〜第10話〜傭兵団蹂躙(第2章完)
「ラミアさん」
レオンがラミアの部屋をノックする。
まったく反応がないので遠慮がちに扉を開ける。
「……ラミアさん」
部屋はもぬけの殻。開いた窓とカーテンだけがなびいていた。
◇◇◇
「よくやったラミアよ」
ジング傭兵団の団長、ハーストは賞賛の言葉を口にした。
彼の前には、無表情のラミア。
「指令通り、7日間で魔王レオンを討ち果たすとは流石『魔王喰い』だな」
「……申し訳ございません」
ラミアが謝罪の言葉を述べ、ハーストの笑顔が消えた。
「私は失敗しました。魔王レオンが重症という噂はウソです。私は何もできませんでした」
「……そうか」
ハーストの顔はいきなり神妙になる。
「ならば、どういうことになるかわかっているな」
「はい」
ラミアは無言でレイピアを差し出した。
「私を殺してください」
「……いいのだな」
「はい。私は魔族を殺すために生まれ、魔族を殺すために生かされてきました。それができない私には生きている価値はありませんから」
その場に正座をするラミア。ハーストは大剣を抜き、大きく振りあげた。
「ラミアさん、ここにいましたか」
ドアが開かれた。
そこには、笑顔を浮かべたレオンがいた。
「「っ!!!!????」」
ジング傭兵団の面々は言葉を失った。
自分たちの本拠にあのおそるべき魔王がいるのだから。
「……どうして?」
ラミアは目を丸くしてレオンに尋ねる。
「これを渡そうと思いまして」
レオンはラミアに鉢を渡す。
「ラミアさんが植えてくれた花の芽が出たので、花園だけにでなくラミアさんの部屋にとも思いまして」
「……そうじゃなくて、なぜ私の居場所を?」
「ああ、オーティズさんに聞いたら、多分ここだろうと見当をつけて調べてくれました」
「魔王レオン、なぜだ。魔族の大陸から我々人類の大陸に入るには、結界を破らねばならない。さらに、このジング傭兵団本部には、さらにいくつもの結界が張られているはずだろ」
声を荒げて聞いたのはハーストだった。
「結界……。すみません。ちょこっと力を入れたら破れてしまったので気にしませんでした。もしかしてまずかったですか?ガラスみたいに一度割れると割れっぱなしのやつじゃないので大丈夫だと思ったんですが」
レオンは慌てて言う。
「……ところでラミアさん。どうして急に帰られてしまったのですか。もしかして花園の世話のお仕事嫌になりました?」
「……いや、あの仕事は……」
正直ラミアは、花の世話が楽しかった。
「……でも私には本来の仕事があった。けれどその仕事はもう果たせそうにないのだ……」
「……それならば、戻ってきていただけませんか」
レオンはまっすぐな目で言う。
「ラミアさんさんへ良ければ、引き続き花園のお世話をお願いしたいです」
「…………」
ラミアは宙を見つめた。
しばらく返事がないのでどうしたのかとレオンは思った。
ラミアの目から涙が溢れていた。
「あっ、ラミアさん、どうしたんですか?僕何か傷つけるようなこと言っちゃいました」
ラミアのいつもの無表情は崩れ、年相応の少女のような泣き顔を見せ、えんえんと声を出した。
そしてレオンの手から、花の鉢を受けとった。
レオンはそれを見て、安心したように息をついた。
「魔王レオン、貴様不遜にも、このジング傭兵団の本拠におめおめと入り、このまま生きて帰れると思ったか」
レオンがふり向くと、剣、槍、矛、弓、あらゆる武器を抱えた兵たちがこちらに向かって身構えていた。
「ジング傭兵団は魔族の殲滅を目的につくられた精鋭の集団だ。例え魔族の国一国が攻めてきたとて撃ち返す自信がある」
「……よくわからなくてすみませんが、お邪魔して申し訳ありませんでした」
「皆、絶対生きて返すな!!」
ハーストの声とともに幾十もの刃や魔術がレオンを襲った。
◇◇◇
翌日、魔族たちにそれは知れ渡った。
『魔王喰い』に死にかけにさせられていたはずの魔王レオンはあっという間に復活し、
怒り狂った魔王レオンは、『魔王喰い』をけしかけたジング傭兵団に、単身で乗り込み、数分で壊滅させた。
「ちょっと攻撃を跳ね返そうと思ったのに、まさか建物ごと壊れると思いませんでした。ごめんなさい」
という不思議な魔王レオンの声を聞いた者がいたらしい。
そして、当の『魔王喰い』は正式に、魔王レオンの奴隷となった……。
◇◇◇
朝日が窓から差し込み、ベッドから起き上がるラミア。
窓際には鉢が置かれている。
その鉢に軽く会釈をすると、クローゼットにかけられているワンピースに着替えた。
◇◇◇
その魔王はインボイを1日で征服し、
ジング傭兵団を数分で壊滅した。
魔王レオンの脅威に恐れおののき、あらゆる魔族たちが動きだそうとしていた。
その動きが、またもう一つ魔王レオンの伝説を作り出すのだが、それはまた別の話。




