Ω-オメガ-
※こちらは、一般人による完全オリジナルシリーズです。
文脈がおかしい部分もあるかと思います。ご了承いただける方のみ、この世界をお楽しみください。
それでは、行こう、観測者。
蒼穹の空を、ともに見届けて欲しい。
──現刻 夏 午前11:26。
地上、北東・オリオラグナ半島。
霧桜「バフエリア、展開!」
ヴン…!
唸るような起動音。
地に突き刺した大剣から青い光が辺りへ一気に広がっていく。
リト「きたきたきたァ!バフエリア!!」
ノエ「遊んでる余裕ないですよ。」
フィールドを閃光のように飛び回る戦翼と、
それをドローンで追いながら的確な援護をこなすハッカー。
戦場には素早く動き回る小型エネミーが3機。
リト「ノエ!スピード上げんぞ!」
ノエ「了解。まだまだ余裕ですよ。」
支援兵「ノエさん、背中は任せてください!」
戦闘兵「援護射撃!入ります!!」
リト「おう!俺を気にせず撃っちまっていいぜ!!」
目まぐるしく戦場を駆け抜ける姿で、陽気な声が通信機に入る。
戦闘兵「え、えぇ!?」困惑。
ノエ「あー、本当に気にしなくて大丈夫ですよー。リトさんなら弾道ひとつ躱せられるので。」
間。
戦闘兵/支援兵「えぇ…。」
リト「引いてねぇか!?」
霧桜「リト、目標を指定ポイントまでもう少しだ。そこで確実に撃破する。射撃用意を。」
戦闘兵「はい!指揮官!」ジャキッ!
リト「行くぜー?ノエ、遅れんなよ!」
ノエ「当然。いつでも。」
リトの口元が弧を描く。
足を勢いよく踏みしめた。
刹那、
ドッ!!!
と地面を蹴り、人技では成せないほどのスピードでエネミーへ距離を詰める。
その斜め後ろ、3mの距離を一定に飛行するドローンが2機。
ホログラムウィンドウをしなやかに滑らせ、蒼穹が誇る戦翼の動きに合わせた最適な支援を涼しい顔でやってのける。
通信機に冷静な声が入り、霧桜へ合図が送られる。
ノエ「カウント開始。目標地点到達まで、3…2…1…」
霧桜「…ハイヤ!」
戦闘兵「!!」
霧桜の合図に合わせ、カチッ!と目標ポイントへトリガーを引く。
ドン!!!
銃弾が鋭く撃ち放たれる。
真っ直ぐな弾道は目標へ確実に伸びていく。
そこへ戦翼の影、それから逃げる数メートル先のエネミー。
目標ポイントへ駆け抜け、その身体が重なった。
ギィィィン!!!!
鋭い弾丸がエネミーの装甲部位を貫く。
エネミーの身体が粒となり、形が崩れて消えていった。
戦闘兵「命中!目標の撃破を確認!!」
リト「やるじゃねぇか!!この調子であと2機行くぞ!!」
ノエ「エネミーの位置を特定。…へぇ、この位置は…。」
右と左、2手に分かれた位置。
霧桜「目標ポイントを指定。前衛はそれぞれポイントまで誘導を。ノエ、双方の同時援護を頼む。」
霧桜の指示に、支援兵がぎょっと目を丸くした。
支援兵「りょ、両側の同時援護!?指揮官!いくらノエさんでもドローンの操作に遅れが出ます!!私も援護に…!!」
ノエ「あー、心配しなくていいですよー。僕、援護は一人でやる方が楽なので。」
支援兵「そ、そういう問題じゃっ!?」
霧桜「ノエの支援技術なら、2人同時でも問題はない。君には、ノエの支援を頼みたい。」
通信を支援兵個人に切り替える。
霧桜「すまない。本人の意向で、彼には全ての援護を任せているんだ。それだけの実力は備わっていると僕が保障する。どうか引いてやってくれないか。」
支援兵「…わ、かりました…。」
霧桜「…よし、ノエ。」
ノエの口がにやりと上がった。
ノエ「了解。双方、援護射撃体勢に移ります。」
ホログラムウィンドウがもう1つ開き、それぞれのドローンが2機ずつ、リトと戦闘兵の元へ飛んでいった。
支援兵「そ、それぞれに2機!?」
ノエ「やりがいはあった方がいいので。」
支援兵「理由になってない!!!」
リト「スピード合わせんぞ!!焦らず確実に追い込め!!」
戦闘兵「了解!!」
霧桜「総員、行動──」
全員「──開始!!」
昼下がり。
作戦は無事に完遂し、軍基地へ帰投した。
お疲れさんっ!とリトが戦闘兵の背中を叩いてにかっと笑う。
おっとっと…と勢いでよろけた戦闘兵の表情は、誇らしさと暖かさで綻んでいた。
支援兵はノエに質問攻めだった。
どうやったら正確な援護を戦翼にも追いつけるほど瞬時にこなせるのか。
どうやったら広範囲の援護を同時に行えるのか、複数のドローン操作を行えるのか…。
メモ帳片手にノエの後ろにぴったりついている。
ノエはというと、その執着心ならいつか出来ますよ…とげっそりしながら答えている。
霧桜は指揮官室へ戻り、上層部へ報告を済ませた後、食堂へ向かった。
通路の途中、
リト「おっ、指揮官!報告終わりか?」
手をヒラヒラと振るリトの姿。
霧桜「ああ。ひと段落した所だ。」
リト「お疲れ。これから飯だろ?一緒に行こうぜ。」
その言葉にふっと微笑んで、肩を並べて歩き出した。
通路に響くのは、2つの靴音と昼のざわめき。
リト「指揮官の仕事ってマジで多いよなぁ…。すげぇよ、俺なら絶対無理。頭パンクしちまうぜ。」
霧桜「そういえば、通常業務は苦手だと言っていたな。 」
リト「ああ。あれは領分じゃねぇよ。俺が戦闘部門を選んだ理由の1つでもある。」
指を立てて自慢げに言うリトに、思わずくすっ、と笑った。
近づくにつれ漂ってくる食堂の匂い。
自動扉が開き、ふわりと賑やかで暖かな空気に包まれた。
リト「はぁ〜、腹減った!席埋まる前に早く行こうぜ。」
列に並び、メニューに目を通す。
注文をしてブザーを受け取り、空いている席へ座った。
向かい合って座るリトは、机に片肘をついて、フードの影から霧桜を眺める。
少しした時、口を開いた。
リト「…なんかさぁ。指揮官って不思議だよな。」
霧桜「僕が…不思議?」
少し首を傾げる霧桜にへらっと笑って続ける。
リト「だってよ、俺ら同じ部隊とはいえさ、顔合わせて少ししか経ってねぇじゃん?けどさぁ…」
背もたれに寄りかかった。
リト「総指揮官って文字だけだとさ、なんか、偉い人って感じがして落ち着かねぇんだ。でも、あんたの傍、気まずくないってか…むしろ居心地いいんだよなぁ。」
その言葉に、思わず口が緩んだ。
口元に手を当ててこほんと咳払いし、リトに向き直る。
霧桜「君がそう言うなんて…最初の頃じゃ考えられないな。」
リト「…あー、俺だってそう思うよ。」
初めて顔を合わせたのは、3ヶ月前。
正式にΩ(オメガ)•ノワールという部隊が結成され、新たな風が吹き抜ける春だった。
──────────
春。
蒼穹が新たな1歩を踏み出す季節。
霧桜「……僕が…総指揮官…か…。」
正式に総指揮官となり、蒼穹に栄光をもたらす新たな部隊を率いて、今日も蒼穹軍は進んで行く。
晴れ舞台で堂々と皆の前にて儀礼が行われ、
A・ロア、
Λ(ラムダ)・エトワール、
Σ(シグマ)・レギオン、
Δ(デルタ)•オーディン、
そして、Ω(オメガ)•ノワールが正式に結成された。
蒼穹軍基地 ブリーフィングルーム。
霧桜「Ω(オメガ)•ノワール部隊、総指揮官に任命された、霧桜という。よろしく頼む。」
皆の前で名乗る。
…少し緊張するが、総指揮官として堂々と。
皆の顔を見る。
霧桜「──今後の部隊での業務説明をする前に、少し僕の話に耳を傾けてくれないか。」
霧桜「…まず、他部隊の総勢は約150名を超える。」
「それに対して、Ω(オメガ)•ノワールの部隊員は総勢、80名だ。」
ここにいる誰もが疑問に思うこの人数差。霧桜は続けて話し始める。
「何故、このような少数の部隊なのか。」
「…その理由は、ここにいる全員が、ひとまとまりで戦う者達ではないからだ。」
"特異部隊、Ω(オメガ)•ノワール。"
その部隊員全員が、息を呑んで耳を傾ける。
「この部隊の理念は、輪廻に抗う調律者。略号は、『ON:R.A.T』。」
「輪廻に抗うとは、今ある蒼穹が、また同じ道を辿らない、という意味が込められている。」
皆の顔を見て、続ける。
「僕たちの部隊は、核能力にも戦闘にもバラバラな形を持つ。それぞれの能力で、役割で、方向で戦う。」
「光のように真っ直ぐな部隊ではない、外から壁を打ち破る存在。僕はそれを、影と呼んだ。」
「過去の失敗、崩壊、犠牲。それによる今の状況に、確たる終止符を打つ為に。」
胸の前に拳を当て、迷いのない声で
「我々が新たな方向から光の道を切り開き、より濃い影となって、表に立つ蒼穹に栄光を取り戻す。…そういう意味を持っている。」
真っ直ぐと全員を見つめる。
霧桜「ここで問おう。Ω(オメガ)•ノワールとして、蒼穹の影として、僕と共に歩く意思はあるか。」
ブリーフィングルームに響く総指揮官の声。
静まったその室内で、霧桜は、笑みを浮かべて口を開く。
霧桜「…なら、僕を超えてでも、蒼穹の眩い光をもたらす影になる自信はあるか?」
全員が、目を見開いた。
霧桜「君たちの声を、聞かせて欲しい。そして、君たちの力を、僕に、蒼穹に見せて欲しい。」
ブリーフィングは終了し、通路を歩く霧桜の背中。
今の彼には堂々とした総指揮官としての姿勢と、決意を宿した真っ直ぐな瞳があった。
そして、Ω(オメガ)•ノワールは確かにここに、それぞれの想いを持って産まれた。




