〜第12話〜淫魔姫蹂躙(第3章完)
自分を襲ってきた大男に泣き叫びながら平手をくり出していたクリヤ。
ハッとして見ると、世界全体にヒビが入り始めていた。
「えっ?」
ヒビはどんどん大きくなっていく。そして、割れた鏡のように世界全体が崩れた。
「きゃあ!!」
ひび割れた世界から落ちて真っ暗な空間を落ちていく。
恐怖のあまりクリヤは目をつむった。
どこまでも落ちていくかと思ったとき、何者かが彼女の身体を受けとめた。
たくましくあたたかい身体。
そして、クリヤのくちびるに柔らかい感触がさわった。
…………何だろうコレ?よくわからないけどとても気持ちいい。
クリヤはその快感に浸る、
……ずっとこのままでいたいな。
が、その感触は突然引き離された。
「……大丈夫ですかクリヤさん」
目の前に、魔王レオンの顔があった。
「…………ひゃあ!!」
クリヤは思わず身体を引く。
この瞬間彼女は理解した。
落ちていった自分をレオンが抱きとめてくれていたらしい。
そして……その瞬間にお互いのくちびるが触れて…………。
クリヤは赤面しながらくちびるをおさえた。
「……ごめんなさいクリヤさん」
「え?」
突然謝るレオンに、クリヤは声を出す。
「はるばる両国の友好のためにゾゾリマに来ていただいたのに、こんな事件に巻き込んでしまって……」
心底すまなそうにしているレオン。クリヤは言う。
「いえ、そんなことありません。とてもスリリングで楽しかったですし、魔王レオン様がとても素敵な方だということがわかりました」
クリヤはニッコリとした。
「そして……、初めての……、とても素敵な経験もありましたし……」
顔を真っ赤にして、くちびるをおさえる。
が、間も無く何かに気がついたように焦って言った。
「あっ!!!!だめです。その、キスしちゃったから、今度こそ赤ちゃんできているかもしれない!!」
「……え?」
「大変、今私のお腹の中にはレオン様との赤ちゃんがいるかもしれない……どうしましょう」
クリヤは表面上だけは困った顔をしていたが、まんざらではない表情が見事に透けて見えていた。
「本当ですか?オーティズさん、どうしましょう?」
ずっと黙って立っていたオーティズに聞くレオン。
オーティズは心底、面倒臭いから相手にしたくないという表情を浮かべていた。
そして部屋の隅にはラミア。
彼女は、レオンとクリヤのくちびるがふれる瞬間を見てから、ずっと遠くを見つめ、放心していた。
「くくくく、奴隷女、悔しそうだのう」
アグバがにんまりと言った。
………お前、戦いのときは姿を消すくせに、突然ひょっこり出てくるな殺すぞ
とラミアは思ったが、いつも腰にさしているレイピアがない。
色々と調子が狂う……これもすべてあの女のせい……、なんかもうキライだわ、あの女。
そう、脱力していた。
◇◇◇
ホーハムの姫とゾゾリマの魔王には正式な婚姻関係さえ結ばれなかったが、『通い妻』としてちょくちょくホーハムからゾゾリマに姫はやってくるようになった。
とうとうホーハムまでゾゾリマの勢力下に置かれたと魔族たちは囁いた。
こうして、魔の六国のうち、三国が魔王レオンの手に堕ちた。
もはや一刻の猶予も許されない。
魔族、そして人間も、皆魔王レオンを滅ぼそうと本格的に動き出すのだが、それはまた別の話。




