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【書籍化】小悪魔ベリルの文明開花! 赤ちゃん転生したギャルJK、現代知識とデタラメ魔法で今日も大人を振りまわす  作者: 枝垂みかん
第七章

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めっちゃサスチナブル⑤


 ノウロの定宿——


「あ、あの……。どういったご用件なのでしょうか?」


 スゲェ勢いで押しかけた俺らに、ノウロは目を白黒させてる。

 かくいう俺も、ベリルのただならぬ雰囲気に流されて慌てるだけ慌ててはみたが……、実際んところどれほどの数の紙が足んなくなるのかは、まるで把握できてねぇ。


 しかしノウロは違う。さすがは商人だけあって、


「王様が国営の印刷所やってくれるってー。んでね、印刷マッシーンとか活字のおカネはもらわない代わりに——」

「まさか紙を一手に納める約束をされたと⁉︎」


 一を聞いて十を知る。


「よくわかったねワル商人。そのまさかだし」


 こうベリルが言い切ると同時に、ノウロは膝からガックリ崩れ落ちる。一瞬見えた顔は白目剥いてた。


「ちょちょちょ! アンタ寝てる場合じゃねーし」

「うゔぅ……。これが夢ならどんなによかったことか」

「現実逃避してる場合でもなくなーい」

「小悪魔会長……。どうするおつもりなのですか。ざっと頭のなかで試算した限りですら、いまの十倍は生産しないと足りないかと」

「へひひ〜」

「——褒めていません!」


 いつもは頷くしかせんノウロが、かなり本気でベリルに詰めよってやがる。どうも事態はそんだけヤベェってことらしい。


「作る数を増やせばいい話だろ」

「トルトゥーガ様! 簡単に仰りますがね、いまでも秘密裏に動ける範囲で、最大限効率的に紙作りをしているのですよ。当然、分担作業や魔導歯車の導入も進めたうえでの話でっ」

「お、おう。そうか……」


 見たことねぇ剣幕だぜ。


「ひひっ。父ちゃんキレられてっし」

「小悪魔会長も笑いごとでは済まされません!」

「は、はーい。さーせーん」


「「「……………………」」」


 そして、とうとう三人とも沈黙。

 この気まずい空気を破ったのは、意外なことに俺だった。出せるだけため息をこぼしちまえば、次善の策は案外浮かぶってもんだ。


「こうなったらタイタニオ殿を頼るより他あるめぇ」

「父ちゃんってば人任せだし〜」


 テメェにだけは言われたくねぇ。


「ベリル。オメェは目一杯新聞の発行を引き延ばせ。じゃんじゃか閃きをぶち込んで、なんとしてでも第一号を遅らせるんだ」

「おおーう。そーゆーのあーし得意かも」


 自覚はあったんだな。引っ掻きまわすのを得手にしてるってより生き様そのものが、それだろ。


「そうと決まりゃあ、タイタニオ殿との面会の約束を取り付けねぇと」

「私が尋ねてきましょう。直ちに具体的な話に入れるよう、話のあらましの伝えてまいります」


 いちいち言わんでも、八割方タイタニオ殿なら把握してそうだけどな。



 珍しく親子並んで机に向かってる。

 俺はヒスイに『帰りが遅くなる』っつう旨の手紙を、ベリルは思いつく限りの新聞の閃きをまとめていく。


「父ちゃーん。いちおーママにメッセ返しといたから」


 メッセ? ああ、例の数字四文字をやり取りする魔法だったな。

 たしかヒスイからしか発信できん魔法って話だったはず。つうことは、帰りを聞いてきたのか。


「なんて返したんだい?」

「『〇四』って」


 〇四、れーよん……オシ……ああ、押しか。予定が押したってことだな。

 ヒスイもベリルが王都に顔出す以上は、こうなるのは想定済みだろう。だってコイツの母ちゃんなんだからよ。

 いらん心配をかけんで済むっつうのは、それはそれで便利なのかもしれん。


「細かいとこは手紙で補足しておく」

「ほーい」


 ついでに印刷マッシーンの現物をこっちによこすようにも伝えておかねば。


「あっ! 父ちゃん父ちゃん」

「なんだ?」

「王都まで運んでもらう印刷マッシーンは、一台だけでいーかんね。で、使ってもらった感想聞いたりしてあちこち直すし」

「ほぉう。そうやって時間を稼ぐか」

「ひひっ。せーかーい」


 コイツ……。新聞を刷るっつう話してるときより、話を遅らせる悪巧みしてるときの方が活き活きしてるんじゃねぇか。

 根性捩じくれた娘はどんなムチャを綴ってんのかと手元を覗き込んだ。が、


「見ちゃヤッ」


 隠された。


「いいだろ見るくれぇ」

「ダーメっ」


 なぁんか怪しい。俺の本能がガンガン警鐘を鳴らしてやがる。

 強引に取りあげるより、この場合は——


「まさかヒスイが書いたやつ載せるつもりじゃねぇだろうな」


 適当にカマかけして隙をつくるに限るぜ。

 だが————


「おおーう。なんでわかったーん」


 一番あり得んと思って言ったことが、当たっちまった。


「連載しよーと思っててー」


 ついでに追い討ちまで。


「待てまてまて、待て。待てやベリル」

「待て多いし」

「うるせぇ。そもそもヒスイは他の者には見せんと言ってたろうが」

「だから」


 だから⁇ なにがだからだ?


「めちゃノリ気で進めてってもらうじゃーん。でー、あーしが『いっけねー。そーいやママに許可とってなかったし』ってぶっ込むわけー。したら——」

「そこまで予定組んできた紙面が台無しってか」

「大せーかーい!」


 ……あ、悪辣すぎる。

 ヒスイに文句は言えんだろう。となるとギリギリまで伏せといての白紙っつうことに。

 そりゃああんまりだろ。担当してた連中が不憫すぎるぜ。


「引き伸ばせとは言った。だがなベリル、ムダ骨折らせんのは違うんじゃねぇか。せめて書き手を公募するなりなんなりして時を稼げや。なっ」

「いーじゃんいーじゃん、第一回連載小説コンテスト! めっちゃ面白そーだしっ。それに〜、王都限定でやったとしても公募とが審査でけっこー時間かかりそーだし〜」


 俺が適当こいたことではあるけど、けど大丈夫か? こんどは右大臣殿が考えてる規模で、人員が足りるかが不安になってきたんだが。


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