表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/34

捜査開始 3


 忠実な僕でも、不都合が生じたらあっさりと切り捨てる。そうまでして、自分を犯人に仕立て上げたいのかと、エリクの異様な執念に恐怖を覚えた。


 ならばと、マリオンは別の方法を持ち掛けた。


「では、誰かが私の指示で遺体に触れるのは、構わないのかしら?」


「何?」


「私が直接遺体に触れなければいいのでしょう? だから、この中の誰かにやってもらうのよ。それに、私の指示が少しでも怪しいと感じられたら、それは行わなくて結構よ。どう?」


「それは……」


 身を引くどころか、ずけずけと要望を唱えていくマリオンに、圧倒されていくエリク。その上、


「私としてはオーウェン君にやってもらいたいところなのだけれど、あなたは彼を疑ってしまっているし、しょうがないわ。動いてくれるなら、ウィンター君でも、ディルでもいいわよ」


 と、蚊帳の外になりつつある二人を引き摺り出す始末。当然、彼らの反応は芳しいものではない。どころか、


「わ、私っ? やりませんっ。絶対に、やりませんっ」


「無理無理無理! 俺も絶対無理!」


 エリクの声かけも待たずに、断固として拒否の姿勢を見せた。


 そうなることを見越していたマリオンは、「あら、残念」と言葉とは正反対の笑みを口元に浮かべながら、


「なら、あなたでもいいわよ、エリク君」


 と、不躾に言い放った。


「この私を使うというのか!」


「なら、オーウェン君を使ってもいいかしら? せっかく、警吏を呼ばずに私達の方で犯人を捜すのだと、エリク君の方から提案してくれたのだもの。時間は有意義に過ごしたいわ」


 間髪入れず、激昂するエリクに、対してマリオンは泰然自若な態度で向かい合った。


 次第に、二人の間に今にも火花が散りそうな、そんな張り詰めた空気に耐え切れなくなったのか、アンジェリーナがおずおずと口を挟んだ。


「い、いいんじゃないですかぁ? エリク様。このまま何もしなければ、刻一刻と時間が過ぎていくだけですし、マリオン先輩が調べてくれるって言ってるんですから、そうしてもらいましょうよ。それに、マリオン先輩が動いてくれるなら、エリク様はギルバート先輩に触れることなく推理することができますよぉ。ね?」


「あ、ああ。そうだな」


 愛しい少女に抱きつかれ、怒りが鎮まったエリクの眉間から、たちまち皺が消えていく。ああよかったと、周囲は胸を撫で下ろした。


 それを、知ってか知らずか、「悪女」はコロンとひっくり返していく。


「あら。ただ乗りするつもり? さすが、泥棒猫ね」


「ど、どろぼうねこっ? わ、私がですかぁっ?」


「アンジェを愚弄するな!」


 再び噴火するエリクに、それまで黙っていたオーウェンが口を挟んだ。


「エリク様。こちらはいつでも動くことができます。後は貴方のご命令だけです」


「チッ! 調べることを許可する!」


 投げやりに言い放つエリクに、マリオンはひと言、「ありがとう」と口にした。


 ようやく事を進めることができると、マリオンはオーウェンとともに死体のもとまでやって来る。


「では、鎧を外していきます」


「ええ。お願……いえ、待って」


 言いかけて、マリオンは死体を見上げながら目を細めた。


「その前にギルバート君を下ろしてあげましょう。いつまでもこれでは、可哀想だわ」


 そう言うと、オーウェンはマリオンへ顔を向け、


「悪女でも可哀想だと思うのですね」


 と、茶化すように言った。


 一瞬だけ、きょとんとしたマリオンは、すぐに応えるようにわざとらしく目を吊り上げた。


「あら、悪い?」


「いいえ。人の心をお持ちのようで安心しました。ではディル先輩、手伝ってください」


「えっ? お、俺ぇ?」


 声をかけられるとは思っても見なかったのだろう。呼ばれたディルが、素っ頓狂な声を上げた。


 オーウェンは気にした様子なく、淡々と言った。


「死んだ人間は見た目よりも重いんですよ。いくらギルバート先輩が私達男性の中で一番軽いといっても、私一人でできる行為じゃありません」


「いや、だから。俺は死んだ人間に触れるなんて無理……」


「無理かどうかの話ではありません。やるんです」


「うぐ……」


 後輩に押されて何も言えなくなったディルは、観念したのかオーウェンとともに死体を下ろすことになった。


「では、縄を切っていきます。落としたりしないよう、しっかり下で支えていてください」


「うげ……よりによって足かよ……って、重っ」


 首に隙間なく巻かれた麻縄をほどくことができないと悟ったオーウェンは、エリクに承諾を得てから、その縄を切ることにした。死体の頭付近で、またもやどこから出したのか手持ちだろうナイフを、ザリザリと縄に滑らせていく。


 一方、マリオンはその光景を見ながら、まるで絞首刑のようだと、眉を顰めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ