07 鉄鎧より迷彩服
翌日の夕方、
「疲れた。寝よう」
仕事から帰って来た私は、玄関に倒れていた。貧血とかじゃ無いぞ。ただ寝転んでいるだけだ。眠いんだ。
そう世界の誰かに向かって、言い訳をする。もしかしたら誰かが見ているかもしれない。
「何をしているんだ」
姉さんが見ていた。一番恥ずかしいかもしれない。
それなりに身長が高い私より、10cmほど高い姉さんから見下ろされると、威圧感が凄くて目も合わせられない。そもそも体勢的に不可能だが。
「帰って来るなり、いきなり倒れ込むから心配したんだぞ」
無表情で言われても。
「取り敢えず起きろ」
「嫌です」
「引き摺られたいのか」
「姉さんになら」
「巫山戯ているのか」
本心なんだけどな。人の気持ちというものは伝わらない物である。
「邪魔だから移動しろ。そして、自分の部屋で寝ろ」
「それだと風呂入らないとだから嫌です」
「酒かけるぞ」
「はい! 動きます!」
酒はヤバい。絶対度数高いやつかけてくる。今家にスピリタスあるからそれかけてくる。風呂入らないといけないどころじゃなくなってしまう。
そもそも、何で家にスピリタスあるんだ? 姉さんは基本日本酒だし、兄さん達はお酒弱いし、妹と弟は論外だし、私はあまり飲まないし…。
考えが別の方向に向かい始めた時、
「ただいまー」
妹が帰って来た。
「あれ? お姉ちゃん早いねー」
「偶々早く、仕事が終わってね」
「さく姉と一緒して何してるのー?」
「姉さんが酒かけようとしてきたから、抵抗しているの」
「わー、アルハラ?」
「こいつが玄関で寝ていたから起こすためにかけようとしたんだ」
「お姉ちゃん、それは年頃の女性としてどうかと思うよ」
「あんたもやりそうなんだけど」
「うん、やるね」
こんなのは放って置いて、風呂入ろう。
風呂から出てきて部屋に戻ると、眠気は覚めていた。
暇だし、ゲームしよう。
入り直すと神殿に飛ばされるらしい。覚えておこう。
人でごった返す神殿の中から、頑張って脱出して通りに出る。昨日広場を見た時に、街の出口が見えたはずだから、そこからフィールドに出よう。
広場から大通りを歩いて、大きな門から草原に出る。
近くに森も見える。何と無くだが、森に向かおう。そっちの方が楽しそうだ。
森に着くと、一気に光が届かなくなる。薄暗く、周りを木に囲まれているから、圧迫感がする。
そんな森の中を、しばらく真っ直ぐに歩いていると、
「龍人か」
鱗で覆われた、二足歩行のトカゲみたいな生き物に出会う。というか見つける。他の作品なんかでは、リザードマンと呼ばれていそうなフォルムをしている。
確か、このゲームでのゴブリンポジションだったはず。要は雑魚でバリエーション豊かという事だ。
こちらに気づいていないようだし、投げ斧を取り出し、3丁を龍人に向かって投げる。
3丁とも、胴体部分に当たった。こちらに気付いた様だが、痛そうにしている。
しかしまだ死んでいない様なので、戻ってきた3丁を、もう一度投げる。
今度は、1丁が頭に当たった。それ以外は、胴体に刺さっている。
後ろに倒れ込んだので、たぶん死んだのだろう。
近づいて触ってみる。脈を確認。どこで測ればいいの分からないので死亡確認良し!
念の為、手斧を頭に振り下ろしておく。
【技能 投擲:斧 に新たな効果が増えました。詳細はステータス画面からご確認ください】
ポップアップ画面が出て来た。何かが増えたらしい。
そして龍人の身体が硬貨に変わった。死んでいなかった様だ。危なかった。
硬貨拾うの面倒臭いなと思っていると、ステータス画面が勝手に開いて、硬貨を吸い込んでいった。ハイテク。
次に出会った敵は、近接だけで倒してみよう。
その前にいまの今まで忘れていた、技能画面を見てみよう。新しい効果も増えたらしいし。
ステータスオープン!
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ステータス表示 1/2
MP 140/140
筋力 50
精密 55
俊敏 25
理性 10
神秘 10
ステータスポイント 0
習得技能
【戦士:斧 初歩】
【投擲:斧 初歩】
【鍛治 初歩】
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戦士の方をタップして、詳細を見る。
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斧を扱う戦士の技能を持つ
基礎を納めている為
斧本来の切れ味を活かすことができる
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次は本命の投擲
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斧を扱う投擲の技術を持つ
基礎を納めている為
必ず標的に刃の方が突き刺さる
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鍛治は今はいいか。戦士の方は切れ味アップ、投擲の方は柄が当たらなくなるみたいな感じか。何が新しい効果かはわからないが、案外効果が大きい。できるだけ上げていくべきだろう。
技能の確認も済んだし、進んで行こう。
取り敢えず、そのまま森の中を突き進んでいくと、他のプレイヤーと誰かが戦っている音がする。
森の中では鉄の煌めきが目立つから、場所はすぐ分かった。隠れて見てみよう。
「くそっ! いい装備しやがって!」
「礼儀を知らぬ野蛮人共め!」
其処では、顔の見え無い騎士風の鎧を着たゴブリンと、いかにも盗賊ですとばかりの服装のプレイヤーが戦っていた。
因みに、装備を羨ましがっているのがプレイヤーです。言わなくてもわかる? おっしゃる通りで。
付け足しておくと、さっきの龍人が他のゲームで言うゴブリンポジションなら、ゴブリンはエルフとかドワーフとかの人間とは違う生活をしている人族みたいなポジションなはず。立派や法律な教育制度も揃っている民主主義の鑑みたいな国を興している設定だって誰かが言っていた。面白かったから覚えている。
「くらえっ! 《貫く短剣》!」
「なんのっ! 《不壊の盾》!」
考えている間にも、騎士ゴブリンと盗賊くんは戦い続けている。中々に良い勝負だと思うのは私だけだろうか。
そう言えばパイクの時から思ったが、スキルってどう手に入れるのだろう。技能を上げていれば手に入るのか? 後で誰かに聞いてみよう。
「トドメだ! 《影の刃》!」
「《不壊の盾》!」
さっきから盗賊くんの技名が厨二臭い。個人的には、シンプルで捻りの無い技名が好きなのだが。
盗賊くんのナイフが騎士ゴブリンの手に取り付けてある盾をすり抜けた。
騎士ゴブリンなすすべ無しか!?
と思ったが、騎士ゴブリンは盾を盗賊くんに押し付けた。
なんと《影の刃》柄はすり抜け無い!
ナイフは騎士ゴブリンに届かない!
騎士ゴブリン形勢逆転だ!
「《質実剛剣》!」
駄洒落の様な技名を叫びながら、盗賊くんに突っ込んでいく騎士ゴブリン。
盗賊くんはよろけていて、避けることが出来ない!
会心の一撃!
盗賊くんは真っ二つになった!
ボロボロと硬貨になっていく盗賊くん。
「くっそー! 覚えてろよー!」
正に三下なセリフを吐いて消えていった。楽しそうだね。
「おい其処のお前、何を見ている」
ばれた。
「さっきの奴を助けなくて良かったのか?」
ばれていた?
「ずっと見ていたようだが」
ばれていた。
「見ている方が楽しいので」
「悪趣味だな」
隠れるのをやめて出て来たら、悪口言われた。安全な所から危険な物見たいのは、全生物の悲願だと思うのだが。
「もしお前がここから先を行くならば、この私イバンス・トルニスが壁となろう。貴様はこの先一歩も踏み出せないと思え」
名乗られたら名乗り返すのだったか? しかし、生憎と騎士の流儀なんて物は習っていない。無視して右手に手斧、左手に投げ斧を構える。
「じゃあ、あなたを殺してから進むわ」
「たとえ殺されても、私は壁となる。そもそも貴様なんぞに殺されるとは思わないがな!」
騎士ゴブリン、イバンスだったか?はそう言って剣を両手に構え、突っ込んでくる。
振り下ろされた剣を投げ斧で弾いて、手斧を兜と鎧の隙間に差し込む。
しかし、すぐさま盾で払い除けられ、剣で首を狙ってくる。
お返しのつもりかは知らないが、首を捻ってそれを避けると、剣を持つ右手を狙い投げ斧を振り下ろす。
勿論手を引かれて避けられ、剣を腹に突きつけられる。
これは避けられないので、できるだけ体の端に刺さる様に調整する。ガッツリ腹に刺さった。腹ならセーフなので気にしない。
抜かれたらやばい気がするので無理矢理近くで戦う。
相手の攻撃手段はほぼ無いので、ガンガン攻め立てる。抵抗されるけど、さほど脅威では無い。何か喚いているが聞こえない。
手斧で、投げ斧で、殴って、叩いて、切って、砕いて、潰して、攻撃しまくる。なんか楽しいかも。
相手の顔の原型が分からなくなった辺りで、硬貨に変わった。R-18Gじゃねぇかなこれ。やったの私だけど。
残念ながら技能は上がらなかったので、腹刺されたのは意味がなかったと言うことになる。残念だ。
その辺りで、失血死で死んだ。
Q:何か主人公やばく無い?
A:日頃の鬱憤を晴らしているのではないかと。
でも、自分で抑えられる人じゃ無いのでこれからもこんな事あるんじゃないかな。あとキャラ設定お前が考えたんじゃん。




