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使徒と遊戯のラグナロク  作者: 愚者
一章 混沌とする福山

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二幕 幸と仁義 その玖

 遊蓮はココアを二人分運んで来ると、紫苑の隣へと腰を掛けた。


「改めて自己紹介でもしようか?僕は小鳥遊 遊蓮、神ロキから権能を与えられた《プレイヤー》だ」


 あえて自分に権能を与えた神の名を出す。その狙いは、紫苑にも権能を与えた神を聞こうという算段だ。

 神の与える権能はその神に由来するモノなのだというのが遊蓮の考えだ。

 ロキは悪戯の神と言われており、裏切り者としての一面を持つ。

 《遊戯シュピール》は、物に命令を組み込んで自分の好きなように動かすことが可能だ。名前や能力からロキとは深い関係性があるようにも思える。


「私は望月 紫苑。神ニュクスから権能を与えられた《プレイヤー》」


 ニュクス。それは、カオスから生まれた原初の夜の女神だ。

 そこから連想できる能力は何かというのを、遊蓮は考える。

 夜―暗闇、日の沈み、怪異。


 ―何かが違う。

 ―あの時はどうだった?

 ―いつの間にか消えていて、気が付けば刺されていた。

 ―存在がなくなっていた?

 ―...

 ―闇の中に身を隠す、とかか

 ―けれど何か条件があるはずだ。

 ―あぁ、分からん


 考えてもこれという答えが出てこないため、思考をやめて紫苑の方を見る。

 少し黙りこくっていたためか紫苑は不思議そうな顔をする。


「あぁ、ごめん。ニュクスって聞いたことある神だと思ってさ」

「詳しいんだね。私最初に聞いた時はよくわからなかったのに」

「まぁ、今時神話なんて興味がなければ知らないだろうからね」


 遊蓮は確かにこの《遊戯ゲーム》が始まる前から神話について多少は知っていた。しかしながら《遊戯ゲーム》が始まってからは、この《遊戯ゲーム》と神話が関係があるのだろうと暇な時間は調べたりしていた。そのため人一倍、神話についての知識がある。


「今日はカップ麺でも食べて寝ようか」


 そう言うと遊蓮は立ち上がり、お湯を沸かしてカップ麺にそのお湯を注いで、それを紫苑の座るソファーの前のテーブルに置いた。


「これからの生活で伝えておきたいこととかある?」

「...特にない、かな」

「本当か?家族の事とか...」

「...」


 紫苑は苦しそうな表情をして体を震わせる。

 そんな姿を見て遊蓮は紫苑の肩を引き寄せて、自分の肩へと重心を預けさせた。


「大丈夫だ。どんなことになったとしても俺がお前を守る」


 紫苑は心なしか嬉しそうに頬を紅色に染めて、重心を自ら遊蓮へと傾ける。

 カップラーメンからは湯気がもくもくと立ち上がる。

 ラーメンが食べられるようになるまで、紫苑は遊蓮の肩にただずっと頭を乗せていた。

 食べ終わった後、紫苑を二階へと連れて上がり、使っていない客室へと案内して、その部屋を使うように紫苑に伝えて遊蓮も自分の部屋で眠りについた。


――――


『おぉい、おーい、おい、おいってば』


 暗い視界の中、聞き覚えのある男の声が聞こえる。ゆっくり瞼を開くと、やはり見覚えのある男がこちらを覗き込んでいた。


『あぁ、やっと起きてくれましたかぁ。いやぁ、寝すぎですよぉ。遊蓮くーん』


 相変わらずふざけたような口調で、それでいてあざ笑うように口元を三日月形へと歪める。

 絡めるような視線が全てを見透かされているような感覚を遊蓮に植え付ける。

 しかしながらそれを悟られまいと、強きで言葉を返す。


「お久しぶりですね、神ロキ。今宵はどういたされました?」

『いやぁ、何。君さ...ふざけてんじゃねぇよ』


 おちゃらけた口調から、ドスのきいた声へと変化していた。

 その変化に驚きを隠せず、遊蓮は恐怖を隠せなかった。


『オイオイ、そんな怯えんなって。俺はよぉ、ただ聞きてぇだけなんだよ』

「何をです?」

『君さ、ゲームマスターにしては怠惰だよな。もっとさぁ、引っ掻き回せよ。この《遊戯ゲーム》をよぉ!』 


 まるでステージの上の役者のように声を張り、大げさなほどに身振り手振りをつける。

 威圧的な表情を少し緩め、いつもの悪だくみをするような不気味で歪な笑みを向ける。


『まぁ、実際の所は難しいと思うぜぇ。まぁ権能的にはできなくはないが、特に優位性があるわけじゃあねぇしなぁ。だから、君には今からゲームマスターらしい事をしてもらおー』

「何をすればいいんです?」

『ゲームを仕掛けてもらおう。景品は願いを叶える槍についてのヒントだ』


 ロキはにぃっと更に口を歪める。


『さぁ、何か案はあるか?タイムリミットはこの夢が明けるまでだ』


 ―願いを叶える槍のヒント...それはぜひとも欲しい。

 ―しかしながらゲームマスターである僕がどう手に入れる。

 ―それが分かっている上で、あの笑みをこぼしたのか。

 ―つくづく食えない神め。

 ―しかしながらこれはチャンスだ。

 ―どこかに集める形にしたら、知らない奴の顔も拝めるチャンスだ。

 ―だがどうやって認識する?

 ―他の奴らもバレない様にするだろう。

 ―何か共通する行動で見分けがつくモノ。

 ―そうだ、何かを探す。

 ―探す物はヒントとして、何処で探すか...

 ―広くなく、狭すぎず

 ―天満屋とかいいか

 ―探していたら何度もすれ違うだろうし、その間探している奴は怪しい。


『決まったようだな』

「えぇ、天満屋で槍のヒントを探す」

『ほう、なるほど...ちなみにその中のどこに隠すかは俺らが決めるぞ』

「...え?」


 ゲームマスターと言いつつも限りなくプレイヤーに近い。神が人狼とするならば、ゲームマスターは狂人だ。

 

『隠し場所を君が決めてしまったら、それはもう君の物だろう』


 それを言われて遊蓮は何も言えなくなる。実際その通りだからだ。話してはいけない動いてはいけないと言われても伝える方法はどうとでもなる。

 それならばプレイヤーと同じく参加させた方がいいという話だ。

 

『じゃあそれで行こー。あぁあと、キミラノスマホに勝手にアプリを入れた。夢から覚めたらそれを見るといい』


 そう言ってロキは姿を消し、今いる夢の空間は揺らいで霧散していった。

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