08 記者ほど信頼できない職業はない(あくまで主観に基づく)
しばらく投稿できないので文章量多めです。
ついでに、主人公は変な価値観を持っています。
リスポーンポイントを設定していないと、死んだとき神殿に飛ばされるらしい。覚えておこう。
人でごった返す神殿から本日二回目の脱出を試んで2〜3回失敗したのち、何とか外に出ると目立たない路地裏に移動してステータスを確認する。
デスペナルティは無いらしい。死ぬ前と殆ど変わっていないステータス画面を見ながら、考え込む。
デスペナがないなら、ゾンビアタックも可能な筈だが、其処はどう対処しているのだろう。流石に対策無しってのは考えにくい。街の近くにボス置かないとか?
そう1人で首を捻っていると、路地裏の奥から人が走ってくる音が聞こえた。
「ちょっと失礼!」
そう言って来た人影は、路地裏の壁を蹴って私の上をを飛び越えていった。中々にアクロバティックな動きだった。中の人はアクション俳優に違いない。
その人影は路地裏を出て行くと、右に曲がって消えていく。よく見たら女性っぽかった。
と言う事は…
「おい! そこどけ!」
やっぱり。
路地裏から女性が走って来たら、追われていると相場は決まっている。どうせだしちょっとだけ助けてあげよう。
メンチの切り方は振り返って顔を斜めにして、こう見下す様に…
「あ゙?」
「ひぇっ」
びびったな。
「さっきの女性でも追ってるんですか」
「そうですそうです」
「だったら右に行きましたよ」
「ありがとうございます!」
そう言って走って行った。礼儀正しかったので良いことがあるだろう。根拠は無い。
「いやー、助かりました。ありがとうございます」
急に上から声が聞こえて来た。思わず上を見るとさっきの女性が建物の窓のひさしに座っていた。結構別嬪さんである。
「それにしても、何で私がここにいると分かったんですか?」
?
「私がここにいるの分かってたから、右に言ったって言ったんでしょう?」
「?」
「まさか、ただ単に私が向かった場所言っただけとか…」
「そうですけど」
「まさか!? ありえない! 私みたいな美人が追われてたら嘘ついて逃げる手伝いするのが普通でしょう!? それをしない!? ありえない…」
中々に自己中心的な考え方をする人の様だ。助けなくて良かったかな。
「まぁ、別に良いんですけど」
良いんだ。
「とうっ」
そして、日差しから飛び降りて、私の横に並び立つ。
身長的には私より少し小さいくらいだが、少し微笑みながらながら見上げられると威圧感がある。
「申し遅れました。私は、城の街・デイ・ノート取材記者、サーキュリー・ノートと申します」
「はぁ…」
そう言って名刺を差し出すと共に、名乗り上げて来た。どうやら記者だったらしい。一気に警戒度が上がる。
とりあえず名刺を取って、挨拶しておこう。
「えっと、私はアイシス、アイシスだけです」
「あれ、苗字ないのは珍しいですね、なんでです?」
「それしか思いつかなくて…」
「なるほど」
そう言って持っていたカバンからメモを取り出し、何かを書くノート。いかにも記者っぽい。
「今記者っぽいって思ったでしょう?」
何故分かった。
「そして何故分かったって思いましたね?」
何故分かった。
「実は私、心が読めるんです。つまりあなたが考えている事は全て筒抜けなのです!」
そう勢いよく言い放つノート。凄いな、まるで覚だ。いるもんだな妖怪って。
「ま、嘘ですけど」
殺すぞ。夢を見させた罪は重い。
「それにしても、あなためっちゃ分かり易いですね。取材対象としては満点です。花丸あげたいくらいです」
花丸いらないです。どうせなら金くれ。
「だから取材させてもらっても良いですか?」
「だからと言われましても…」
「金払うんで」
「良いですよ」
お金は大事、あればあるほど良い。
「じゃあ、ここで話すのもなんですし移動しましょうか」
「何処か当てでもあるんですか」
「ありますよ。良い店があるんです」
どんな店だろうか。あと気になるのが…
「なんで追われてたんですか?」
「あ、それはね、なんかやばいことやってたので写真撮ったんです。そしたらバレて追われたんですよ。笑えますよね」
「自業自得ですね」
「あれ、何してたか聞かないんですか?」
「なんか自分も追われそうなので、聞きません」
「私と一緒にいる時点で手遅れですよ」
それもそうか。じゃあ聞こう。
「何してたんです?」
「推定人身売買?」
「ガチのやつじゃないですか」
「バラす気ないんでセーフですよ」
「なんで追われてると思ってるんですか」
「さあ?」
逃げたほうがいいかも。相当にやばい人かもしれない。
「あ、着きましたよ」
くそ! 逃げられなくなってしまった。
着いた店はstoneという店だった。来たことあるな。
「いらっしゃいませ」
店員さんは、前来た時のイケメン店員じゃなかった。女性の人。
「二人空いてます?」
「はい。こちらの席にどうぞ」
そして、前来た時のテラス席に案内された。
「それで何を取材するんですか?」
「これから考えます」
「ざけんなよ」
「怖っ」
いかん、素が出てしまった。いや、素ではないか、精々が裏の顔ぐらいだ。多分
「あ、そうそう聞きたいことといえば、ルイさんとはどう言うご関係で? 名前聞いた時から気になってたんですよね」
何故ここでルイの名が出てくる。あいつ有名なのか。
「ルイって人の事は知らないんですけど、有名なんですか」
「有名ですね。魔女っ子可愛いとか、PKしまくってるとかで」
「そんな人と私に、何の繋がりがあると」
「だって昨日、アイシスって看板掲げてたので」
まぁ、それだよね。疑わない方がおかしいもんね。良いアイデアだと思ってたんだけど。目立つのは見つけやすいけど、やっぱり目立つ。そうでなきゃ見つけられないし。何言ってんだ。
「だから何か関係があるのではないかと、それを見た城の街の大多数の人は考えたわけです。そしてその大多数の人達を代表して、私があなたに聞いているわけです」
「なんか規模大きいですね」
「こう言うのは主語が大きいと言うんですよ、アイシスさん」
そうなのか。初めて知った。
「で、実際どんな関係なんですか!」
身を乗り出して、そう勢い良く聞いてくるノート。
誤魔化しても、教えるまで付き纏って来そうな感じがする。目が輝いてるから特に。面倒臭いしバラしていいか。
「現実で知り合いなんですよ。私がこのゲーム始めるので、色々と教えてもらおうと思って」
嘘ではない。
「へぇー、案外普通ですね。拍子抜けです。記事にできそうなネタだと思ってたんですけど」
「残念でしたね。てか、人の個人情報をネタにするんですか」
「流石にそれはしませんよ。記者として有り得ないです」
残念ながら、その有り得ない記者もいるのだ。しかも現実に。
「じゃあ、何を記事にしようとしてたんですか」
「ゲームの中で知り合ったのであれば、新たなるPKか、みたいな感じで記事にしてましたね」
「それって記事になるもんなんですね」
「そうですね。他のゲームと比べてそう言う記事の方が多い気がします」
「PKだったり、PvPへの関心度が高いんですかね」
「えぇ、高いと思いますよ。そもそもこのゲーム、PvPだったりPKを推奨している節があるんですよね。デスペナほぼないですし。だから、PvPもPKもした事が無い、って言う人は初心者以外だと相当少ないです。うちの会社調べですが」
最後の情報で一気に胡散臭くなった。
「そういえば、貴方達の会社って城の街以外の情報とか入ってくるんですか? 会社名からして、城の街だけからしか入ってこなさそうなんですけど」
「そうですね、うちの会社は支部みたいなもんですから、情報自体は全ての国から収集してます。細かい村とかの情報となると収集できないのも有りますけど」
「結構大きいんですね、その会社」
「えぇ、国ごとに支部があって、街ごとに国の支部の支部があるって感じです。内容ははwikiみたいなもんです。てか、ゲーム内で記事書いてるとこってだいたい攻略記事ですよ」
まぁそうだな。
「と言う事で、うちの記事、定期購読しませんか! 攻略の助けになりますよ! さらにただいまキャンペーン中! なんと今なら永続無料!」
「適当にバラ撒いてるだけじゃ無いんですか」
「そんなとこです。鋭いですね」
こんなことで褒められても全く嬉しく無い。どうせ、ネタで言ってるだけだ。
「それはさておき、普通に役立つと思いますよ。基本的に信頼できる情報しか載せてませんし」
「発行頻度にもよりますね。溜まったら読むの面倒臭いですし」
「街の支部だと毎日、国の支部だと毎週水曜日、全国だと毎月第二水曜日に配ってますね。webでバックナンバーも見れます」
「だったら購読しなくて良く無いですか」
「webだと書き起こしで上げているので、どうしても一日ほど遅れるので購読した方がいいと思います。情報鮮度が命ですよ」
だったら購読した方が良いかもしれない。でも毎日ログインできるわけでも無いからな…
「街の支部以外だけ購読とかできます?」
「出来ますよ。契約するんですか?」
「します」
「はいじゃあ契約書にサインお願いしまーす」
そう言ってカバンから契約書とペンを取り出し、差し出してくる。準備万端だ。最初からこれが目的だったに違いない。
記名欄にサインを書く。すると、契約書が浮いてくるくると舞い光の粒子となって消える。幻想的。
「はいこれで契約完了です。ステータス画面のメールボックスに確認メールが届くので、ご確認下さい」
ステータスを開いて確認する。確かに届いている。
「届いてました」
「はい、じゃあこれで契約の話はおしまいです」
終わったらしい。
「それじゃあ、取材の続きしましょう」
まだ続いてたのか。話が脱線しすぎたから、事故起こして終わったものだと思っていた。
「このゲーム内で、何か目標はありますか?」
「決まってませんけど…」
「けど?」
「できることなら龍を見たいなーって」
「竜? 竜なら一番最初に飛竜と戦いませんでしたか?」
「あ、漢字難しい方の龍です」
「あー、そっちの龍でしたか。じゃあ後で見てみますか?」
「見れるんですか!」
思わず声を荒らげてしまった。幸いにもテラス席に他の客は居なかった。居たら奇異の目で見られたに違いない。
「見れますよ。見に行きます?」
「行きます行きます」
「じゃあ行きますか」
「はい行きましょう」
ラッキー。
Q:イークスって造語?
A:調べてください。造語です。イーが街、クスが城。




