〜第7話〜魔王、勇者に弟子入り
「…………」
そこにいる全ての者が沈黙をしていた。
数秒後にようやく口を開いたのはオチョアだった。
「魔王くん、今何と…………」
レオンは答える。
「はい、この勝負は僕の負けです。このままでは、どう戦ってもあなたに勝つことができません」
レオンははっきりとそう言った。その言葉を聞いて、顔面蒼白で口をあんぐりと開けて固まっているのがアグバだった。そして、レオンは続ける。
「そして、オチョアさん。お願いがあるのですが……」
レオンは地に膝をつき、頭を下ろした。
「僕をあなたの弟子にしていただけないでしょうか?」
…………………………。
………………………………………!?
………………
そしてまた沈黙が訪れた。
数秒後にオチョアが口を開く。
「別にいいけど…………」
その返答にまた周囲は固まる。
レオンが満面の笑みでありがとうございますと言うのと同時に、ビョンキが烈火のごとく怒った。
「あんたたち何トチ狂ったやりとりしてんのよ!?魔王が勇者に弟子入り志願するなんて前代未聞だし、それを軽く許すオチョアもいったい何考えてんのよ」
この言葉にまずレオンが返す。
「いやあ、実際手合わせをしてみて、これほどまでに見事な戦闘技術を持った方にはじめて会いましたので、つい感動して、是非とも教えを請いたいという気持ちになりまして」
続いてオチョアが言う。
「うん。素直そうなコだし、別にいいかなあって」
ふたりの返答はまったくビョンキを納得させなかった。
「おいオチョア、そもそもあんたはお父様に、『魔王レオンを倒せ』って言われてやってきたんでしょうが。こんなことしたら任務違反で、あんたも人類の敵よ」
「……倒したじゃん」
「…………はあ?」
「ほら」
レオンを指差すオチョア。確かに魔王レオンは両膝をつきこちらに頭を下げている。先ほど敗北を認める言葉も述べた。
この状態は確かに『倒した』と言って差し支えない。
「これOKでしょ。『魔王レオンを殺せ』なんて一言も俺は言った覚えはないし」
「あんたねえ……」
ビョンキはわなわなとスカートを握ってまぶたをぴくぴくとさせた。
「子どもの屁理屈じゃないんだから。このまま倒しましたって帰るわけにはいかないでしょ。そしたらゾゾリマの脅威は残り、人類はいつ侵攻されるかわからないじゃない」
「それなんだけどさあ、考えてみればレオンくんは全く人類側の大陸を侵攻しようとしてないんだよね」
「そんなことないわ。あのジング傭兵団を殲滅したじゃない」
「でもそれだけで、むしろ今侵攻しているのって、間違いなく俺たちなんだよなあ……」
ビョンキの斜め後ろには、ガクガクと震えるゾゾリマの魔族たちがいる。
「それでも……魔王を弟子にするというのは……」
「人間が魔族を弟子にするなって言うとさあ、ビョンキちゃんが魔法を習った魔法学校を否定することになると思うんだけど」
オチョアにこれを言われた瞬間、ビョンキはどうでもよくなった。
「わかったわ。魔王レオン、あんたはこのアホ勇者の弟子になりなさい」
その言葉を聞き、レオンは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。先生の立派な弟子になれますよう頑張ります」
そう言って、オチョアの手をがっちりと掴んだ。
「そうと決まれば、こんなへんぴなところで立ち話も何なので、ゾゾリマの城へ向かいましょう」
こう言って、レオンはオチョアとビョンキを誘った。
この瞬間、気絶していたラミアがむくりと起き上がった。
彼女の目には仲よさげなレオンと勇者オチョア。
「……ナニコレ?」
彼女は心底不思議そうに聞いた。




