第8章2 滝のように落ちる世界
「ご説明いたします」
クロードは四角い箱をテーブルの上に乗せ、彼自身の魔法カードをそれにかざした。
空間に光の文字が現れる。世界分散~ワールド~と書かれ、概要が示されている。
まるでパソコンで見る、証券会社の画面のようだ。
「こちらが今の値です」
彼が手のひらをかざして振るような動作をすると、文字が変わった。
この商業ギルド、農業、工房、運輸、各貴族の領地などへの投資、
また王都ラディアやアルティアの国の機関、この大陸各国の様々な産業の数値が並んでいる。
「……そして、これが値動きです」
一瞬、見せてもいいものかとチラリとこちらを見て様子をうかがう。
しかし次の瞬間、グラフに切り替わった。
私は息を飲んだ。
長く伸びる線が、まるで滝のように落ちている。
ナイアガラのごとく、ほぼ全てが一直線に!
「多くの人々がこの事態に対処するため、お金に換えました。オルグレンの穀物への打撃に引きずられ、他の産業にも影響が及んでいます」
クロードは短く息を吸い、真剣な眼差しで言った。
「……恐ろしい状況です。ですが……今なら、未来を選び取ることができます」
そこにあったのは、商人の顔だ。迷いの色は微塵もなかった。
彼が魔法を放った瞬間のように、空気が凍った。
胸が締めつけられる。怖くて呼吸ができない。
暗黒の海に体が沈んでいく。
圧力に潰され、もう二度と浮き上がることはないかもしれない。
ふと、かつて積み立てていたもののように、また私の手から零れ落ちてしまう気がした。
でも――信じたい。私が作ったこの、『世界』を。
「わかりました」
私は足の鎖を断ち切るように言い切った。
手の中の真珠が喘いでいる。
それと同時に、私の心臓も早鐘のように打ち鳴らされていた。
私は、逃げない。もう後悔しない。
ここで生きていくために。
震える声で、でもはっきりと言葉にした。
「これを換金して、世界分散~ワールド~に投資します」
そう言って、真珠を糸から引き抜いて、クロードが差し出した箱の中にバラバラと入れた。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
よろしければ、続きを読んでいただけると嬉しいです。




