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『その身体は、誰の魂で生きているのか』  作者: 紅玉道


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幕間:ある四人の非日常

「おーい!あいつら、なんか落としてねぇかー!」

「何もねぇー!」

森に、間の抜けた声が響く。


(……全く、何なんだよ。あの女はムカつくし、あの男は強ぇし)

リーダー格のスキンヘッドの男は、舌打ちを飲み込んだ。巻き立ての包帯が痛々しい。


元々、この四人組は大きな街同士を繋ぐ街道沿いにいた。人も、荷も、金も流れる場所。

だが縄張り争いに負け、押し出されるようにこの森の近くまで流れてきた。


「久しぶりの獲物だったのによ……クソが」


「お頭ぁー!」

間延びした声が、茂みの向こうから飛んでくる。

「なんか見つかりましたぜー!」

「お、マジか!金目のもんか?」

少しだけ、気分が持ち直す。


茂みをかき分けて近づくと、手下の一人が小さなペンダントを差し出した。

「これです」

「……ほう」

中央に透き通った青い宝石がはめられ、見事な装飾が施されている。


吸い込まれそうな青――だが、どこか濁っている。

無造作に手に取る。ひんやりとしているのに、どこかぬるい。


「変な感じしませんか?」

別の手下が、首をかしげる。

「……あぁ?」

視線を外す。手を離した後も、指先に“触れているような”感覚。

「……なんだ?」


「……いや、綺麗じゃねぇか。これ、売れるぞ」

男は気のせいだと思うことにし、軽く笑ってみせる。手下たちの目の色が変わる。

「マジすか!」

「久々の当たりじゃねぇか!」


「よっしゃ!」

男はペンダントを握りしめる。その指先に、わずかな力がこもる。

「街まで売りに行くぞ!」


「街ってどこです?」

間の抜けた質問。

「一番近くても、五日はかかりますぜ?」


「……あー」

少し考えて、肩をすくめる。

「まぁ、のんびり行こうや」


焚き火が、ぱち、と弾ける。夕暮れの森。四人は円を作るように座り、獲ったばかりの肉にかぶりついていた。脂が落ちて、火が揺れる。いつもの光景。


「……なあ、あの爆発、やっぱ変じゃなかったか?」

誰かが、口を開く。

「二回……でかいのあったよな」

別の男が、骨を噛み砕きながら応じる。

「火薬の匂いしなかったし、それに、なんか……ぬるかったよな、風」

「あと……あの被さってきた、黒いモヤな」


言葉が途切れる。誰もその先を言わない。理由はないけど言葉にしたくない、という空気。

いつの間にか、空は黒い雲に覆われ始めていた。今にも雨が降り始めそうだ。


スキンヘッドの男が、肉を引きちぎりながら言う。

「あの二人もピンピンしてたしな。大したことなかったんだろ」

軽く笑う。それに、何人かが合わせて笑った。

「だよなぁ」

「ビビりすぎか」

空気が、少しだけ軽くなる。だが――完全には、戻らない。引っかかりが残っている。


「……」

スキンヘッドの男は、黙っていた。焚き火の明かりの中で、手元を見下ろす。

そこにあるのは――あのペンダント。指で、軽くなぞる。


考える。売れば金になる。それは間違いない。でも――

「手放したく、ねぇな……」

小さく、ぽつりと漏れた本音。

「え?」

近くの手下が顔を上げる。

「何か言いました?」


「……あ?」

一瞬、間が空く。自分でも、なぜそんなことを言ったのか分からない。

「……いや、何でもねぇ」

ぶっきらぼうに返し、そのまま、ペンダントを握り込む。少しだけ、強く。


その時、焚き火の向こうで一人の手下が、じっとスキンヘッドの男を見ていた。何も言わずに。

「……なんだよ」

「いや……なんでも、ねぇです」

そいつは、ゆっくり首を振りながら、その目はペンダントから、離れていなかった。


風が吹く。森の奥から。わずかに、生ぬるい風。ひと雨来そうだ。焚き火の煙が揺れる。

その中に、ほんの一瞬だけ――黒い靄が、混じった気がした。


――ポツッ

振り出した雨から逃れようと、四人は森の奥へ走り出した……。


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