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使徒と遊戯のラグナロク  作者: 愚者
プロローグ その壱

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2/15

プロローグ―正義の剣―

正義


 正義と言われて多くの人が最初に思いつくものは、おおよそ子供向けの戦隊ものや陳腐な主人公だろう。

 警察という単語は第一に出ては来ない。

 出てくる人も、完全な正義とは言えないという結論に至る。この結論に至れない者は社会をよく知らないだけだ。


 だが、この福山の街には正義とは何か警察とは何かを知っていながら、正義と問われれば警察と即答できる男がいる。

 男は警察を正義だと信じて、悪とつながりのある上官を殴り怒鳴り上げた。

 そのことによって男は、この福山の街へと左遷されたのだ。

 けれども男は後悔などというモノは一切抱いてはいなかった。正義の警察として悪を殴っただけだと、彼の中では自分を正義のヒーローに仕立て上げていたからだ。

 それに福山の街には暴力団が多いいというではないか!そんなもの、男にとっては格好の的である。自分の正義を執行して、正義のヒーローに仕立て上げるには最高の場所だった。

 警察として暴力団が多くあるということを喜ぶのは、正義としていささかどうかと思うだろうが、男の中ではそんなことは考えられていなかった。

 自分が正義のヒーローになる軌跡を妄想するだけで大忙しだったからだ。

 狂っている。そう言われれば実際そうなのだろう。

 子供向けの陳腐なヒーローに憧れ続ける三十代のおっさん刑事。そう聞くと幼稚に思えてしまうかもしれないが、その年までに警察の汚いところも多くみて来ただろうに、それでもなお警察に完璧な正義を求め続ける彼は、確かに正義に狂っていると言えるのだろう。

 その正義に狂った刑事の名は、風間 宗一郎。


 宗一郎は駅前の商店街を歩いていたところ、横を走り去る男を見た。


 ―元気のいい大人だ


 ただその時は呑気にそんなことを考えていたのだが、よくよく考えてみるとその顔には見覚えがあった。

 どこで見たんだかと思い出していると、周りは騒然と騒ぎ出していた。


「ねぇ、あの顔見た!?あれって指名手配犯の...」

「だよね、私もそう思った」

「写真撮っとけばよかったー」

「こわいわねぇ」

「なぁ、誰かを殺してきたところかな」

「警察こねぇな」

「あぁ、そうだ!警察に連絡しないと」


 等などとその場にいた住民からは、様々な言葉が放たれていく。


 ―あぁ、あれがか


 宗一郎とてその噂は聞いていた。この街に現れ始めた無差別殺人鬼について。

 最初の被害者は三十代主婦だった。

 本庄の住宅地で大量の血を流して倒れているところを下校中の小学生が見つけた。買い物からの帰り道に何度も必要以上に刺されたらしい。


 二人目の被害者は薬の受け渡し人だった。

 駅から少し外れた人目のない場所で倒れているところをホームレスの中年男性が発見した。病院に搬送されたのだが、何度も蹴られ殴られて内臓が傷ついていたらしく、病院についてすぐ死亡が確認された。


 三人目の被害者は男子高校生だった。

 学校をさぼって昼間に駅前をうろついていたところ、釣り人前で刺された。駅前ならば人も多くいるのではと思うだろうが、そんなことを気にはしなかった。いや、気にすることができなかったというのが正しいのだろう。

 誰もそんな人に近づくことができずにその場から逃げて警察に通報されたのだが、警察が来た頃には男子高校生の死体しか残っていなかった。


 警察の事情聴取の結果、犯人の身長や体つき、顔などの情報を得ることができた。

 ただ、これらの情報を与えられただけじゃあ、犯人が同一人物だってことは分からないだろう。精々、全部が駅前周辺の地域で起こっていることだけだ。本庄は少し離れているが。


 被害者の服に付着していた髪の毛を調べた所、それぞれの被害者に付着していた髪の毛が共通のDNAを持っていたため、共通の犯人として扱われた。

 そして驚くべきはそこだけではない。その髪の毛には薬物をやっている痕跡があったのだ。

 つまり、この犯罪者は薬物をやっていることによって、気が狂い三人もの人間を殺したのだ。


 ここまで分かっているのならすぐにでも犯人を捕まえれるとでも思うのだろうが、そう簡単でもなかった。

 犯人の足取りが途絶えるのだ。これが、防犯カメラの少ない障害だ。

 けれども、度々防犯カメラに映るのを見るに本庄の辺りに住んでいるということだけは分かっていたのだが、それ以上は分からなかったのだ。

 本庄には警察が張っていたはずなのだが...今、駅前の商店街にいるのだ。


 宗一郎はそのことを思い出すと、正義を執行するために逃げる男の跡を追いかけた。

 ただの薬物中毒者と身体を鍛えた刑事では、刑事の方が速いに決まっている。

 男に追いつくのにそこまでの時間は要さなかった。

 男は宗一郎に追いつかれそうになると、そのあたりにいた主婦を人質にとったのだ。


「ヒッ!......た、助けて...」


 主婦は顔を青ざめさせ涙を零しながら、声を振り絞る


 ―クソ!予想はしていたが...来てんだから、逃げろよ!


 この状況に宗一郎は悪態を吐き、次の行動を考えていた。

 主婦に怪我をさせずに男を捕まえる方法を。


「おぉい!!分かってるよなぁあぁあぁ?それ以上近づけばこの女を刺す。一分以内にそこの柵とお前の腕を手錠で繋げぇ!!」


 薬物をやっていながら意外と脳は回るらしい。手と柵を繋ぐのは、これから宗一郎に追いかけられないようにするためだろう。

 それも一分の制限時間付きだ。これを行わなかった場合、相手がどういう行動に出るかわからない。

 その時、宗一郎は何かにささやきかけられた気がした。貴様は正義か?と。

 宗一郎は辺りを見回したが周りに人はいない。いるのは安全な位置から見る野次馬だけだ。

 自分は正義の者だと自称する宗一郎にとって、自分が正義かと問われるのは不思議でならない。

 

「おい!早くしろ!!じゃねぇとこの女の目ぇ潰すぞ!!」


 宗一郎はその怒り狂う呂律の回っていない言葉に従うしかないようだった。

 いかにも限界の状態。もし従えば、彼は逃げるだろう。それだけではなく、宗一郎の安全も彼女の安全もないだろう。

 しかしながら、この状況で従う以外の道はなかった。なかったはずだ。


 ―貴様の心に正義はあるか?


 また聞こえる謎の囁き。少し不思議に思えど宗一郎の答えはいう魔でもなく決まっていた。


 ―私は正義の執行者だ!

 ―弱者を救うか?

 ―私が救う者は、私の正義によって決める。そこに強者も弱者もない。

 ―この状況を変化させる絶対的正義の力が欲しいか?

 ―そりゃ、この状況を打破する力がもらえるなら欲しいさ。それに限らず、正義の力ならなおの事。

 ―気に入った、貴様に私の権能を授けよう。名を【言霊フルーフヴェアター】。


 その囁きが聞こえなくなるとほぼ同時に、男の脳内には多くの情報がつぎ込まれていった。

 その情報の処理に精一杯で、宗一郎はその場に立ち止まり頭を手で覆った。


「何やってんだ!早く進め!!...あぁ、分かった。この女の目は貫く」


 その行動が男の怒りに油を注いだのか、怒鳴り散らしながら主婦の左目にナイフをゆっくりと、恐怖を味わわせるように近づけていった。


「いや、いや、いやぁぁぁぁぁ!!やめて、やめて」


 主婦の顔はどんどんぐちゃぐちゃに絶望に歪んでいく。

 ナイフが主婦の左目に刺さる寸前、宗一郎は言葉を放った。


「《やめろ》」


 すると、ナイフが主婦の左目から離れていく。

 男も主婦も何が起こっているのか全くもって分からないようだった。


「お、俺の腕が勝手に!!」

「《離せ》」


 宗一郎の言葉通り、今度は男の手が主婦から離れていった。

 それを見ると宗一郎は男に向かって駆け出し、男のみぞおちに拳をねじ込ませる。

 男は胃酸を吐いてその場に倒れ伏せる。

 宗一郎は男に手錠をはめながら思う。


 ―この能力があれば、悪を排除することができる。

 ―そして、俺はヒーローとなる


 こうして、正義に歪む男に歪んだ権能が与えられた。


プレイヤー・町奉行(風間 宗一郎)

権能・【言霊フルーフヴェアター

職業・刑事

読んでいただきありがとうございます。

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