第7章1 街の祈り
翌朝、いてもたってもいられなくなって、私は街にやってきた。
冒険者ギルドの前には、鎧を身にまとった冒険者たちが大勢集まっている。
「ケイン!」
知り合いの顔を見つけて声を掛ける。彼も、オルグレン魔物討伐の一員なのだろう。
「かおり、見送りに来てくれたのか」
「ええ、大変なことになったわね」
普段彼がどのような仕事をしているのかはよく知らない。
けれど街を守ってくれる英雄だ。
「まぁな。なんとか、殲滅できりゃいいんだが」
「そんなに強いの? オルグレンに出た魔物って」
噂ばかりで正体がわからない。
恐ろしいドラゴンなのか、それとも神々しい火の神なのか。
「火トカゲが、大量発生したようだ」
「えっ?」
具体的な名前は初めて聞いた。
討伐のために、冒険者ギルドが正確な情報を集めて対策を練ったのだろう。
「水や氷が効くんだが、魔法の使える騎士団ならともかく、俺たち冒険者には少々荷が重い相手だぜ」
彼は剣士だ。
火の魔物に対して、剣での接近戦は危険過ぎるのだろう。
火の魔物――。
瞬時にマッチを水に落とした時の、ジュッという音が頭に響く。
水で押し流してしまうのはどうか。
あるいは燃えるものを――酸素を絶ってしまうのは。
しかしこの世界には、消防車も泡消火の方法もない。
「これ……お弁当に食べてください」
項垂れてばかりではいられないと、朝ダンが焼いたばかりのパンをケインの手に押しつける。
「助かる。ありがとう」
そう言って彼は移動を始めた人の波に消えていった。
「火トカゲ……」
得体の知れない恐怖が渦を巻いている。
騎士団がオルグレンに向かった。冒険者も後を追うように出発する。
私は何も答えが出せないまま、彼らの無事を祈ることしかできなかった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
よろしければ、続きを読んでいただけると嬉しいです。




