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新魔王がいい人すぎたせいで世界秩序が崩壊しだす  作者: 進藤尚典
〜第4章〜武神勇者蹂躙
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〜第2話〜勇者の襲来

「勇者オチョア…………とっくに死んだんじゃないのか」


 アグバは呟いた。

 勇者オチョア。人間でありながら魔王クラスの力を持ち、多くの有力魔族が彼に狩られた。

 人間離れした恐ろしい力を持つことから【武神】とも呼ばれた。

 しかし、20年前に突如魔族との戦いを止め、山に籠り、それ以来彼の名前が表舞台に出ることはなかった。

 ゆえに彼はどこかで死んだと考えられていた。だがしかし……


「何で今さら現れて、我が国を攻めているのだ!!」


 アグバは叫んだ。


「……勇者オチョアは、こちらに向かって進んでいるとか……アグバ様、いかがいたしましょうか?」


 部下の声も震えている。


「オーティズは。オーティズはいないのか?」


「先ほど出ていかれたばかりでして」


「オイ、数分前まで私としゃべっていたろ。何て行動の早い奴なのだ」


 アグバは地団駄を踏んだ。


「……レオンは?」


 アグバは聞く。


「……そのおレオン様も、普段、姫がよく来ていただいているお礼にと、ただいまホーハムに来訪中です」


「…………それでは…………、勇者オチョアに対抗する戦力がまるで無いではないかーーー!!」


 アグバは叫んだ。


「……しかし、我がゾゾリマには自慢の屈強な魔族たちがまだまだおります」


「バカか。レオンとオーティズ以外の我がゾゾリマ魔族など弱っちいやつばかりだわ。現に勇者オチョアにめちゃくちゃやられてるだろうが」


「…………、アグバ様は?まだゾゾリマにはアグバ様が……」


「やっぱり頭バカだなお前。わしは手ではなく頭を動かすタイプ。勝てるわけ無いだろう!!」


 そう叫んでアグバは頭を抱えた。

 オーティズは言っていた。「私がいない間にゾゾリマを滅したら承知せんからな」と。

 あの男は冗談が通じない男であるから、ゾゾリマが危機に陥ったら、本当に自分を殺すかもしれない。

 そして、あの残忍なレオンも、留守中に国を守れなかった自分を処刑するに違いない。

 ヤバイ。ヤバすぎる。

 アグバは顔を真っ青にしてガタガタと震えた。


 そのとき、廊下を横切った。

 水色のワンピースに腰にレイピアをさした少女が、うんしょうんしょと肥料のふくろを抱えながら。


「っ!?」


 アグバの目の色が輝いた。彼は少女……ラミアの元に走り寄った。


「奴隷女、ちょっと待て」


「…………」


 ラミアは無視して通り過ぎようとする。


「オイ、露骨に無視をするな。頼む。もう勇者オチョアに勝てそうなのはお前しかおらんのだ」


「……はあ?」


「ゾゾリマを、武神と呼ばれたヤバイ勇者が攻めてきている。頼む。奴と戦って撃退してくれ」


「…………、私は花園の手入れで忙しいのだ」


「頼む」


「……」


「頼むよ、奴隷……いや、ラミアさん……」


「……」


 ラミアはあくまでアグバを無視しようとする。


「お願いします。ラミアさま。…………ラミアさまぁ」


 アグバは涙目で追いすがる。とうとう倒れこみラミアのスカートの裾をぎゅうと握って懇願した。


「……はなせ」


 ラミアは、ゴミを見るような目でアグバを見下し、とうとう彼の顔をふんづけた。


「助けてください、ラミアさまぁ。実は貴女の強さにはずっと前から一目置いていました」


 ラミアはアグバをぎゅうぎゅうとふみつけ続ける。


「それだけでなく……そして、最近、ずいぶんとお可愛くなられた」


「えっ?」


 アグバをふむ力が弱まった。

 アグバが顔を上げると、ラミアの顔が少し赤くなっていた。


「……花園の世話をしている姿はとてもお可愛く……魅力的であると私は思う」


「……そんなわけないだろう。わ、私が可愛いとか……」


「いやあ、本当だ。魔族である私でもお前に近づくと、艶々とした髪の毛や、細くなだらか腰など、魅力的すぎてどきどきしてしまう」


 ラミアは赤面したまま、あわわと何も言えなくなっている。

 アグバはにやりと押し続ける。


「私だけでない。きっとレオン様もそう思っているだろう」


「なっ!?」


 ラミアは肥料のふくろを落とした。


「レオン様も、こんな可愛い女の子が近くにいて好きにならないわけが……」


「わかった!!」


 ラミアは大声を出してアグバの声を遮った。


「わかった、戦ってやるからもう、そんなこと言うのやめてくれ。お尻がむずがゆくて、もう我慢できないよぉ……」


 最後はラミアはうつむきながら言った。

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