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『その身体は、誰の魂で生きているのか』  作者: 紅玉道


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幕間:よぎる面影

「……空気が変わったな。ミスダクに入ったか」

 森の中、クーラマフは術を解き、木の根に腰を下ろし一息ついた。ダーチの集落を出てから一日半。ここまでほとんど休憩をとっておらず、さすがに少しペースが落ちてきていた。

 森は静かだった。近くで異変が起きているとは思えないほどに。

「あのアーリンという巫女の目……」

 クーラマフは言いかけてやめる。それを口にした途端、長老としての自分が崩れそうな気がした。クーラマフは深呼吸し、自分が今やるべきこと、考えるべきことに集中する。シェリエールとの合流。そして情報整理だ。シェスヴァフたちに、追加報告の内容も確認しなければ。


 クーラマフは立ち上がり、近くの木に手を当て祈る。瞬間、クーラマフの体が淡い光に包まれる。吹き始めた風が背中を押し、大地が意思を持つように足場を整える。木々は揺れながら行く手を開き、クーラマフは森そのものに運ばれるかのような速さで駆けた。

森を進みながら、周囲に意識を飛ばした。シェリエールからの報告を思い出す。

瘴霊からの襲撃。そして、何かを知る大蛇。再接触を試みるよう指示が出たはずだが、会えただろうか。もしその気配を捉えられれば、自身も会いに行ってみるつもりだった。


 日がすっかり落ち、暗くなった森の中でクーラマフの意識に何かが引っかかった。ここから少し離れた場所に、強い魂を感じる。知っている、だが思い出せない。

「この魂……。誰のものだったか」

 シェリエールではない。もっと異質。エルフのもののようで、違う魂。

 ミスダクの集落まで、あと一日ほどだ。クーラマフはその気配の方へ進路を変えた。だが、たどり始めて間もなく、感じていた気配が消えた。

「こちらの感知に反応したのか……?」

 それ以降、気配が現れることは無かった。しばし思案し、ミスダクの集落へ進路を戻した。

「今は、シェリエールとの合流を優先しましょう」


 並みのエルフの倍以上の速さで駆け続ける。身体も精神もかなり消耗していたが、止まることはなかった。


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