二幕 幸と仁義 その参
「今、この福山でとある《遊戯》が開催されています」
竜司の口から放たれた言葉に羅津は自信に満ちたニンマリとした笑みで頷きながら言う。
「その祭りをしのぎにするっつーこったろォ?」
「んー、まぁ大抵はあってますね。この祭りには願いを叶える槍というモノが景品としてあるそうです」
願いを叶える槍という突然出て来た聞いたこともない単語に羅津は唖然とする。
そんな状態を見て、竜司は苦笑しながら話をつづけた。
「それも主催者は神ときましたよ。なぁに嘘じゃあありませんよ」
「もう何が何だかわかんねぇよ。これは俺が馬鹿だからか?」
「いいえ、私も未だにすべて理解しているわけではありませんよ」
羅津は全く分からない信じられないと頭を抱えるばかりだ。
考えた末に出た答えが...
―コイツ、俺のこと騙そうとしてんじゃね?
―そりゃ、許せねぇなァァ!!
「なぁ、証拠はあんのかァ?」
「何故急にそんなに好戦的になったのかは知りませんが。ありますよ、証拠」
「はへ?」
まさか証拠があるという答えは全くもって予想していなかったのか、口をぽかんと開けて間抜けな顔をしている。
竜司はそんな表情をする羅津の事をほほえましく眺める。
「さっき殴った時に「鉄でも仕込んでいるのか?」と言いましたよね?それですよ」
「あ?どーゆうことだ?」
「製鉄や鍛冶の神と言われているアメノマヒトツノカミから頂いた権能【鉄身】による能力です」
羅津は一定のリズムを刻みながら人差し指で机をたたき、俯いていた。ふと、机をたたく音がやんだと思うと、勢いよく手のひらで机をたたいた。
顔を見るとそれはとても楽しそうな表情だった。新しいモノを手に入れた子供がそれでどうやって遊ぼうかワクワクしているように表情を輝かせている。
「つまりはよぉ、無敵ってこったろ?俺らは最強の組になるっつうことだろ!!」
やや興奮気味なのが声からでも分かるほど、いつもよりも大きな声量でハキハキと喋っていた。
けれども竜司は羅津とは逆で冷めた表情をする。
「そこまで単純な話じゃありませんよ」
「じゃあ、どーゆうこったよ?」
「そりゃまぁ、《プレイヤー》で引き込める奴は弱みでも握って引き込みます。けれども、引き込めない奴は今後の障害となりえるため、殺します。ですが、向こうも人知を超えた能力を持っているため、殺すのは困難でしょう」
「俺でも殺せねぇか?」
「能力によるでしょうね」
羅津は再び俯いて黙り込んだ。
けれどもその沈黙を切り裂く形で、竜司は新たな情報を開示した。
「けれどもね、完全な勝利条件ってもんがあるんですよ、願いを叶える槍を誰よりも早く入手すればいいんです。そしたら、この組を最強にできますよ」
「あぁ、その願いを叶える槍ってのは本当に何でも願いを叶えれんのかよ?」
羅津は少し顔をあげて獰猛な鋭い眼差しで竜司を見る。
不審とも呼べるであろう疑問を瞳に映していた。
「多分、そうだと思いますよ」
「まぁ、神様が置いたってぐれぇだし、探す価値はあるってことか」
「えぇ、その過程で他の《プレイヤー》との接触もあるでしょうしね」
「分かった、その依頼受けよう」
羅津と竜司はニタリと不吉な笑みを浮かべ合った。
「部下は使うか?」
「あまりよくないでしょうね、信用はできませんから」
「まぁそうか。だが、二人でやるのもなぁ...」
二人は自分の信用できる人間を記憶の中から呼び起こしていた。
「俺以外に誰を誘おうとしてたんだ?」
「そうですねぇ...まずは君しか頭にありませんでしたから...強いて言うなら、入船君ですかね」
「晋三の坊やか。まぁ悪くはねぇか」
入船 晋三という青年を思い出しながら、彼が信用たり得るかを考える。
「けど、アイツはちとネジが外れてやがる」
「まぁ、ここに来る前は広島制覇を謳ってましたから」
「結局やったんだっけか?」
「岡山までは制覇したはずですよ」
少し話が脱線し、ただの青年についての過去話が繰り広げられ始めた所で、竜司が「ごほんっ!」と咳ばらいを一つして話の軌道を修正する。
「君は誰か信用できる人はいないんです?」
「まぁ、青葉の旦那とか鞆浦だな」
「旭川さんと加茂君かぁ。私、加茂君少し苦手なんですよね」
同期の男を思い出して竜司は少し苦い顔をした。
この組に入ったばかりの頃は青葉に引きつられて竜司、羅津、鞆浦の四人で行動させられていたのだが、問題ばかりしか起こらなかった。
しりぬぐいのために竜司と青葉は街を駆け回ったものだ。
「お前とは本当に仲が悪かったな」
「えぇ、全くです。加茂君は何を考えてるか本当にわかりませんからね」
それだからか、竜司は加茂を信用しきることができない。
「まぁとりあえず晋三の坊やと青葉の旦那くらいでいいか」
「まぁ、そうですね。必要によって加茂君にも声を賭けましょうか。まぁ、彼は忙しそうですしね。なんていったって岡山の方へ仕掛けに行ってるんですからね。えぇ、だから多分誘っても依頼を断られるでしょうね」
早口で長々と鞆浦が依頼できないだろうという趣旨を話す。
そこまで嫌なのかと、羅津は少し引き気味に竜司を見るが、気づく様子は全くなかった。
そのまま竜司は小さな声でぽつりと呟いた。
「けど、本当にやばかったら頼みましょうか」
その一言が、彼らの関係性を物語っていた。
苦手と言いつつも、彼の実力自体は認めている。
そのことに羅津は少しうれしく、そして微笑ましく思い静かに笑った。
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