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パパは破壊神(デストロイヤー)  作者: 空風林
序章
3/21

◇二十五歳の夜 その3◇

よろしくお願いします。

拝啓、天国の母上様。どうやら僕は、重度の中二病を患い、

人にはとても話せない類いの恥ずかしい夢を見ている様です。

だって、少女ロリが中二、、いや宙に浮いているんですもの。


「姿を現しなさい。」


その宙に浮いている少女カトリーナは言いながら、右手を頭上に挙げる。

すると光の粒子がみたいなものが集まり始め、

やがて一振りの幅広剣ブロードソードとなった。

その剣を逆袈裟ぎゃくけさに鋭く振り下ろし、

何もない一点を鋭く睨む。


「よもやその程度のインヴィジブルスキルが、

 私に通用すると思ってはいないでしょう。」

「小娘が。随分と強気じゃないかい。」


声と共に、姿を現したのはモデル体型のお姉さんだった。

銀髪のショートカットに切れ長の目。

セパレートのレザーアーマーからスラリと伸びた長い脚。

ゆらりと抜いた鎧刺プウトラックを優雅に構える姿は、

まるで絵画の様な趣があった。


貴方あなたほどではないわ。ロタ。

 まさか『|神々の箱庭( こんなところ )』まで追ってくるなんて。」


言いながら幅広剣ブロードソードを両手持ち正眼に構えるカトリーナ。


「狙った獲物は逃さない主義でね。」

「ここでの戦闘行為がどういう意味を持つか分かった上で言ってる?」


笑い出す美女ロタ


「盗み聞きしてたんだろ?」


徐々にその表情が残酷そうに歪む。


「なら、分かるよな?」


鎧刺プウトラックの刀身がオーラをまとい紅色に染まり始める。


「私が協定破りなんか気にしないことをさ!」


言いながら、一瞬で間合いを詰め、上段から鋭い斬撃を放つロタ。


カトリーナはかろうじて受け止めたが、受け流すまでには至らず、

衝撃で大きく後方に吹き飛ばされる。


体勢を崩したカトリーナの心臓を狙い突きが襲う。

直撃は避けたが、かわし切れない。


わずかに残された布地が更に裂け血が滲む。

すかさず距離を取るカトリーナ。


「早くも逃げ腰かい。さっきまでの威勢はどうした?」

「クッ!」

「うわぁ。すごぉ〜い。まんがみたぁ〜い。」


棒読みになる俺。

そんな俺を置き去りに戦闘は激しさを増して行く。


ロタが激しい連撃を繰り出す。振り回す鎧刺プウトラックの残影が、

幾条いくじょうちゅうに描かれ、

その放物線は幻想的な風景を作り出していた。


「ソラソラ!どうした小娘!」

「クッ!まだまだ!」


カトリーナは、しばしばかすりはするものの、

何とか直撃を凌いでいる。


そんな光景がひたすら繰り返される。

つまりは防戦一方なのだ。


再び危険な一撃を受け流し損なうカトリーナ。頬に一条の血が滲み、

痛みに顔が歪む。


『おい!もうやめろよ!早く逃げろ!』そう叫びそうになるが、

声が出ない。次第に削られていくカトリーナ。

それを何も出来ずにただ観てる俺。


「強いなぁ。」

「うわぁ!」


背後からいきなり聞こえた声に驚く俺。

いつの間にか至近距離にいた親父が俺の背中越しに呟く。


「おい!親父!あれヤバいんじゃねぇのか?」

「う〜ん。まぁ。後少しで限界かなぁ。」

「なんとかならないのか?」

「う〜ん。」


そんな会話をしている間に、

カトリーナの動きが目にみえて鈍り、バランスを崩す。


見逃す事なく強烈な横薙ぎを放つロタ。

再び吹き飛ばされるカトリーナ。


「オイ!親父!なんとかしろ!!」


俺は親父の胸ぐらを掴み激しく揺する。


「分かった!分かったからやめろってぇ。父さんそういうの苦手だぞぉ。」


言うと、窓から乗り出して声を掛ける親父。


「おぉ〜い。小娘ぇ〜。その辺でやめといた方がいいぞぉ〜」


その声を聞き、我が意を得たりとばかりに大笑いし出すロタ。上機嫌だ。


「聞いたか小娘!仲間もああ言ってるぞ!私への非礼を詫び、

 我らが配下となるなら命だけは助けてやってもいいぞ?」

「・・・まだまだよ。これから反撃するとこ。」

「ハッ!ボロ雑巾みたいになっても口だきゃ達者だなぁ?小娘!」

「フン!ボロ雑巾みたいな魂してるよりは随分マシでしょ?おばさん。」


露骨に不愉快な表情になるロタ。


「それが遺言でいいんだな?」


冷徹な口調が怒りの大きさを伝えてくる。


「フッ。口だけは達者みたいね。」


鼻で嘲笑わらい、応じるカトリーナ。


「そうか、、、なら、、死ね!!!」


最上段に振り上げた刀身に纏ったオーラが、不意に大きく膨張する。


暴虐ランページ・業火インフェルノ!!」


叫びながら剣を振り下ろすロタ。数条の炎が螺旋状に絡みあいながら、

カトリーナ目掛け囲む様に襲い掛かる。


操風精霊滑空グライド・マニピュレート!!」


やや遅れてカトリーナが叫ぶ。

するとカトリーナの全身を緑がかった光が包み、

竜巻にでも巻き込まれた様に空高く舞い上がる。


先ほどまでカトリーナがいた位置で炎の鞭が衝突し、

大きな爆発が起こる。


「うわっ!」


ものすごい熱気が迫ってくる。

あっ。コレ、ヤバいやつだ。


訳も分からず巻き込まれて死んじゃうモブキャラ。将にアレだわ。

不思議と恐怖は感じなかった。

あまりの無理ゲーぶりに、脳が死を受け入れてしまったんだろう。


心残りと言えば、、、

あぁ。死ぬ前に一度でいいから、ちゅうと言うヤツをしてみたかった、、。


そんな事をぼんやり考えながら、その瞬間を待つ俺の肩を、

親父がポンっと叩き、ニカッと笑う。


同時に目の前に半透明のイカツイ盾みたいのが出現した。

家を覆うほどの巨大さだった。


完全に遮断される熱の塊。徐々に視界が開けていく。

そして、九死に一生を得た俺の瞳に飛び込んで来たのは、

片膝を地面に着いているロタと、

その首筋に背後から刃を当てるカトリーナだった。


「ふぅ〜。勝負ありです。」

「ふざけるな!まだだ!!」

「無理はやめなさいロタ。これ以上エネルギーを使えば、

 存在を保てなくなるわよ。」

「小娘が!ナメルな!!」


そう叫んだロタは湯気すら立つ勢いで全身から汗を吹き出し、

呼吸すらままならない様子だ。素人目にも限界なのが分かる。


一方、カトリーナは、まだまだ余力を残してそうに見える。

勝敗は明らかだった。


しかし、ロタは剣を杖代わりにして無理矢理立ち上がる。

カトリーナはくびに当てた剣を振り抜く事が出来ずに、それを許してしまう。

その様子を見た親父が、声をかける。


「そこまで!小娘。お前の負けだ。」

「そんな!!私はまだやれます!!」


カトリーナは抗議の声をあげた。当然だろう。俺でもそうする。

一体、親父は何を言い出すんだ?そう思ったのだが、

親父の顔を見てると、何となく、今、俺が口を挟むのは躊躇ためらわれた。


「フッ、、ハハッ、、ハハハ!アンタが噂の破壊神アレだよな?

 人間に堕ちたとは言え流石に理解わかってるじゃねぇか!

 その通りだよ!!!いいか?小娘。

 トドメもさせねぇ奴に戦いの勝者を名乗る資格なんざねぇ!!」


その言葉にうつむき、歯を食いしばるカトリーナ。


俺は『あぁそういう事か』と理解はしたが、全く納得は出来なかった。

出来るわきぁねぇよ。


悔しい。何でかなんて知らねぇ。けど、すげぇ悔しいんだよ。


「親父!!俺は!!俺は、、

 正直、何がなんだかさっぱり分かってねぇよ。

 事態に全くついていけてねぇ。

 夢見てんじゃねぇかと思うくらいだ。

 けどなぁ。なんか納得いかねぇ。

 今の勝負はロリ巨乳の勝ちだろが!!」


気づくと俺はそう叫んでいた。なんか魂の叫びだった。


誤解の無い様に説明すると『ロリ巨乳』という言葉に

『魂を込めてセクハラしたかった』訳ではない。


色々有りすぎて、カトリーナと言う名前がすぐに出て来なかっただけだ。

話は逸れたが、本日二度目になる生の感情を親父にぶつけた。


しかし、親父はキョトンとした顔で俺を見ている。

えっ?何コレ?なんか俺、熱血過ぎた感じ?

えっ?だって、さっきまで『まだまだぁ!』とか『なら死ね!』とか

中二全開の感じで戦闘してたじゃない?

えっ?なんで俺の時だけこんな空気?


不意に恥ずかしくなった俺は逆切れした。


「いや!ロリ巨乳だろ!!どうみたってロリ巨乳の勝ちじゃねぇか!!」

「そうだよ。」

「そうだよ。じゃねぇよ!いいかロリ巨乳はなぁ!、、えっ!今なんて?』

「いや、だからカトリーナの勝ちだよぉ。」


ポカンとする俺。選手交代。今度はロタがキレる。


「どういう事だ!お前はさっき私の勝ちだと言ったじゃねぇか!」

「言ってないぞぉ。小娘の負けと言ったんだよぉ。」

「同じ事だろ!」

「違うぞぉ。小娘はお前だぁ。

 カトリーナは、どちらかと言えば巨娘きょむすめだぞぉ。」


はい。大変な発言出ましたぁ。もうみんなドン引きで〜す。


「キ・サ・マ〜!!なんの話をしている!!!!」


真っ先に正気に戻ったのは小娘呼ばわりされた。ロタ氏だった。


どうやら劣等感コンプレックスを刺激された様子で、

それはもう見事なキレ具合だった。俺判定で今日イチである。


怒りに任せ襲い掛かろうとしたみたいだが、わずかに浮かび上がった瞬間

燃料切れを起こしたらしく、失神。白目を剝いて墜落していった。


『あ』と『が』の中間みたいな表現しがたいおとだけを残して。

慌てて受け止めるカトリーナ。


そして、俺は、、、。


「おい。親父。いくら親父でも許されない事はあるんだぜ。」

「ん?父さんなんか失敗したか?」

「したわ!大惨事だわ!良くもまぁうららかな乙女を前にして、

 あんな大セクハラ発言を口に出来たもんだなぁ?おい!

 大体だなぁ、貧乳ナメてんじゃねぞゴラァ!!

 巨乳がナンボのもんじゃい!!!」


俺は叫んだ。魂の限り。


「ほう。」


振り向くとそこには、いつの間にかロリ巨乳ことカトリーナさんが、

ロタをお姫様抱っこして浮いていた。満面の笑顔で。


「象太郎さん。少しお話いいですか?」


ニッコリ笑うカトリーナさん。何故だろう。涙が止まらない。


哀しい。何でかなんて知らねぇ。けど、すげぇ哀しいんだよ。


俺はカトリーナさんの視線に耐えかねて目を反らすと

今度は親父と目があった。

親父は何故かモジモジしながら

 

「父さん、なんか失敗したみたいでごめんなぁ。そんな泣くなよぉ。」


よしよしされた。


いや、失敗したのは俺です。痛恨というヤツです。


「シヴァ様はなぁんにも悪くないですよぉ。

 そうそう。ロタの事、お願いしていいですか?」

「あぁ。分かったぁ。」

「では象太郎さん。」


腕を取られ、強制連行される俺。


もし、バイクとかその辺に止まってたら、

盗んででも、どこか遠くに走り出したい。

そんな25歳の夜だった。

序章終わりました。次回から、本編、第一章『北界争乱篇』に突入です。

やっと世界観に触れられます。更新は18日夜予定です。

よろしくお願いします。

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