〜第10話〜鏡の世界の戦い
レオンが魔力と闘気を合わせてつくった巨大な腕【魔手蓮華】。
もともとは、インボイの王オレステスの技であったが、レオンは彼との戦いで、すぐにそれを覚えてしまった。
巨大な腕が迫りくる大男の身体を掴む。
大男はそれを腕力でおし返そうとする。腕の筋肉がメキメキと音をたてる。
グガリッ!!
捻りあげられたのは大男の腕だった。
「ごおおおおお」
大男は苦悶の表情を浮かべ、部屋に巻き散らかされた火の勢いが弱くなる。
「あ、大丈夫ですか?力が少し強すぎました」
レオンは心配そうに聞く。
「ごおっ!!」
大男はその不必要な気配りに腹がたったのか、大きく息を吸い、口から猛烈な火炎を吹きかける。
「おっと」
レオンの巨大な腕がレオンの前で手のひらを広げ火炎を差し止める。
火炎は一片すらもレオンに届かなかった。
「ごおおおおっ!!」
大男は焦りの表情を浮かべた。
「おい、タカマ、だから言ったじゃねえか。さすがに魔王レオンに【何でもあり】で戦うのは荷が重すぎるぜ」
心底人を小馬鹿にしたような声、鏡師シオミの声が大男の耳に届いた。
「ごおお!!」
「はははははは、そんなに怒るな。でもお前もわかるだろう。このままじゃやべえってこと」
「…………ごお」
大男はシュンとうなづく。
「じゃあ、お前が必ず勝てるルールにするぜ」
その声とともに部屋の張り紙に書いてある文句が変わった。
【魔力禁止ルール】
その瞬間、レオンの巨大な腕が消えた。そして、部屋の火も消えた。
「え?」
レオンが戸惑っているところに大男は走りこんできた。丸太のような腕が振り下ろされる。
レオンはなぎ倒され、地面に叩きつけられた。
「レオン様っ!!」
クリヤがレオンに駆け寄る。
「大丈夫ですよクリヤさん。いやあ、すごい力ですね」
レオンはけろっと言った。
「レオン様の魔力の腕が突然消えたようなのですが?」
「ああ、どうやら、この世界では魔力が使えないようになってしまったらしいですね」
「……え、それってやばくないですか……」
目の前には筋肉隆々の大男。こちらは細腕の男女。
「ははは単純な力比べになりそうですね」
「あの、あまり笑い事では……」
「まぁ、頑張ってきます」
そう言ってレオンは、目を点にしているクリヤを尻目に大男に向かい歩いていく。
大男はレオンの両肩をガシリと掴む。そしてそのままひねりつぶそうとする。
次の瞬間だった。
大男の腕が振りほどかれていく。
大男は苦悶の表情を浮かべる。
レオンが大男の手首を持ち、押し返していた。
レオンの意外な肉体の強さに大男は戸惑うが、さらに力をこめる。
が、腕はだんだんと振りほどかれていく。
「ごおお」
レオンはとうとう腕を完全にこじ開け、大男の手首を掴んで捻りあげていた。
「ごおおお」
「うりゃああ!!」
レオンにしては珍しく大声をあげると。そのまま大男の懐に潜り込み、彼を背負っていた。
そしてそのまま背負い投げで地面に大男を叩きつけた。
ドゴッ!!!!!
床が激しく凹んだ。
「ごお……」
天を仰ぐ大男。
そこにもう一度シオミの声が聞こえる。
「いやあ、単純な腕力でも魔王レオンの方が上かあ。あいつがハンパねえのか、お前がだらしねえかどっちかだな」
「ごお」
大男の顔は屈辱で歪む。
「まぁ、いいさ。プランを変えよう。元々俺たちの第一目的はゾゾリマとホーハムの仲を悪くすることだ。魔王レオンは殺せたら殺すって話だった。大元の目的に戻ろうや」
シオミは落ち着いたトーンで言った。
「殺すのは、ホーハムの姫にしよう」
次の瞬間だった。
鏡の世界から、レオンは消えた。
◇◇◇
「……レオン?」
「レオン様っ!!」
「……、あ、ラミアさん、オーティズさん、どうも」
気がつくとレオンの目の前には大男もクリヤもおらず、ラミア、オーティズ、アグバがいた。
「レオン様、ご無事でしたか?」
オーティズが聞く。
「はい、まぁ……。なんか変わった世界に飛ばされたようですが、こうして元に戻ってこられたらしいです。ところで……クリヤさんは?」
レオンがこう聞いたときに、オーティズもラミアもはっきりしない顔を浮かべた。
ここで、レオンは気がついた。
この世界に戻ってきたのは、自分だけだということに。
◇◇◇
「ごお」
大男はゆっくりと近づく。
「嫌…………」
絶望の表情を浮かべるクリヤ。
鏡の世界に存在するのは、クリヤと大男、ふたりきり。
一歩一歩大男は近づく。クリヤの背中には壁。
「嫌………、嫌ああああああああ!!!!」
クリヤは絶叫した。




