◇Two nights carnival その4◇
今回長めになってしまい、投稿遅くなってしまいました汗
申し訳ありません。
よろしくお願いします。
俺たちは軽く食事(といっても缶詰だが)を摂りつつ、
状況確認をする事にした。
「ロタ、ちょっと聞いていいか?」
「なんだ?」
「ラグナレクを企んでる連中ってのは何人くらいいるんだ?」
「正確には分からない。ただ、末端まで含めたら、
アースガルズ内だけでも300は超えるはずだ。」
「300かぁ、、結構いるなぁ。」
「その内、100はスクルド様の手勢だ。
他所とは比べるべくもない精鋭だぞ。結束も堅い。」
自慢げにロタが言う。
結束が堅いというのはいいな。
いくつかの派閥があるなら、最後は結束がモノを言う気がする。
上手く協力関係が結べれば、あらゆる意味で希望が持てるというものだ。
「OUFに関しては正直実態が掴めてない。」
「当然よね。まがいなりにも秘密結社だもの。」
「・・いや、一人。名前だけ分かるな。確かセラフィーナ。
そう。セラフィーナといったハズだ。」
「セラフィーナ、、。ヴァルキュリアではないはね。」
「北界出身のものかも定かではない。
OUFは主要4界をまたぐ組織だからな。」
「で、そのセラフィーナって、どんなヤツなの?」
「直接会った訳ではない。
スクルド様が怒鳴り散らしてるのを聞いてしまっただけだ。
『セラフィィィナァァ!!!ぶち殺す!!』と。」
「あの冷静な方が、、、」
「正直、私も驚いた。」
「・・まぁ、面倒そうなヤツだと言うことだけは分かったわ。」
「あぁ。多分、面倒なヤツだ。」
「そんな面倒そうなヤツの事より、、」
「象太郎ぉ〜。」
「なんだよ親父!」
「その面倒なヤツってアイツじゃないのかぁ?」
親父が指さす先に金髪メガネっ子が立っていた。
見た目は完全なる子供だが、
異世界に於いてはそんなもの当てにはならないだろう。
無理矢理笑顔を作ろうとして失敗している。
抑えきれない頬のヒクヒク。そして、ちょっと眼が怖い。
「いっいつの間に!」
驚くばかりの俺を横目に、
カトリーナとロタは既に剣を抜いていた。
さすがに戦闘慣れしている。
「ほう。半神風情にしては中々に素早い反応だな。見直したぞ。」
「・・そうかい。じゃあ死にな!」
言うなりロタが飛び出す。
「待って!ロタ!情報が欲しい!手加減を!」
「あいよ!」
いい返事とは裏腹に大上段から体重を乗せた一撃を降り下ろす。
いや、それ即死コースでしょ?
しかし、そうはならなかった。
『ギィィィィン!!』という金属音が響く。
ロタの一撃が受け止められたのだ。
しかも、指一本でだ。
「チッ!」
「フム。思ったより重かったな。あぁ、ダジャレではないぞ。」
慌てて距離を取るロタ。
「化け物が。」
「フフフッ。化け物とは心外な。」
月明かりをバックに宙に浮かび、眼鏡を掛け直す金髪。
「我が名はセラフィーナ。
元OUF北界エリアの幹部にして、、
真祖だ。」
マントを翻しながら言うセラフィーナ。
芝居っけタップリの仕草だが、サマになっている。
「真祖だ、と、、」
真祖。なんのゲームか漫画か忘れたが聞いた事がある。
確か血を吸われて吸血鬼になったのではなく、
自然発生的に産まれてくるヴァンパイアの祖。
つまり、神に近しい不死の化け物の事だ。
「ふっ驚いたか?」
「化け物の中の化け物じゃねぇか!」
「えぇ。とんでもない化け物ね。」
「で、その化け物が何の用だ?」
「お、お前たち、初対面の私を前に、
それはちょっと失礼じゃないのか?
まぁ、話を聞け。」
「みんな!騙されるな!相手は化け物だ!」
「分かっています!いかにも化け物らしい手です!」
「化け物相手に油断などするものか!」
「い、いや、そんな化け物、化け物って、、
ちょっと話を、、」
「黙れ化け物!」
「ロタ!化け物を挟み撃ちにするわよ!」
「よし!お前は化け物の右に回れ!」
同時に飛びかかる二人。
「人の話を聞けぇ!!!」
目に見えない何かの力で締め上げられ身動き取れなくなる俺たち。
声もでない。地上に降りてくるセラフィーナ。
「まったく最近の若いもんは人の話を聞く事を知らん。
黙ってきいておれば化け物化け物と、、」
「まぁ、落ち着けよぉ。シーチキン食うかぁ?」
いつの間にかセラフィーナの背後に回っている親父。
さすがのセラフィーナも面くらった様子だ。
「いや、私は真祖ゆえ食物は、、」
「いいから、食えって。」
セラフィーナの口にシーチキンを捩じ込む親父。
「貴様何を!・・・なっ!こ、これは!魚か?魚なのか!!」
「魚だぞぉ。」
「それにこの骨!柔らかいぞ!」
「シーチキンだからなぁ。」
「シーチキンという魚なのか!」
「いや、マグロだったかなぁ。」
「3000年以上生きて来たが、
此の様な食物は初めて食した。礼を言う。」
ちょっと待て!3000年だと!
このロリを通り越して、
小学生にしか見えない子が!
異世界怖えぇ!!
「礼はいいから、彼奴らを自由にしてやってくれよぉ。」
「おぉ!すまん。」
片腕を軽く横に払うセラフィーナ。
身体が自由になる。
「お〜い。お前ら。何かこの子が話があるみたいだから、聞いてやれ。」
俺たちは顔を見合わし、それぞれに頷いた。
「改めて、セラフィーナである。」
さすがの俺でも守備範囲外の限りなくフラットな胸を逸らし、
ドヤ顔で名乗るセラフィーナ。
「齢は3000と11歳。子供扱いはやめてもらおう。
後、化け物扱いもな。」
気にしてたようだ。気をつけよう。
「私は科学者にして、魔学者。
真祖にして、ウィッチの称号も持つネクシャリスト。
分かり易く言えば、いわゆる天才である。」
自分で天才言っちゃったよ。
「おい。そこの恍けた顔の小僧。」
「えっ?俺?」
「他におらんだろ。名をなんと申す?」
「斯波象太郎です。」
「ふむ。聞かぬ名だな。」
「はぁ。」
「お主はいったい何者だ?」
「何者とは?」
「恍けるな。私は魔眼持ちだぞ。『真実』の方ではない。魔の方だ。
この意味が分かるな?」
あれ、これ知ってる。デジャヴー?
「言ってる事は分からないでもないんですが、
何せ自分でも何者か良く分からないので、、」
「ハッキリしない奴だな。もう良い。」
言うとセラフィーナの瞳に魔法陣の様なモノが浮かび、
クリムゾンの輝きを放つ。
「なんと、我が魔眼を以てしても解析出来ぬか!面白い!!」
「はははっ」
渇いた笑いしかでない。
「良し。決めた。」
「?」
「象太郎とやら、お主、私と組まぬか?」
「はぁ!?いきなり何を!」
「お主はかなりの変わり種だ。魔術核も相当特殊そうだしな。
我が知識欲を満たせるだけの価値がある。
手っ取り早く眷属にして、
あんな実験や、こんな実験や、そんな実験までして、
骨の髄まで研究したおしたいと思ったのだが、残念ながら難しい。
驚くべき事に、単純な神格だけならば、私よりお主の方が上の様だ。
と、なれば組むしかなかろう?」
いや、何言ってんだこの子供?
面と向かって眷属だの、実験だの言われて、
はいそうですかと組む奴はいないだろ。
とはいえ、逆らっても勝ち目がみえない。
ここはお茶を濁すトークで時間を稼ぎ、
打開策を考えるしかない。
「突然そんなこと言われても、、
それに、組むと言うからには俺にもなんらかのメリットがないと、、」
「メリットならあるぞ。むしろメリットしかない。」
「えっ?どんな?」
「言ったであろう。私は天才だと。
お主はそれほどの魔粒子を持ちながら、
術式に関して白紙状態ではないか。
それをこの私が手ずから組んでやろうというのだ。
悪い話ではないだろう?」
言ってる意味が良く分からない。
術式を組んでくれると言うが、そもそも術式ってなに?
妖しく微笑んでいるセラフィーナ。
眼にたゆたうマッドな光に背筋が少し寒くなった。
「き、危険です!!
断って!象太郎さん!」
「牛の眷属は黙っておれ。」
面倒くさそうに言うセラフィーナ。
カトリーナは何やらショックを受けている。
「う、うし、、」
その様子をニヤつきながら見ているロタ。
「そっちの鶏ガラも口を出すでないぞ。」
「と、とり、、」
二人とも口をパクパクしてる。
もはや、頼れまい。
しかし、俺にはまだ親父がいる!!
目で合図を送ろうと親父の方を見る俺。
居眠りしてやがる!
「私と組め。象太郎。
さすれば、私は新たなる知識を、お主は絶大な力を得るであろう。」
「悪いが少し時間をくれ。」
「なぜだ?迷う理由はなかろう?」
「正直に言う。
俺は、アンタの言う術式って言葉を初めて聞いたのが、
ほんの2時間前なんだ。だから、アンタの申し出の価値も、
自分の価値とやらも全く理解出来ていない。
その辺りをちゃんと理解した上で、返事をしたい。ダメかな?」
「にわかには信じがたい話ではあるが、、
ふむ。嘘はついてない様だな。
いいであろう。契約はフェアーでなければ意味がない。
お主の納得がいくまで待とうではないか。」
「ありがとう!アンタ、いい奴だな!」
その言葉にきょとんとした表情になるセラフィーナ。
笑い出す。
「気に入った!お主にはコレをやろう。」
首にかけていたネックレスを外し、手渡すセラフィーナ。
「これは?」
「久かたぶりに愉快な気持ちにさせてくれた礼だ。持っておくといい。」
「あぁ。ありがとう。」
「クラース!!」
セラフィーナが叫ぶと、影の中から、見るからに執事風の老紳士が現れる。
「ここに。」
「貴様は、この者達の面倒を見てやれい。」
「はっ。仰せのままに。」
「もし、此奴らの身に、なにか有ったなら、、分かっておろうな?」
「承知しております。」
恭しく礼をする老紳士。
「良し。では、私は行く。主の心が定まったならば、
此奴に伝えてもらうとしよう。」
「分かった。」
「では、またな。」
言うと瞬時に目の前から消えるセラフィーナ。
「よろしくお願いします。ご主人様。」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。クラースさん。」
「象太郎さん。退って!」
臨戦態勢で叫ぶカトリーナ。
ロタも剣を構えている。
「危険です。その老人。相当な腕とみました。」
「ちょっと待て二人とも!落ち着けって!」
「象太郎がそう言うなら、、。」
言うとロタは構えを解き、剣を納めた。
「ちょっと!ロタ。」
「象太郎はこのパーティーのマスターだ。
お前も納得したハズだろう。」
「・・分かったわよ。」
渋々カトリーナも剣を納める。
「カトリーナ様、ロタ様。初めまして。クラースと申します。
以後、お見知り置きを。」
「えぇ。」
「さて、皆様の事情は大体察しております。
ラグナレク阻止。で良いですかな?」
「その通りよ。で、貴方はなにをしてくれるの?」
「なんなりと。」
「その言葉を簡単に信じられると思って?」
「おっおいカトリーナ、、。」
「信じて頂くほかありませんな。」
「・・・。」
「理由をお聞きき頂いても?」
「話して。」
「貴方様は神眼持ち。ならば建前ではなく、本音でお話ししましょう。
我が敬愛すべき王、セラフィーナ様。
我が王の類い稀な才覚を利用し、巨大異世界転移門術式を組ませ、
それが終わると何の落ち度もない我が君に、
あらぬ疑いをかけ無下に切り捨てたOUF。
万死に値しますな。
彼奴らに必要なのは、一点の曇り無き絶望のみです。
その為に一番有効なのはラグナレク潰しと浅学な私めは考えております。」
丁寧な言葉使いだけど、内容は怖いな。
この人も怒らせちゃいけない。
心にメモしとこう。
「いいわ。信じましょう。よろしくクラースさん。
ところで、貴方、ヴァンパイアよね?陽の光は?」
「陽光に耐えられぬのは下位の者たちのみです。
何の問題もございません。」
「で、象太郎さん。
これからどうするつもり?」
「まずは、予定通りスクルドさんとコンタクトを取りたいと思うんだけど、、
彼女の館ってここから近いのか?」
俺の質問に、カトリーナとロタが顔を見合わせる。
どうやら、そもそもここが何処なのかが分かってない様子だ。
まぁ、一言に北界といってもそれなりに広いのだろうから、
これは仕方のない事だ。
代わりに答えてくれたのは、クラースさんだった。
「直進すれば2週間弱、
迂回路を取れば一月半と言った所ですな。
ただ、発見される恐れを差し引いても、
迂回をお勧めしたい処ではあります。」
「ん?直進だとなんか問題あるんですか?」
「ヴィージの森を突っ切る事になります。」
その言葉に、女性陣二人が騒ぎ出す。
「ヴィージだと!」
「よりにもよって、、それはないわ。」
「なにか不味いのか?」
「まずいです。非常にまずいです。」
「そ、そんなに?」
「はい。ヴィージの森は、ヴィーザル様の棲家なんですよ。」
「そのヴィーザルってのは、そんなにヤバい奴なのか?」
「北界最強候補筆頭です。」
「えっ?主神って奴より強いってことか?」
「大きな声では言えませんが恐らく、、。
ここには、北界の住人ですら、
よほどの事がない限り近寄りません。」
「そ、そうなんだ。ちょっとそのルートは避けたいな。」
「直進のがいいんじゃないかぁ?」
起き抜けの親父が、あくびをしながら、
また訳の分からない事を言い出す。
「初めまして。私クラースと申します。
あなた様が高名なシヴァ様でございますね?
お会い出来て光栄の極みでございます。」
「今はただの人間だぞぉ。」
「ご謙遜を。」
「してないぞぉ。それより、さっきの話だが、直進のがいいと思うぞぉ。」
「シヴァ様、よろしければ理由をお聞かせください。」
「人目。後、時間だぁ。
減速術式かけてから、こっち来るまでに2時間はあった。
こっちじゃ、少なくとも4日は経ってるぞぉ。」
「あっ!」
「その間に、向こうは幹部も変わってるみたいじゃないか。」
「そうですな。我が王が組織から追われたのは3日前の事です。」
「なら、やっぱり直進じゃないのかぁ。
象太郎どう思う?」
「ちょいまち。」
整理しよう。
敵の内部でなんらかの問題が発生したのは確かだ。
その結果、セラフィーナが組織を追われた。
何だ?何があった?
“常時加速世界でそんな人数の選定を一人一人やっていたら、
一体どれだけの時間がかかると思う?
どう考えても人手が足りない。本来ならな。
だが、一つだけ打開策がある。”
カトリーナか!!
そうだ。計画の要であるカトリーナが突如行方不明。
これは大問題だ。
だけど、それだけで内輪揉めが起きるか?
仮にも世界をひっくり返そうって連中だ。
それなりの組織力があるはず。
カトリーナを捜索する事も、
他の神眼持ちを新たに確保する事も選択肢に入るだろう。
ならば、揉めるよりも結束が強まるんじゃないのか?
“スクルド様が怒鳴り散らしてるのを聞いてしまっただけだ。
『セラフィィィナァァ!!!ぶち殺す!!』と。”
強まらない。
潜在的に火種はあったんだ。
セラフィーナとスクルドは不仲だった。
しかも、ロタの話では、スクルドは計画に反対が本音。
“何の落ち度もないあの方に、
あらぬ疑いをかけ無下に切り捨てたOUF。
万死に値しますな。”
ハメたのか。
内輪もめを加速する為にセラフィーナを。
ここまではまず間違いないだろう。
それはいい。
じゃあなぜ、親父はリスクを抱えてまで直進を?
“人目。後、時間だぁ。”
人目!!
親父は時間よりも先に人目と言った。
“発見される恐れを差し引いても
迂回をお勧めしたい処ではあります。”
迂回路を取れば発見される恐れがある!!
もし、、もしもだ。
カトリーナが生きていると知られたらどうなる?
ましてや、スクルド子飼いのロタと行動を共にしていたとしたら!!
スクルドがセラフィーナをハメた事がバレる。
そうなった場合、恐らくスクルドは消されるだろう。
戦力というにはあまりに少数の俺たちが、
ラグナレクを阻止する為の唯一の希望が消える。
そして、ロタがスクルドの子飼いであった事を考慮すると、
セラフィーナやクラースさんとの関係性も悪化は免れない。
コレって、、もし見つかったら、
その時点でゲームオーバーじゃないか!!
“ここには、北界の住人ですら、
よほどの事がない限り近寄りません。”
なるほど。分かったよ。親父。
「ヴィージの森を突っ切る。これは決定だ。」
俺は決断した。
「ハァ!?ちょっと象太郎さん何を言い出すんですか!!」
「象太郎がそう言うなら、行こう。」
「ちょ、ちょっとロタ!」
「我が主の命に従いお供させて頂きます。」
「クラースさんまで!」
「カトリーナァ。諦めろぉ。」
「ハァ〜。」
大きなため息をつくカトリーナ。
「じゃあ行こうか!」
俺は歩きだした。
皆が後に続いた。
眼下に広がるヴィージの森は、
ただただ静かに佇んでいた。
明日はちょっと仕事バタバタしそうです。
次の投稿は25日夜、もしくは26日明け方を目指してます。
よろしくお願いします。





