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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第5章〜オーティズ、北の国から
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〜第3話〜オーティズ、龍の巣を行く

 ガイエルの歩みは凄まじいものだった。

 雪の上だと言うのに、まるで舗装された道路の上を歩くがごとくスタスタと進んでいた。不思議なことに雪には足跡ひとつつかない。

 オーティズたちが乗る犬ゾリはかなり速く走っているが、ガイエルの歩みはそれより速い。


「凄いですね。これがニンジャですか」


 マヤは爛々と目を輝かせた。

 ガイエルは急に脚を止めた。犬ソリも急ブレーキをかけた。


「ここだ」


 ガイエルはぽつりと言った。ガイエルの目の先にはぽっかりと洞窟の入り口が見えていた。


「……これが魔法学校ですか?」


 マヤが不思議そうに聞く。


「……龍の臭いがするなあ」


 オーティズがこう言うと、ガイエルの口もとがニヤリと笑った。


「そりゃそうだ。ここは龍の巣だからなあ」


「…………ちょっと、話が違うじゃないですか」


「どう言うことだ。説明しろ」


 オーティズがガイエルを睨みつける。


「私が聞いた噂というのがそうだからだ。『魔法学校は龍の巣の奥にある』と」


「何っ」


「……まぁ、あくまで私が聞いた話だ。本当かどうかはわからん」


「……」


「では、私はこれで」


「ちょっと待て」


「……なんだ。私は修行に戻りたいのだが」


「案内、感謝する」


「……驚いた。まさか礼を言われると思わなかった。ものすごく冷淡そうな奴だと思ったものでな」


「冷淡な者でも、世話になれば礼くらい言う」


「……お前、あれか、もしかしてツンデレという奴ではなかろうか」


「ふざけたこと言うと斬るぞ」


「はい、私もオーティズさんはツンデレではないかと思います」


「お前まで何を」


 突如口を挟んだマヤにオーティズは驚きの目を向けた。

 その隙にガイエルは「では」と言い、さっと姿を消していた。


「……」


 オーティズとマヤは洞窟の入り口の前、横なぐりの吹雪の中、立ち尽くした。


「オーティズさん。行きましょうか」


 マヤはグッと拳を握りしめて言う。


「それなのだが。キミはここで待っているか、遠くへ行った方がいい」


「え?」


「ここは龍の巣だ。獰猛な龍どもが無数といる。キミには危険すぎる」


「あ、でも、オーティズさんは?」


「私か?私なら心配ない」


 オーティズの目の奥がぎらりと光った。


◇◇◇



 オーティズは歩みを進めていく。足音がたたないように静かに、そして速やかに。

 明かり一つない洞窟をオーティズの目は紅く妖しく光り、蹴つまずくこともなく進んでいく。

 10分ほど歩みを進めたところでオーティズは脚を止めた。

 彼の目の先には黄金色に輝く巨大な空間が広がっていた。

 ドシドシと地鳴りがしたので、オーティズはとっさに身体を翻し、物陰に身体を隠した。

 目の前を黄金の身体をもつドラゴンが五体ほど通った。

 ドラゴンの姿を見た瞬間、オーティズの右手はブルブルと震えていた。

 ブルブルと震える右手を左手で押さえつけるが、身体中が震えているため、少しも震えが止まらない。

 何とか物音を立てないないように震えを押さえていると、ドラゴン達が通り過ぎた。

 オーティズはひと息をつき、物陰から身体を出す。


「何者だお前は!?」


 オーティズの背中から声が飛んだ。

 そこには金色の髪をした男がいた。


「お前は龍族ではないな」


 金色の髪の男は腰に携えていた笛を吹く。


「……擬人化したドラゴンか」


 オーティズは呟く。笛の音が響き、ドシドシという足音や羽音が殺到する。

 気がつくとオーティズは無数のドラゴンに囲まれていた。

 オーティズの髪は汗でびっしょりと濡れていて震えが止まらない。


「……やめろ……近づくな」


 オーティズはそう呟くが、何人かの擬人化したドラゴン、巨体のままのドラゴンがオーティズに近づく。


「……やめろ……これ以上、龍の臭いを俺に嗅がせるな」


 オーティズはうずくまる。

 ドラゴンは彼を完全に包囲し、彼を捕らえようとしていた。

 オーティズはぎろりと目をむく。


「これ以上近づいたら……また……龍を皆殺しにしたくなってしまうではないか」


 オーティズは赤い口を三角にして言った。

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