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第42話 ラスボス


 目の前にいるのは、見るからに異形。

 潰れた両目、顔半分を覆い尽くす口。

 体はひん曲がり、腕は長く4本生えている。まるで球体関節人形のような腕になっている。

   

 「う、う、わた、わたしおねえちゃあああん」

 

 「おい、呪い。そりゃなんだ? 飛澤のことか?」

  

 「舐めるなよ、今からお前を倒す」

 

 「うおりゃああ」

 

 まずは一発顔面に。


 ドゴンッ!


 もう一発も顔面に拳をねじ込め。 

 魂で殴るんだ。


 ドカッ! ドンッ!


 呪いはそれでも笑い続けている。

 殴った。確かに食らわせたはずだ。

 でもなんだ、この手応えの無さは?

 

 「う、おえええーーーー」

 

 なんだこの吐き気は。

 呪いか? これも。


 「おい……シオン、呪いはどうやって倒すんだよ」

 

 「知らぬ。わしも呪いの類など戦った事ないな」

 

 「マジ……う……かよ、攻撃が喰らわねえよ」

 

 吐き気が止まらない。

 息もし辛い。

 不死身でも呪いに近づけばこのままじゃ。

 

 「呪いには呪いか」

 

 「よかろう、お前様そこで待っておれ」

 

 シオンの周りに銀色の炎が発炎した。

 シオン曰く昔平安の都を焼いた呪いの炎。

 

 「さあ、呪いよ、わしの千年の呪い。悪魔、吸血鬼、鬼、キュウビの狐、世界で様々な名を冠したわしの呪いの炎、これも耐えれるか?」

 

 ドゴーンッ!

 

 あっつ。ここまで炎が届いたよ。 

 

 ジュウウウ

 

 「あ、あ、熱いい。おねえええちゃああちゃん」

  

 「わしもここまで弱体化したのか」

 

 「シオン、倒せないか? でも確実に効いている」

 

 一瞬、あの導魔を炎で焼いたためか吐き気が止まった。

 

 「そうじゃな、わしも一つの呪いのようなものじゃ。じゃが、削りきれん。このままじゃもう、あの娘は間に合わんぞ」

 

 

 「俺がカバーに入る。シオンは、あいつに攻撃を続けてくれ。多分、あいつは俺たちを呪い殺す気だ。だから攻撃を仕掛けてこないんだと思う。そこを突くしかない」


 俺は思いっきり地面を蹴り上げた。

 絶対飛澤を助ける。明美さんのためにも。

 そして俺のためにもだ。

 

 「お、おまま、お前きいいらあいい、お前嫌い!!!!!」

  

 呪いの右腕に血黒くなった球ができる。

 

 「ぐらああああ」

 

 ピュコン!!!

 

 炸裂した。

 だが、ダメージはない。

 それでも、呪いとして俺の魂をじっくりと削っているのが分かる。

 

 「お前様、避けるんじゃ!」

 

 大量の水が俺と呪いの上に降ってきた。


 バシャーンッ!

 

 ビリッ! ビリ!


 ドゴーーンッ


 1億V。

 シオンが術式で雷を落とした。

 それを水で威力を増した。

 

 「いってええええ。なんだこれ身体中が痺れる」

 

 だが、これも功を奏した。

 雷が全身に流れたことにより先ほど食らった呪いが弾け飛んだ。

 そして呪いにも確実に効いている。


 「お前様は生きておるのか」

 

 「お前殺す気だったのかよ」

 

 「あまりわしを信用しすぎるなといったじゃろう」

 

  シオンは悪戯が成功した子どものように笑う。


 「なんだよ、その顔。その程度じゃ死なないよ。俺もあいつも」

 

 俺は、黒焦げになりながらも、口の端に溜まった血をペッと吐き捨てた。

 

 まだ、あの呪いしぶといな。

 

 「痛いよー痛いい。おんねえちゃああん!!」

 

 「助けて助けて助けて助けて助けて」

 

 耳が割れるなんだこの音。

 公園の草木が枯れていく。

 呪いの声が届く範囲にあるものが全て枯れていっている。


 ダメだ、もうこれ以上は。

 立てない。

  

 「シオン、大丈夫か?」

 

 「流石のわしでもこれはきついかもしれんのう」 

 

 呪いが大きなビームをチャージしている。

 あの宮島の熊のように。

 

 「ダメだ!!」


 俺は咄嗟にシオンに覆い被る。

 

 「シオン、お前だけは死なせないからな。絶対に」


 「……ダメ、やめて」

 

 飛澤!? フラフラだ。

 

 「飛澤! 離れろ!」

 

 「お前様もわしを庇うな! 逃げろ。先ほど決断したじゃろ」

 

 「うるせ……えよ、俺とお前は運命共同体なんだろ? お前が死ぬ時は一緒だ……。これは逃げでもなんでもない……だろ?」

 

 「私の元に帰ってきて、あなたは私の心よね?」

 

 「もういい、お姉ちゃんはもういい。木場くんを殺さないで」

 

 「もう一度私を呪って。お姉ちゃんを守れなかった私を」

 

 呪いは閃光を中断した。

 飛澤を見つめ、呪いは黒い霧となって飛澤の体へ入っていった。

 

 「飛澤! 大丈夫か?」

 

 「なんで? いきなり俺なんかを」

 

 飛澤は崩れ落ち咳き込みながら涙を流している。

 

 「すまない、飛澤。その……お姉さんのことも」

 

 「明美さんから、言伝がある。えーとお前って下の名前なんだっけ?」

 

 その時。

 

 ピッ!

 

 なんだこの波導!?

 誰だ?

 明らかに異常な波導が公園を包み込んだ。

 俺が無意識で探知できるレベルの。

 

 「やあやあ、いい戦いだったね」

 

 太陽の塔の影から男が出てきた。

 深いフードを被り顔が認識できない。

 

 「あ、あなたは」

 

 「飛澤知ってるのか?」

 

 「彼女に呪いをあげたのは僕さ。木場凪人くん」

 

 なんで、俺の名前を知っている? まさか。


 「お前が組織のやつか」

 

 「うん、そうだね。僕がこの物語のラスボスだよ」

 

 「そして、久しいね。雪」

 

 「ッ!!!!」

 

 なんで、こいつ?

 

 「あら、どうしたんだい。まさか、ご主人様に名前を教えていなかったのかい?」

 

 「違う、なんかうぬ。なぜわしの名前を知っておる? わしも最近まで忘れていた名を」

 

 「うーん、わからないかい? ここまで分かりやすく、波導を出しているのに。これじゃあ無駄じゃないか」

 

 「んーフードは取れないし、取っても意味ないしね」

 

 「あ! そうだ! こう言えばいいかい? ……君はまだ生きたいかい? 氷姫」

 

 『僕はしがない商人さ』

 『君を助けてあげる』

 『レイナ・ゼノ・ハートレー』

 

 「お前はあの時の商人!」

 

 「なぜ生きている?」

 

 「うぬは人間じゃったろ。わしが人間と導魔を見間違えるはずがない」


 「はは、そうだよ。僕は人間だよ。まあ1000年以上生きたものを人間とするのかをどうかだけどね」

 

 「何が目的だよ。シオンを導魔にして、なぜ今になって襲うんだ?」

 

 「必要だからだ。話はもういいや。早く終わらせようか」

 

 「心現」

 

 フードの男の後ろに大きな化身が現れた。

 銀色の髪の毛を編み込み、刀を腰に携えている。

 心現だと……。

 佳紬由さんと円城寺さん以外にも。

 

 「さあって、これで終わらせちゃおうか」

 

 「帰っておいで、シオン」

 

 瞬きをする間もなく、男が目の前に立っていた。

 

 「遅いよ、凪人くん♡」


 ズザアアンッ!

 

 指先一つのデコピンで俺を吹っ飛ばした。


「あぎゃああああっ!!」


 痛い。痛い痛い痛い!

 頭がカチ割れた。

 

 「あ! そうだ、飛澤明美を殺したのも僕だよ。彼女は木場凪人くんを助けるために死んじゃったんだ」

 

 「言うな!」

 

 「そんな……私」

 

 「そんな彼を君はまんまと僕に騙されて。殺そうとしたんだ」

 

 「ふざけるなよ、本当に!」

 

 俺の本気の一撃。

 

 「あれ、なんかした? 音さえしなかったよね?」


 フードの男が俺に腹を蹴って飛ばした。

 

 「カムイ」

 

 ズドンッ!

 

 重力が俺を潰そうとする。

 ふざけるな、こいつ宮家か?


 「はは、やっぱり君じゃシオンの力を使いこなせない。僕が預かるよ彼女は」

 

 「や、めろ。やめてくれ」

 

 「言葉だけじゃ、誰も救えない」

 

 「じゃあ、死んでもらおうか」

 

 化身が波導をため、俺に向かってぶっ飛ばしてきた。

 

 ドゴォォォォォォンッ!!!!

 

 死んでない?

 何が起きた?

 土煙で何も見えない。

 そこにスーツを着ているお時の人が立っていた。

 

 「や! 大丈夫かい、凪人くん。まさか心現をここで拝めるとはね」

 

 円城寺さん! 来てくれたんだ。佳紬由さんが今出張だから。 

 

 「円城寺晃か」

 

 フードの男の顔は見えないが、声は少し嬉しそうにしている。

 

 「でさ、お前何者?」

 

 円城寺さんが鋭い眼光でフードの男を睨みつける。

  

 円城寺さん、さっきの爆破受けたはずなのに服も傷ついてるどこりか埃もついていないぞ。

 

 「さあね、君の倒し方は知っているよ、僕は」

 

 「そう、じゃあやってみてよ。僕を殺してみて」

 

 「じゃあ僕も出し惜しみせず行こうか」

 

 「心現」

 

 円城寺さんの後ろに大きな化身が現れる。

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