表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その身体は、誰の魂で生きているのか』  作者: 紅玉道


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/17

幕間:父ではなく、統治者として

まだ朝靄が残る集落を、シェスヴァフは一人歩いていた。何をするわけでもなく、ただ森の音や空気、気配を感じながら。


シェスヴァフは今、友を一人見送った。ミスダクの異変の対処に向かった友を。

「帰れよ、クーラマフ……」


ふと、ある記憶が脳裏をよぎる。それは、その友の娘を見送った日。



――その日も、同じ道をシェスヴァフは歩いていた。その先に、人影――フィンレイ。


「……珍しいな」

軽く声をかけると、フィンレイが振り返り、少しだけ笑う。

「長老様のほうこそ」

シェスヴァフは肩をすくめる。

「散歩だ。いつものな」

風が少しだけ吹く。フィンレイは、どこか落ち着かない。


「……行くのか」

問いは、あまりにも自然だった。フィンレイは、少しだけ驚く。

「……なんで分かるの?」

「顔に出てる」

シェスヴァフは、そう言うと前を向いたまま隣に並ぶ。フィンレイは歩きながら苦笑する。

「そんなに分かりやすい?」

「昔からな」


それ以上、何も言わない。フィンレイが、不思議そうに見る。

「止めないの?」

シェスヴァフは、少しだけ笑う。

「止めたら、やめるのか」

フィンレイは、すぐには答えない。そして、静かに首を振る。

「もう……決めたから」

「だろうな。……見送りはここまでだ」

集落の境界で二人は立ち止まる。フィンレイは、少しだけ寂しそうに笑う。

「……お父さんをよろしく。まだ、子離れできてないみたいだから」

「……わかっている」


「じゃあね」

フィンレイは振り返らず、そのまま歩き出す。ミスダクの集落へ向かって。

シェスヴァフは、呼び止めない。ただ、見ている。やがて、姿が見えなくなる。



今、改めてシェスヴァフは思う。

「守れるものは、守らねばならない」


クーラマフが長老になった頃、何度も声をかけられた。一緒に長老になれと。断った。自分は長老などになっていいエルフではない。そう思ったからだ。


――決して許されることのない罪。ただ、それを背負っていくことだけを考えていた。

アナムから取り出した瞬間、崩れるように消えたあの魂が頭から離れない。

だが、あの一言で考えを変えた。


――「長老という立場だからこそ、守れるものもあるはずだ」


シェスヴァフは静かに目を閉じる。

確かにそうだ。統治者とは、集落の全てを守るもの。それこそ、自分が集落に返せること。

クーラマフは集落を変えようとしていた。長老一人が慣例だったのに、三人での統治にした。何が悪かったのか、何があの悲劇を引き起こしてしまったのか。考えながら進もうとする彼を支えていくことを決めた。


自分は、もう“父親”ではない。だが――この集落に生きるすべてのエルフを守っていく。

異変に巻き込まれているであろうフィンレイも。その異変に向かっているシェリエールも。


長老として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ