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守りたいなら、鍛えてもらえばいい

いつもお読みいただきありがとうございます。


今後の更新予定ですが、


10/9 0時・9時の2話掲載

10/10 0時・9時の2話掲載

10/11 お休み


を予定しています。


無理のないペースで続けていきますので、よろしくお願いいたします。


 冒険者ギルドの中へ入る。


 朝だというのに、中にはすでに何人もの冒険者がいた。


 受付に並ぶ人。


 依頼書を眺める人。


 朝から酒を飲んでる人。


 ……あれはいつ働くんやろ。


「アキラ」


「ん?」


「今日はちゃんと依頼書読んでね?」


「分かっとるって」


「ほんとに?」


「さっきも聞いたやろ」


「だってアキラだから」


「どういう意味やねん」


 メルがくすっと笑う。


 二人で掲示板の前へ向かった。


 何枚も並んだ依頼書。


 荷物運び。


 店の手伝い。


 街の掃除。


 薬草採取。


 魔物の討伐。


 前よりは、何が書いてあるのか少し分かるようになってきた。


「あ」


 メルが一枚の依頼書を見る。


「薬草採取あるよ」


「ほんまやな」


 前にやったものとは違う薬草らしい。


 難易度は同じG。


「これにする?」


「んー」


 俺は依頼書を見ながら少し考えた。


「これでもええんやけどな」


「?」


「親方の依頼があったら、今日はそっち優先したい」


「親方の?」


「うん」


 メルが掲示板を見る。


「でも、今は貼ってないみたいだよ?」


「そうなんよなぁ」


 俺も一通り見てみる。


 鍛冶屋。


 バルド。


 見覚えのある名前はない。


「またお手伝いしたいの?」


「それもある」


「それも?」


「昨日ちょっと考えててな」


 俺は掲示板から目を離した。


「この前、薬草採りに行った時、メルが魔物に気づいたやろ?」


「うん」


「あの時は戻れたから良かったけど」


 いつもそうとは限らない。


 メルが先に危険に気づいてくれたから。


 戦わずに済んだ。


 でも。


 気づいた時には、もう逃げられない。


 そんなことだってあるかもしれない。


「俺も最低限、自分の身くらいは守れるようになっといた方がええかなって」


「……うん」


 メルが頷く。


「だから親方の手伝いしながら、武器の使い方も教えてもらおうと思って」


「前に言ってたもんね」


「そうそう。短剣の使い方、教えてくれるってな」


「じゃあ、ちょうどいいね」


「せやろ? 仕事もできて、ついでに教えてもらえる」


「ついでって言ったら親方に怒られるよ?」


「本人の前では言わん」


「そういう問題?」


「大事な問題や」


「もう……」


 メルが呆れたように笑う。


「それに」


「ん?」


「メルは魔物が出ても逃げられるやろ?」


「うん。早めに気づければ」


「俺、逃げ切れる自信ないねん」


「……え?」


「メルだけ先に逃げて、俺だけ置いてかれたら困るやろ?」


「アキラ!」


 メルの耳がぴんっと立つ。


「嘘や嘘」


「もう!」


 俺は笑いながら手を振る。


「ほんまは、何かあった時にメルも守れるくらいにはなっときたいしな」


「……え?」


 メルの動きが止まる。


「どっちか一人だけ逃げられても意味ないやろ?」


「……」


「一緒におるんやから」


 メルが俺を見る。


 耳が、少しだけ下がった。


「……うん」


「まあ」


「?」


「メルの防具ができたら、その時はメル先生に守ってもらうけどな」


「なんでそうなるの!」


「頼りにしてます、メル先生」


「アキラも戦えるようになるんでしょ!」


「できるだけ楽したいやん」


「もう!」


 朝から元気やな。


 そんなことを話していると。


「あの」


 後ろから声を掛けられた。


「ん?」


 振り返る。


 受付にいた女性が、こちらへ歩いてくる。


「アキラさん、メルさん」


「はい」


「ちょうど良かったです」


「?」


 受付嬢が手に持っていた一枚の依頼書を見る。


「お二人に、指名依頼が来ています」


「……指名?」


 俺とメルが顔を見合わせる。


「はい。依頼主から、受ける冒険者を指定して出された依頼です」


「俺ら二人?」


「はい」


「誰からですか?」


 受付嬢が依頼書へ視線を落とした。


「鍛冶屋のバルドさんです」


「親方?」


 思わず声が出た。


 さっきまで。


 親方の依頼があればいいのに。


 なんて話をしていたところや。


「ほんまに来た」


「アキラ、すごいね」


「俺もびっくりしとる」


 でも。


 親方が俺を指名するのは、まだ分かる。


 この前まで仕事を手伝っていた。


 また何か手伝わせたいのかもしれない。


 ちょうど俺も、親方のところへ行こうと思っていた。


 ただ。


 俺は隣を見る。


「……なんでメルも?」


「私?」


 メルが自分を指さした。


「親方、メルにも何か頼みたいことあるん?」


「知らないよ」


「俺が聞いとるねん」


「私も知らないもん!」


 受付嬢が少し笑った。


「詳しい内容は、バルドさんから直接説明するとのことです」


「直接?」


「はい。お二人が受けるなら、工房へ来るようにと」


 俺はメルを見る。


「どうする?」


「アキラ、親方のところ行きたかったんでしょ?」


「まあな」


「じゃあ行こ」


「ええん?」


「うん。私も、なんで呼ばれたのか気になるし」


「決まりやな」


 受付嬢に依頼を受けることを伝える。


 必要な手続きを終えて。


 俺たちはギルドを出た。


     ◇


「ほんまに何やろな」


「分かんない」


「メル、親方と何か約束してた?」


「してないよ」


「実は俺の知らんところで弟子入りしてるとか」


「してない!」


「ほんま?」


「なんで私が隠れて弟子入りするの!」


「メル先生から親方になるんかなって」


「ならないよ!」


 そんな話をしながら歩く。


 見慣れてきた道を進み。


 やがて。


 聞き覚えのある音が聞こえてきた。


 カン。


 カン。


 金属を叩く音。


「ここやな」


「うん」


 工房の扉を開ける。


「親方ー」


「来たか」


 奥から声が返ってきた。


「呼ばれてすぐ来ましたよ」


「遅ぇ」


「なんでやねん」


「口動かす暇があるなら入れ」


「はい」


 相変わらずやな。


 メルが隣で小さく笑っている。


 工房の中へ入ろうとした。


 その時。


「よう」


「ん?」


 横から声がした。


 聞き覚えがある。


 振り向く。


 そこには。


 見覚えのある怖い顔の男が立っていた。


 その後ろにも。


 二人。


 どこかで見たことのある男たちがいる。


「あ」


 俺は男を指さした。


「際どいパンツの人」


「ガイアスだ!」

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