〜第2話〜淫魔姫、魔都入り
クリヤは何人かの侍従とともにゾゾリマに入った。
行きの馬車の中で緊張のあまり顔が真っ青になったり、これからしなければならないいやらしいことを想像して顔が真っ赤になったりしていた。
ゾゾリマの古めかしい城を目にしたとき、そのいかつさに脚ががたがた震えた。
応接室に通され、他の侍従と離され、ひとりうつむきながら待つ。
しばらくすると扉が開き、若く鼻筋の通った青白い顔の男が現れた。
この男が魔王レオンかっ!!
クリヤは狼狽した。
しかしお父様から言われた使命と、ホーハムの淫魔としてのプライドとして、どうにかしてこの男を虜にしなければならない。
クリヤは今まで読んできた文献によって、「男は皆おっぱいが好き」という知識を得ている。
そのため、今日もかなり胸元が開いたドレスを着てきた。
正直死ぬほど恥ずかしいが、ここは勝負に出ないといけない。
「あ、あなたが魔王レオン様ですかあ」
できるだけ色っぽく言ってみる。もちろん必死に腕で胸を寄せあげている。
「わ・た・し、クリヤ・ホーハムと申します。とっても、魔王レオン様に興味がありまぁす。みたいなあ」
最後には小指に軽く舌を這わせてみたりした。
「……」
青白い顔の男は、実に冷たい目線をクリヤに送っていた。
「……ど、どうなされたんですかレオンさまぁ?」
焦りながらも、必死に胸を寄せあげてクリヤは迫る。
「……私は、レオン様ではありません」
「…………へ?」
「私はオーティズ。レオン様の侍従の者です」
オーティズと名乗る男はクリヤを見下ろしている。
「そ、そうなのですか……」
真っ青な顔になるクリヤ。オーティズはさらにクリヤに言う。
「ホーハムの姫が、両国の友好のためゾゾリマを訪れたと聞いております。友好のためとあらば邪険にすることはありません。……が、歴史的にホーハムの女性にはあまりいい噂を聞きません」
鋭い眼光を見せるオーティズ。クリヤの顔はさらに青くなる。
「あくまであなたは友好のためにレオン様とお会いになる。それ以上のことは許されない。それでよろしいな?」
「……はい」
クリヤはとても小さな声で言った。
「では、少しの間ここでお待ちを」
「その、す、すみません」
「何か?」
「え、あ、え、あの……」
さっきまで真っ青だったクリヤの顔が赤くなっていた。
「おと……い……れを……」
「は?」
「そのお……あの……」
クリヤは軽く下半身をおさえてもじもじする。
「とにかく、そこでお待ちください」
オーティズは去ろうとする。
クリヤは意を決して大きな声を出す。
「あの!!おトイレ!!貸していただけないでしょうか?緊張で実はさっきからかなり我慢してて」
その声はクリヤの想定の数倍大きな声になっていた。
「……ここを出て右側です」
感情のない声でオーティズが答えると、クリヤはスカートを軽くたくし上げて小走りで廊下に出た。




