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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第5章〜オーティズ、北の国から
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〜第5話〜オーティズ、魔法学校の創設者と会う

 龍の巣の長老の家にオーティズとマヤは通された。


「剣をお預かりしましょうか?」


 みすぼらしい長老の使用人らしき男がオーティズに声をかける。


「いや、場合によってはここで使うかもしれんからな」


 オーティズがこう言ったので、使用人らしき男は何も言わずにひっそりと部屋の隅に下がった。

 オーティズとマヤが椅子に座るとマヤが口を開いた。


「その……オーティズさんが探していた魔法学校はどこにあるんでしょうか?」


「マヤちゃん。わしには友人がいる」


「……はあ」


「とても聡明な男であり、飄々と見えて熱き志をもった男でもある」


「……」


 質問とは別のことを話し出した長老に戸惑うマヤ。


「その男は龍でもなく魔族でもなく人間だった。そして壮絶な魔力を持った魔導師であった……」 


 長老は静かに言葉をつむぐ。


「彼とはとても仲が良かった。彼は種族の差など気にしないと言うたちでな。だからわしも仲良くできたのだ……。そして種族の垣根を気にしないその男はとんでもないことを私に相談してきた。魔法学校をつくる。生徒は魔族であろうと人間であろうとなんであろうと構わないというな」


 長老はその時のことを思い出して笑った。


「だからこそ、『場所』を貸して欲しいと言われた。龍の巣の奥にある聖地をな」


「……『聖地』そこに魔法学校はあるのか」


 オーティズは立ち上がった。


「……せっかちな男よ。もう魔法学校はそこにはない。生徒も皆散り散りになり、もうもぬけの殻だ」


「その魔法学校の生徒だった者どもが次々と我が主君を襲っているのだ」


「……お前の主君は、もしかして魔王レオンか?」


「そうだが」


「そうか、魔王レオンか。なるほど」


「何がなるほどなのだ」


「魔王レオンはあまりに強大な力でこの世を飲み込もうとしている。すべての魔族を支配し人間や我ら龍たちもすべて手中に収めるかもしれない。そんな危険な存在だ」


「……ちがう。我が主君はそんな危険な存在ではない」


「何を白々しい」


「……その、むしろ私はできればお前の言う通りすべてを支配して欲しかったのだがなあ……」


 オーティズの脳裏には穏やかにラミアと一緒に花園の世話をするレオンの姿が浮かんでいる。


「話の続きだ。実はその魔法学校の中の出世頭がいてな、現在グルスを実質ひとりで動かしている。自信過剰が鼻につくがとにかく天才だ。その男は魔王レオンの脅威をいち早く気づいた。そしてかつての魔法学校の同門たちを集め、動きはじめたのだ。魔王レオンを滅ぼそうと」


 オーティズの脳裏に、レオンを襲った土使いや鏡使いが浮かぶ。


「ふん。だがグルスを動かす天才とやらもたかがしれているな。奴の策はすべて失敗しているぞ」


「くくくくくく」


「おい、何がおかしい」


「やはり気づいていないのか。その男の策の総仕上げはこれからはじまるのだ」


 龍の長老は不気味に笑った。オーティズはもうこれだけ聞けば用はないと席を立った。


「そういえば、最後にひとつ質問だ。魔法学校をつくった人間の男とやらはどうしているんだ?」


「……」


「教え子がこれほどやりたい放題をしているのに、その男はまるで関与していないのか?まさかもう死んでいるのか?」


「……何を言っているんだ?」


「……?」


 龍の長老の目がさらに黒みを帯びていく。オーティズの気持ちに言いようのない焦りがうまれる。


「魔法学校の創設者、ペロスはずっとここにいるじゃないか」


 オーティズとマヤは振り返る。そこには、ふたりがずっと使用人だと思っていた男の姿があった。

 その男はいつの間にか呪文らしきものを唱え、手がオレンジ色に染まっていた。


「お前、何をしようとしている!?」


「先ほどの君の質問にかわって答えよう」


 ペロスという男の手はさらにオレンジ色を増していく。


「我が教え子、ダックワースからその話を聞いたとき、私としても思うところがあった。本来私は平和主義者で、人間であれ魔族であれ平等に接するのが私のポリシーだ。当然いさかいには手を貸したくない。だが……」


 ペロスは深く息を吸う。


「魔王レオンが相手ならばやむをえまい。あの男はあまりに危険すぎるのだ」


 オーティズは剣を抜いて飛びかかろうとする。


「だから若き魔族よ。すまぬな」


 ペロスは手にまとったオレンジ色の光を解放する。その光は巨大に膨らみ、オーティズとマヤを飲み込んだ。


「ぐああああああ」


「きゃあああああ」


 ふたりの悲鳴がこだました。

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