〜第6話〜お手伝いとなった女戦士の日常その3
ラミアが一日の作業を終えると、大広間に案内される。
見たこともないような大きさのテーブルに、料理が置かれている。
一日目に出された肉中心のフルコースを警戒して一切手をつけなかったら、ダイエット中か健康志向と思われたようで、このように野菜と玄米中心のフルコースが出るようになった。
なんだか馬鹿らしくなり、ラミアは二日目から普通に食べるようになった。豆腐ハンバーグや、ほうれん草の胡麻和えなどは大変に美味である。
食事が終わると大浴場に案内される。
大浴場の湯船はあまりに大きすぎて、端が見えない。蜃気楼のかかった海のようである。そこにひとりぼっちで浸かるのは、豪勢を通り越して、もはや恐怖すら感じる。
が、程よく熱いお湯は身体の疲れを癒してくれる。裸にもしものときのためのレイピアだけをくくりつけたラミアは、天を仰いで脚をのばす。
脱衣所で脱いだレザーアーマーがなくなっているので、しかたなくそこに置いてあったバスローブを着る。
バスローブを着たラミアは、クジラの身体くらいありそうな部屋のベッドに飛びこむ。
ここで思った。
これはもはや使用人ではなく、最高級ホテルのスイートルームに泊まった客では……。
自分を殺そうとしている相手に、油断させるためか何か知らないが、ここまでいたせりつくせりの魔王レオンがよくわからないまま、三日目の夜は深まろうとしていた。
すちゃりと物音がした。
ラミアはレイピアを握る。
「待て、私だ」
「……ガイエルか」
部屋に現れた黒装束の男を見てラミアは言った。
彼の名はガイエル。ジング傭兵団が抱える傭兵のひとりで、ニンジャと呼ばれる奇っ怪な民族の生まれである。
潜入や暗殺を得意とし、気配を消す達人であるラミアも、彼の潜入のスキルには一目置いていた。
「……どうした?何か命令変更があったか?」
ラミアが聞く。
「いや、そうではない。ただ、いつも仕事の早いお前にしてはずいぶんと悠長であるとハースト団長は心配でな」
「……」
「ゾゾリマの魔族の間では、すでにお前が魔王レオンに屈服し奴隷となったという噂で持ちきりだ。現に今のお前を見ていると、奴隷というか、仲間になったように見える」
「……まぁそう見えるだろうな」
バスローブを着てふかふかのベッドに座るラミアは苦笑する。
「ただ言いわけをするなら魔王レオンはオリクサの魔王よりも遥かに厄介だ。何を狙っているのか分からない。だから少し様子を探らせてもらっている」
「なるほどな」
「心配するな。あと三日以内には必ず魔王レオンを殺す。私はそのように生まれてそのように育てられた。そうだろう」
さらにラミアは言う。
「万が一、魔王レオンを殺せなかったら、ガイエル、お前でもハースト団長でもいい、私のことを処分しろ」
ガイエルはそれを聞くと、「あいわかった」と再び闇に消えた。




