!!」


 次の瞬間、タカマの鳩尾にもレオンの拳がめり込んだ。

 シオミは地面に、タカマは天井に叩きつけられた。

 タカマが地面に落ちてふたりして地面に横たわったとき、シオミは思った。

 ありえねえ、なんでこっちが不意打ちついてんのに逆襲されて地面這いつくばってんだよ……。


「すみません、つい……。大丈夫ですか」


 その声が妙にシオミの気に障った。


「タカマしゃあねえ、奥の手出すわ」


 シオミはそう言いながら立ち上がった。


「お待ちください!!」


 突如、その声とともに玄関の扉が開かれた。

 そこには肉付きのよい身体をし、青い眼とふんわりとした金髪の少女がいた。


「クリヤさん」


 レオンはよく知った顔を見て嬉しそうな表情を浮かべる。

 そこにいたのはホーハムの姫、クリヤだった。


「クリヤさん、どうしてここに?」


「わたくし、家出をして参りました」


「え?」


「そして、あくまでレオン様に危害を加えようというお父様とホーハムを見限り、レオン様の味方になることにしました」


 クリヤは毅然と言う。

 10分前、クリヤはゾゾリマの城下町を包囲していたホーハムの魔族たちを振りはらってゾゾリマの城下町に入り、5分前、ゾゾリマの城壁を素手で破壊し、城の敷地内に入っていた。


「レオン様っ……、その傷はっ!!」


 クリヤはレオンの背中の傷を見て血相を変えて駆け寄る。


「血が出ています。大丈夫ですか?」


「はは、全然大丈夫ですよ。心配なさらずに」


「いや……痛そうです……。こういうとき女のヒトは傷口をペロペロしてあげたほうがいいんですよね。よーし」


 クリヤは舌をぺろっと出してレオンの背中に近づける。


「いや、ホントに大丈夫です。汚いですから」


 この言葉にクリヤは「そんな」と涙目になる。


「……。あっ、クリヤさんの舌が汚いということじゃなくて、僕の背中が汚いからという意味です。クリヤさんがお腹を壊したら困ります」


 こう言われて、クリヤの表情はパッと明るくなった。


「ありがとうございます。そうですよね。ペロペロしたらもしかしたら赤ちゃんができてしまうかもしれないですし。相変わらずレオン様はお優しいです。……しかし、その傷をつけたのは」


 クリヤの目に、シオミとタカマの姿が目に入る。


「あなたたちですね!!」


 クリヤは激怒し、ずんずんと近づいていく。


「おいタカマ、変なことになったなあ」


 シオミはタカマに目を向ける。すると、彼は身体を震わせながら身を腰を引いていた。


「……。おい何そんな怯えてんだよ?……ああ」


 シオミは思い出した。以前タカマは鏡の世界でクリヤとふたりきりになり、そこでクリヤの怪力でしこたま殴られたのだ。


「そこまでトラウマになっているとはなあ……。まぁいいや」


 シオミは笑った。


「あとは、俺ひとりであの姫さんと魔王レオンを殺すからよ」


 シオミはそう呟いてシオミは一番奥にある鏡に入りこんだ。


「お待ちなさい。逃げるのですか!?」


 クリヤは怒って言った。


「逃げる?姫さん、それは違うぜ」


 勝ち気な声が廊下中に響く。


「アドバイスだ。今のうちに遺言を決めといた方がいいぜ」


 奥の鏡にシオミの笑顔が、右手に持ったナイフが輝く。


「……【ソニックミラージュ】」


 シオミのその声が聴こえた瞬間だった。

 廊下の鏡がピカピカと点滅した。

 レオンもクリヤも、何が起きた?と思った。

 けれどそれも一瞬のことだった。

 ふたりの身体に痛みが走る。


「ぐっ」


「きゃあああああああああ!!!!」


 ふたりの衣服は、そして身体は、かまいたちにさらされたかのように切り刻まれていた。

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