表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その身体は、誰の魂で生きているのか』  作者: 紅玉道


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/17

幕間:ある巫女の憂い

ダーチの集落、神木の祠。祭壇の前でマシャハは呼びかけている。

ミスダクの集落からの反応は、ない。シェリエールが神託を受けてから毎日試しているが、繋がらないままだ。焦りが募る。嫌な想像が離れない。


「……あの娘なら、大丈夫」

頭を振り、一人ミスダクへ調査に向かった愛弟子の無事を、ただ信じていた。

それでも、胸騒ぎは消えない。祈ることしかできない自分に、わずかな無力感を覚えながら。

「ナハール様……シェリエールをお見守りください」


マシャハの師、ナハール。歴代でも指折りと謳われた巫女。

――だが。エルフとしての自分を捨てると言い残して、姿を消した。

その理由を、マシャハは知っている。夫と自分の罪が、最後の引き金になったことも。


シェスヴァフは、変わらず動いている。日課である集落の見回り、長老会議、ジュネスの村への視察――。あの人は、自分にできることをやっている。

二度とあのようなことが繰り返されぬよう。


二人で決めた。償い続けると。どれだけ時間がかかろうとも。

許されることはない。――それでも。あの時から、ずっと。


――百七十年。

息子カイルを失ってから。いえ――何より、あの人の罪を共に背負うと決めた日から。


マシャハは、シェスヴァフの話を思い出していた。


――私は、人間の子を殺した。


それが、シェスヴァフの罪。

アナム。本来は、瘴気から魂を守るための器。それを、人間の魂を抜く事に使った。

行き場を失った、カイルの魂を移すために。


マシャハは彼を責めた。

――なんて馬鹿なことを。

だが、責めきれなかった。あの時の彼の顔を、知っているから。


だからこそ、ともに罪を背負うことを決めた。

家には、二人分の子供服が、今も置かれたままだ。


シェスヴァフは人間との関係改善に動いた。人間の統治者と何度も話し合い、当時の長老を説得し、ジュネスの村を人間とともに作り、交流の道筋をつけた。

マシャハもまた、悲劇につながらない道を探し続けている。迷いながら。挫折しながら。それでも、道を選び続けている。



「マシャハ様!」

緊迫した呼び声に意識が引き戻される。


「どうしました?」

振り返ると二人のエルフが肩で息をしていた。

「西の森で、瘴気の発生を確認しました!」

(やはり、ここのところ多いな)


「あなたは、アナムとイーナを持ち、私に付いてきなさい」

「はっ」

答えると、ペンダントと杖を手に取る。


「そちらは、ディリンに報告を。私は浄化に向かうが、すぐに戻ると伝えなさい」

「はいっ」

ディリンの元へ駆け出そうとするエルフ。

「それと」

「……ミスダクの集落とは、未だ連絡取れていないと」

「……はい」


「さ、行きましょう」

マシャハは、迷いなく瘴気へと向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ