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使徒と遊戯のラグナロク  作者: 愚者
一章 混沌とする福山

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二幕 幸と仁義 その弐

一章 混沌とする福山市


一幕 諸所の正義

 ―とある大きな屋敷の中


 この現代の日本で、和服を着ている初老の男がいた。

 その男の髪や髭は白く、体は人一倍大きく筋肉質だ。それに加え、顔も怖いと来た。

 だからだろうか、ただそこにいるだけで人を委縮させてしまう怖さがある。

 その男は輝夜組系月禅会組長、名は神無月 仙禅。

 仙禅は高級そうな椅子に足を組んで座って一人の男を睨みつけていた。

 その目を向けられるだけで、堅気の人間は呼吸することもままならないだろう。


「それで話とはなんだ?竜司」


 竜司と呼ばれた者は、その声の威圧にはモノとせずに話を続ける。


「《遊戯ゲーム》っつうもんが始まってんですがねぇ、それに力を貸していただきたい」

「その《遊戯ゲーム》ってのはなんだ?」


 威圧的な声は変わらずのまま疑問を問い、それに対して竜司はニヤリと口を歪める。


「なんとも信じがたいでしょうが、神の暇つぶしに行われた祭りのようでして、《プレイヤー》と呼ばれる者には神から超能力じみた権能と呼ばれるものがもらえるようです」


 仙禅は身を前に乗り出して、その話に聞き入っていた。その目は好奇心と野望に満ちていた。


「で、《遊戯ゲーム》っていうからには、なんか商品があんだろ?」

「えぇ、なにやら願いを叶える槍というものが、この福山のどこかに隠されているようです」


 仙禅はニヤリと顔を大きく歪ませて、声を発する。


「槍の捜索と《プレイヤ―》の保護に力を貸そう。好きな奴らを連れていけ」

「ありがとうございます。必ず親父の元に槍を届けます」


 そう言って竜司は仙禅の部屋を後にした。

 部屋から出ると、ため息を一つついてある人の部屋に向かっていた。

 すれ違う組員は彼が通る道を開けて、頭を下げる。

 風間 宗一郎とは違い、畏怖と尊敬から道を開けられる。

 部屋に入るとグルリと全体を見回し、一人の男を見つけると視線を止めて声をかけた。


「やぁ、羅津らしん。久しぶりですね」


 呼ばれて男―旭川 羅津は竜司の方を向いた。

 羅津は心底嫌そうに顔をクシャリと歪ませて、怒号とも感じれる。


「おい、竜司よォォ!!テメェ、良く俺の前に顔出せたなぁあ!?」

「ハァ、まだあの事を言てるんですか?」


 その呆れるような言葉を聞いて歯をカツッと音を鳴らし、獰猛な犬のように牙をむき出しにして咆える。


「俺の妹に手を出しやがって!」

「出してませんよ。妙になつかれているだけですよ」


 その言葉は火に油をドバドバと注ぐようなもので、羅津の沸点を超える。


「ぶっ殺す!殺す!絶対に殺す!!殺して殺して殺して殺してやるゥゥゥゥ!!!」


 ドッと地を蹴って文字通り一飛びで竜司の前にやってきて、風を切り裂きながら拳を突き出す。

 竜司は飛んで来るボールを取る要領で、その拳を右手で握る。勢いは殺しきれずに右肘は肩辺りから十センチほど下がった。


「ってぇな!てめぇ、鉄でも仕込んでんのか!?」


 殴られた側ではなく殴った側の羅津が痛みで顔をしかめる。

 拳を握る手を離すと、羅津はヒラヒラと手を振るう。すると、血が雫となってあたりへと散る。


「いやぁ、そんなもの仕込んでませんよ」


 竜司は手のひらを羅津へと見せると羅津はけげんな顔をする。それを見て、楽しげに口元を歪ますと続きを話した。


「これ以上聞きたかったら、私の頼みを聞いてください」

「あ”ぁ?テメェの頼みだぁ?」


 ほぼ条件反射の威嚇だろう。常日頃から突っかかっていたためか、そういう癖がついてしまっているのだ。

 その威嚇に大した反応も見せず、笑みを捨てて真剣なまなざしで語った。


「聞けば後戻りはできない仕事の依頼です。その上、死ぬ可能性も十分にありますのでそこも考えてお願いします」


 極道にしては珍しく常にこやかにしている竜司が、柄にもなく真剣な表情をしていたため、その仕事の重大さを感じているんだろう。羅津は黙り込んで虚空をじっと見つめていた。時間が止まったようにじっと。


「だぁああああ!!」


 考えがまとまらなかったのか、狂犬のように咆える。


「もういい、親父に許可は取ってんだろうなァ?」


 先ほどよりかは少し落ち着いた様子で、されど噛みつくように問いかける。

 それに対して、竜司はコクリと頷くだけだ。


「わかった、その依頼を受けよう。じゃあ、内容を話せ」

「えぇ、ありがとうございます。これから話すことは信じられないでしょうが、全て事実です」


 回りくどい言い方をするが、羅津はどうでもいいというふうにひらひらと手を振って、部屋の中へと入っていく。


「まぁ、座って話そうぜ」


 そう言われ、竜司は部屋の中央に置かれている向かい合うソファーに座り、辺りを見回した。


「あたりの奴ら引かせた方がいいか?」


 羅津は意図を察してそう言い放ち、それに対し竜司は少し悩んで「あぁ」と答えを出す。

 羅津の命令で部屋にいた数名は出て行き、羅津と竜司の二人だけが残った。

 重く神妙な空気の重圧がのしかかる。

 

「で、話せよ。依頼について」

「えぇ、そうですね」


 深く深呼吸をすると、羅津の瞳を見て重い口を開いた。

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