〜第4話〜淫魔姫と魔王
「何をしておられるのですか?」
クリヤの背中から冷たい声が聞こえた。
クリヤが振り向くと、そこにはオーティズがいた。
「すみません。あまりにお花が綺麗だったもので……」
そう言って頭を下げ、とぼとぼと応接室へ戻って行った。
◇◇◇
クリヤがしばらく、応接室にいると扉が開いた。
クリヤの背筋が凍った。
そこにはこの世のものとは思えないような邪気をまとった、悪魔のような男がいた。
犯される。
クリヤは本能的にそれを感じ、身をよじった。
「す、すみません。いきなり押し倒すのはやめて下さい。まだっ心の準備があ!!」
叫ぶクリヤ。魔王レオンを堕とすと心を決めていたはずなのに、恐怖のあまり悲鳴が出てしまった。
「……あのお、どうなされました?具合でも悪いのですか?」
その悪魔のような男は、実に落ち着いた声で言った。
「……へ?」
「あの……、ホーハムのクリヤ様ですよね?初めまして、ゾゾリマの王のレオンです。この度は遠くからはるばるありがとうございました」
「あ、どうも」
「あまりちゃんとおもてなしできるか自信がありませんが、どうかおくつろぎ下さい」
頭を下げる魔王レオン。クリヤは拍子抜けし、ぽかんと口を開けた。
あれ?めちゃくちゃ犯されてぐちゃぐちゃにされそうなオーラ纏っているのに、なんか言うこと穏やかすぎないかしら?
そうクリヤは混乱していた。
ここで少し冷静になったクリヤは使命を思い出した。
自分はこの男を骨抜きにしなければならない。自分を犯してもらわなければ逆に困るのだ。
「貴方様が大魔王レオンさまですかぁ……、とってもイイオトコですわぁ」
胸を思いっきり寄せあげて前かがみになる。そして上目遣いで、少しだけ唇に舌を這わせてみた。
「……やはり、長旅で気分でも悪くなられたのでしょうか?」
レオンは、突然態度が豹変したクリヤを見て、興奮するどころか、逆に気味悪がっていた。
マズイと思ったクリヤはゴリ押す。
「……別にさわってもいいんですよ」
胸をさらに押しだす。
「は?」
「さわりたかったらさわって下さい」
「え、あ……」
「大魔王レオン様にだったら、構いませんよぉ」
内心クリヤの脳内はぐるぐるまわっていた。恥ずかしさと使命感と、恐怖がブレンドされ、動悸がして、大きな胸はものすごく震えていた。
「え、あのそれでは……」
レオンは困惑しながら手を伸ばした。
マジでさわるのっ!!??そりゃあさわってって言ったの私だけどぉ
クリヤの目はぐるぐるまわった。
ピタ
なでなで
「……え?」
レオンがさわっていたのはクリヤの頭だった。
「どうです。少しは落ち着かれましたか?」
「え、あ、はい……」
クリヤは子どものように小さく身を縮めた。
確かに魔王レオンの手は大きくて暖かく、小さなころ父親になでられたころを思い出し、ものすごく心が落ち着いた。
しかし、ここでハッとした。
「だめ、赤ちゃんができちゃう」
パッと身体をはなすクリヤ。「え?」と声を出すレオン。
「あの、男の人と女の人が長い間肌がふれあっていると赤ちゃんができちゃうって文献で読みました。もしかしたら今ので赤ちゃんができちゃっているかもっ」
クリヤは狼狽した。
「そ、そうなのですか……。どうしよう。魔子宮の水もそういうことはあまり詳しく教えてくれなかったんですよね。オーティズさん!!」
レオンが呼ぶと、「なんでしょうか」とオーティズがドアを開けて、部屋に入ってきた。
「オーティズさん。すみません。今クリヤさんが気分が悪いようなので頭をなでていたのですが、もしかしたらそれで赤ちゃんができてしまったかもしれません」
「……」
「ああ、どうしましょう、私うかつでした。『ヒニン』もしないで男の人に頭をなでてもらうなんて」
「……」
「オーティズさん。どうしましょう。やはり責任を取って、クリヤさんを妃に迎えなくてはならないでしょうか?」
冷や汗を流すレオン。レオンの『妃』という言葉にさらに赤面するクリヤ。そしてオーティズは言う。
「大丈夫です」
いつも以上の無感情なひとことを残して、オーティズはそっとドアを閉めた。




