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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第5章〜オーティズ、北の国から
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〜第1話〜オーティズ、雪国を行くその1

 雪がはらはらと舞い落ちる。

 ここは北の雪国グルス。巨大な一本杉の根本でゾゾリマ魔族のオーティズは立っていた。

 彼は秘密裏にこの国に潜入していた。そして今彼がここで待っているのは案内人であった。

 初めてやってきたこの国に彼は全く明るくない。右も左も分からないまま諜報活動をしたら命がいくつあっても足りない。そこで、旧知の友人のつてを辿って、この国をガイドしてくれる者を手配していた。


「……オーティズさんですよね」


 そう声をかけられた。その声は男の声ではなかった。


「どうも、初めまして。案内人のマヤです」


 オーティズは怪訝な表情を浮かべた。なぜならば、そこに立っていたのはオーティズの腰くらいしかない低身長の女の子だったからだ。


「未熟者なのでいろいろと不手際もあると思いますがよろしくお願いいたします」


「……キミ、年は?」


「え、あの、先週で11歳になりました」


「……」


 オーティズは閉口した。魔族の11歳は人間の赤ん坊のようなものだ。


「……やはり、ご心配でしょうか?」


 マヤがおずおずと聞く。


「まぁな、命がかかっている任務なのだ」


「そうですか……、やっぱり私みたいなコドモじゃ不安ですよね……」


 マヤがこう言ってシュンとしてしまったので、オーティズは思い出したように言った。


「そういえば、我が主君は0歳だったが、堂々とゾゾリマの魔王を務めている。キミも見た目は幼いが芯はしっかりしていそうだ。まぁよろしく頼む」


「すみません。ありがとうございます」


 マヤはぺこりと頭を下げた。そして、こちらへどうぞと手招きした。

 そこには銀色の毛をした犬に手綱が繋がれた犬ゾリがあった。

 マヤはオーティズが静かに座席に腰かけたのを確認すると、手綱をにぎり「ハイヤ」と声をあげた。

 足跡1つない雪道を駆けていく犬ゾリ。

 寒くありませんかとマヤが毛布と、水筒のホットコーヒーを差し出したが、オーティズはさらりと遠慮した。


「……ところでオーティズさんは、ヨモリまで行きたいとのことですが、どうしてあんなところへ?」


 ヨモリはグルスの中でも辺境の地であり、雪深く、魔族どころか生き物もそんなに寄りつかないような場所である。


「昔聞いたことがある。グルスには魔法学校があると」


「……魔法学校ですか?」


「最近、妙な魔法を使ってくる奴らに絡まれることが多い。そいつらの身元を調べようとしたが、困ったこと

にそいつらは妙な魔法を使ってくるということ以外に何も共通点がない。散々悩んだが、そこで古い記憶を思い出した。人間の魔法使いがグルスに渡り、色々な魔族や人間に、自らの妙な魔法を節操なく伝授しているという噂を」


「……その魔法学校がヨモリにあるんですか?」


「遠い記憶と地図を照らし合わせた結果だ。我ながら今回は途轍もなくあいまいな根拠で動いていると思うがな」


 オーティズは前髪をつまんで言った。

 ここで犬ゾリが急停車した。


「どうした!?」


「……何か、いるみたいです」


 犬たちが何かを見つめ、ぐるるとうなり声をあげている。

 オーティズはそちらを見やるが、そこには白い雪景色しかない。


「……何もいませんね」


 マヤは言う。


「いや」


 オーティズはそういうと剣を抜き、黒い斬撃を飛ばした。

 斬撃が雪にあたる直前、何かが雪から飛び出した。


「……何者だ?」


 オーティズは剣を向けて言う。飛び出した者はしゅたりと雪の上に降り立っていた。

 それは、全身を黒い装束で固めた妙な男だった。


「……魔族か?」


 その者は逆にオーティズに聞いてきた。


「聞いているのはこちらの方だ」


「……失礼した」


 オーティズの言葉に、黒装束の男は静かに答える。


「我はガイエルと申す」


 そう彼は名乗った。

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